今日はちょっと背伸びをして、New York Times紙を読んでみましょう。最近はそうでもないようですが、それでもNew York Times紙やTime誌の記事は、英語メディアのなかでも比較的格調の高い英語(つまり日本人にとっては読むのに苦労する英語・・・)が使われています。これまで見てきたAPやロイターの記事で使われていた英語との違いを、少し味わってみることにしましょう。
Ancient Bones That Tell a Story of Compassion (Dec. 18, NY Times)
・compassion 思いやり、共感
それほど難しい単語も使われていない、読みやすいタイトルですね。直訳すると、「古代の骨は思いやりの物語を語る」です。記事では、ベトナムで発掘された4000年前の人骨を調査したところ、当時の人々も病人や身体に障害のある人たちをいたわっていたことが分かったと報じています。ではリードを見ていきましょう。
・painful 痛みをともなう、つらい
・truism 自明のこと、分かりきったこと
・brutality 残忍性、野蛮
さっそく主語と述語動詞を探してみたいところですが、さすがはニューヨークタイムズ、今回は手ごわいですね。ちょっと後回しにして、文章のあたまから順番に見ていきましょう。
文章は "While it is a painful truism" で始まります。ここでの "While" は接続詞で「~とはいえ」という意味です。"it is a painful truism" は直訳すると「これはつらい事実です」。ただしこの "it" は仮主語だという点に注意が必要です。本当の主語は、その後の "that~humanity" の部分です。直訳すると「残忍性や暴力は少なくとも人類の歴史と同じくらい古いということ」、ですね。ここまで分かったところで前半を直訳すると、「残忍性や暴力は、少なくとも人類の歴史と同じくらい古いということは、痛ましい事実であるとはいえ~」、となります。もう少し日本語らしく翻訳すると、「人間の残忍性や暴力が、人類の歴史と同じくらい古いということは確かである。これは心が痛む事実であるが、しかし一方~」といったところでしょうか。
さて、問題は文章の後半、"so" 以下の部分です。まず、文章の構造を分かりにくくしている挿入句、"it seems" を取ってみましょう。すると、"so is caring for the sick and disabled" が残ります。少し見通しが良くなってきましたね。さらに、後半の名詞句 "caring for the sick and disabled" 「病人や障害がある人々の世話をすること」という部分を仮にAと置きましょう。"so is A"。ここまでくると、高校のときに英語をしっかり勉強した人には分かりますね。そう、倒置法です。「Aもまたそうです」という意味で、例えば "I'm from Kyoto" "So am I!"(「私は京都出身です」「私もだよ!」)のような使い方をします。少し脱線しますが、まぎらわしいのが "so A is" の形です。この形になると、「その通りです」という意味になるのでご注意を。例えば "He is from Kyoto" "So he is!" だと、「彼は京都出身です」「そうですね」という意味になります。だいぶクリアーになりましたね。では "it seems" も加えて後半を訳してみましょう。「病人や障害がある人々の世話をすることもまた、そのようだ」、ですね。ここで "so" は前半の "at least as old as humanity" を指していることに注意しましょう。
ところで、後まわしにしていた主語と述語動詞ですが、ここまでくると分かりますね。まず、接続詞があるので、それぞれ2つづつあります。つまり "While~" の部分の "it is" がまず1つ目の主語(仮主語)と述語動詞の組み合わせで、後半部分の "it seems" が2つ目の主語(またまた仮主語)と述語動詞の組み合わせです。
では最後に全体を訳してみます。
そういえば、もうだいぶ昔のNHKスペシャルで、イラクのシャニダール遺跡から花粉を含む土とともにネアンデルタール人の骨が発掘されて、これは彼ら/彼女らが仲間の死を悼んで遺体に花を手向けたのではないかと紹介されていました。とはいえ専門家の間でもこの解釈には異論があるのだそうです。
数万年前のネアンデルタール人に思いやりの心があったかどうか分かりませんが、少なくとも4000年前の人類は思いやりの心を持っていたようですね。
