前回にひきつづき、2013年に起こると予想される世紀の天体ショーについて報じる、AFP通信の記事を読んでいきましょう。
Celestial flybys set to thrill (Jan. 6, AFP)いったいどんな天体ショーなんでしょうか?さっそく、リードに目を通してみましょう。
Astronomers are gearing for thrills this year when Earth gets buzzed by two rogue asteroids and two comets, including a wanderer last seen by the forerunners of mankind, blaze across the sky.
・astronomer 天文学者
・buzz うろうろする
・rogue 自分勝手に行動する、面倒を起こす
・asteroid 小惑星
・comet 彗星
・forerunner 先駆者、先人
・blaze 燃え盛る
この文章、けっこう勉強になるポイントが含まれてるんですよ。ではゆっくりと見ていくことにしましょう。
まずは主語と述語動詞をみてみましょう。今回は簡単ですね。"Astronomers are gearing" の部分です。"gear" は名詞だと「歯車」という意味になりますが、ここでは現在進行形になっていますから動詞だということがわかります。英和辞典で動詞の "gear" を調べてみると「かみあう」「(車の)ギアをいれる」というような意味が書かれていますね。では今回の記事は「天文学者たちが車のギアを入れています」というニュースかというと・・・う~ん、どうもしっくりきませんね。こういうときこそ、英英辞典の出番です。さっそくオックスフォード現代英英辞典 (OALD: Oxford Advanced Learner's Dictionary) で動詞の "gear" を引いてみると、"to make, change or prepare something so that it is suitable for a particular purpose" とあります。この説明だとクリアーですね。そう、「天文学者たちは準備を進めています」という意味です。
では何に対する準備なのでしょうか?うしろに続く部分を見てみると "for thrills this year" 「今年の心おどる出来事に」、ということが分かります。なぜかといえば "when Earth gets buzzed by two rogue asteroids and two comets" 「地球の周囲に2つの小惑星と2つの彗星がやってくる」というのだから、これは確かに楽しみですね。
ところで、ここに出てくる "gets buzzed by" というのは何でしょうか?じつはこれ、受動態の文章なんです。ふつうの受動態は、もちろんbe動詞+過去分詞ですよね。でも、主語がそのような状態に「なる」という、動きや変化を強調したいときには、こんなふうにbe動詞のかわりに "get" を使って受動態を表わすことがあるんです。ただしこの表現は、ややくだけた表現なので、あんまりフォーマルな場面では使わないほうが良いかもしれません。
さらに後ろを見て行きましょう。この2つの小惑星と2つの彗星というのは、"including a wanderer last seen by the forerunners of mankind"、直訳すると、「人類誕生以前のものたちによって最後に見られた1つのさまようものを含んでいる」です。ここで "wonderer" という単語は、ふらふらと宇宙をさまよっている、先に出てきた彗星や小惑星のうちの1つを指しています。英語では、同じ単語をなるべく繰り返さないようにするので、こうして別の単語で言い換えてるんですね。この部分を日本語らしく翻訳すると、「そのうち1つが最後に地球に接近したのは、人類誕生以前のことである」、といった感じでしょうか。
あとわずかで今回のリード読解はおしまいなのですが、ここで今回いちばんの難所が出てきます。"blaze across the sky"。たった単語4つなのですが、これがなかなかのクセモノなんです。とはいえ、この部分を正しく理解して読み解くことができれば、グッと英語力が上がること間違いなし!というわけで、これから少しばかり文法的な話がつづきますが、居眠りせずにお付き合いください。:-)
まず、この "blaze" という動詞がどこにつながるかを押さえておきましょう。意味はさておき、文法的に主語の候補として考えられるのは "Astronomers" です。つまりカンマが接続詞 "and" の代わりとして働くとして、"Astronomers are gearing~, blaze~" が文章の骨組みだと考えるわけです。主語は名詞の複数形なので、動詞の現在形 "blaze" がついても文法的には問題ありません。ところが、いざ意味を考えると、「天文学者たちは準備をしている、そしてカンカンに怒っている」("blaze" には「カンカンに怒る」という意味がある)となってしまいます。オマケに "across the sky" ですから、「天文学者たちが空を横切ってカンカンに怒っている」・・・!? これはこれで想像すると面白い光景なんですが、ちょっと意味不明ですね。
ではこの "blaze" はどこにつながるのでしょうか。こんどは意味の面から考えてみましょう。"blaze across the sky" を訳すと「空を横切って光輝く」ですから、意味上の主語はその前に出てきた彗星ということになりそうです。とすると、このリード文の後半は、文法的には "two comets that blaze across the sky" という名詞節のなかに "including~" という節が挿入されていることになります。ところがリード文を見てみると、関係代名詞の "that" がありません。ということは省略されているのでしょうか?
もし関係代名詞が目的格であれば、省略されても不思議ではありません。例えば "This is the book which I bought yesterday" の "which" は動詞 "bought" の目的語に相当しますから、省略してもぜんぜん問題ありません。ところが、"two comets that blaze across the sky" という読みが正しいとすると、関係代名詞の "that" は動詞 "blaze" の主語に相当するわけですから、主格の関係代名詞が省略されていることになります。これは文法的にOKなのでしょうか?
主格の関係代名詞が省略できる場合は、大きく次の3つに限られています。
(1)There is 、Here is 、It is 等に続く場合
(2)関係詞節に there is がある場合
(3)関係代名詞の直後に I think などの挿入句がある場合
このうち(3)は、主格の関係代名詞の直後に "I think" のような短い挿入句があるときに関係代名詞が省略されるケースが多いのですが、どうやら今回取り上げたリード文では、"including~" というやや長めの挿入句があるために、関係代名詞を省略しても文法的には問題ない文章になっている、ということのようです。
では最後に全体を翻訳してみましょう。
天文学者たちは、今年2つの小惑星と2つの彗星が地球に接近するという心おどる出来事にそなえて、準備を進めている。空を横切って光輝くと予想されている2つの彗星のうちの1つが前回地球に接近したのは、人類誕生以前のことである。
ちなみにこれらの彗星は、パンスターズ(PANSTARRS)とアイソン(ISON)と命名されています。パンスターズは3月頃に、アイソンは12月頃に、どちらもマイナス等級まで明るくなると予想されています。なかでもアイソンは、満月よりも明るくなると予想する天文学者も人もいて、数百年に1度あるかないかの巨大彗星になる可能性が高いそうです。これは楽しみですね!