秋も深まったある日、一人のお婆さんが杖をつきながら紅や黄に色づいた綺麗な落ち葉が散る並木道を歩いていました。
すると道の向こうから何か大きく、白く、丸い物がこちらへ向かってきます。
お婆さんは不思議に思って歩みを止め、道の幅くらいあるそれが近くへ来るまで待っていました。
それは小さく前に跳ねながら進む、大きな大きな肉まんでした。
蒸したての様で、ほこほこと湯気を出しながらお婆さんの横を通り過ぎようとしています。
丁度風が肌寒い季節、暖かな肉まんはお婆さんの食欲をそそります。
少しずつ跳ねて遠ざかろうとする肉まんをお婆さんは思わず追いかけました。
そして堪えきれずに白く柔らかな生地に飛びつき、大きな口を開けて肉まんをかじってしまいました。
しまった、とお婆さんは思いました。
なぜなら肉まんだと思い込んでいたそれは実は餡まんだったのです。
しかも中の餡はとても甘く、しつっこい味でした。
生地の上部分にひねりがなく、丸い形だと見えた時点で餡まんと気づくべきでした。
少し身軽になった餡まんはさっきよりも少しだけ速く跳ねて前に進みます。
しかし、一口かじってしまった餡まんをそのまま誰かが食べてしまっては忍びないと、お婆さんは泣く泣く餡まんを追いかけました。
その途中自動販売機で渋めのお茶を買って飲み、餡の甘さを誤魔化しながら餡まんをかじって歩きました。
お婆さんがかじる度に餡まんは身軽になり速く跳ねるので、餡まんが無くなる頃にはお婆さんは杖をつくこともそこそこに、走って餡まんを食べ続けました。
やっと餡まんの最後のひとかけらを食べ終わると外は真っ暗、お腹はいっぱい。
へとへとに疲れたお婆さんは深い溜め息をつきました。
それからやっと、肉まんであろうと餡まんであろうとあんな大きな食べ物が勝手に跳ねて動き回る訳が無い事に気がつきました。
化け物を平らげてしまったと悔しくなったお婆さんは、きえーっと声を上げ鬼の形相で自分に、持っていた清めの塩を撒きました。
胡椒も撒きました。
次の日お婆さんは木枯らしが吹いても、肉まんや餡まん、ピザまんにすらも全く見向きもせずに、ほこほこと湯気を出しながら少しずつ跳ねて道を進みました。