頭痛い!もう一月も!頭が痛い。本当に頭が痛いし頭を抱えるという意味でも頭が痛い。頭が痛いと歯も痛くなる。あれ、歯が先か?頭が先か?そしてひたすら眠い!!冬寒い!でも胃がほんのり熱い。かわいい。皮膚の下に自由にお湯や冷水を循環させることの出来るようにならないかな。なりたくないな。寒さや眠気や空腹を今よりも感じない体質にならないかな。なりたいな。うーん本当に脳みその底から眠たい!やいやい!たいへんだ!
エリンギとある大地に宇宙船が着陸した。世界の権力者達は混乱を避ける為にこの事実を隠してしまいたかっただろう。しかし宇宙船が着陸したのは世界中から人が集まる観光地。広いビーチのど真ん中。ニュースは飛び交い大混乱。すぐに誰もが知る事となった。人々は宇宙船から距離を置くように避難を促され、軍隊が駆けつけ宇宙船を取り囲んだ。騒然となるビーチ。長い沈黙の後、宇宙船は出入り口と思われる部分をゆっくりゆっくりと開き始めた。人類は息を呑んだ。ぽっかりと開ききった出入り口と思われる部分の暗闇。そこに明かりがつく。人々は宇宙船の中を、出てくる何かを、我先に確認しようと躍起になった。期待と恐怖と好奇と色々各々がその明かりに注がれる中、突然、一体の生命体が飛び出した。1秒、静まりかえる世界。その時今までで最も、多くの世界中の人々の頭に同じ物が浮かんだ。「「「「エリンギ」」」」そう、遂に姿を現した未知の生命体。それは正にエリンギ、大きなエリンギに手足を生やしたとしか形容しがたい姿をしていたのだった。宇宙船から続々と降りてくるエリンギ達。全員で11エリンギ。彼らは宇宙船の前に横一列に整列し、揃って人類に向かって親しげに両手を振った。よく見れば小さな目と口がありなんとも気さくな笑みを浮かべている。敵意は無い。誰の目にも明らかだった。そういえばさっき着陸する時にも観光客が全員避けてから何もない所へゆっくりと着陸していた。優しさがあるようだ。たちまち、会話、文章、記事、記録、あらゆるところでエリンギの文字が踊りに踊り、世界は宇宙から来た気さくなエリンギに沸いた。彼らと人類は恐る恐る、探り探り、互いに干渉を図った。そして彼らの持ち物や振る舞いから高い知能や感情を持ち言語の違いはあれど大体の生活や文化は人類と似通っている、ほぼ同じだという事が分かった。そのうち言語の壁も乗り越え互いの言語を交えて会話が出来るまでになった。彼らは侵略の為に来たのでは無く、初めて母星と近い環境にある星を発見したので研究の為に着陸したのだという。彼らと人類は互いの文化や知識を教えあい友好関係を築いていった。なにしろ彼らは愛想がよく気持ちの良い性格なので益々人類の間ではエリンギという文字は親しみを込めて使われた。記念すべきその日、世界の最高責任者との食事会と式典をもって正式に彼らと人類は友好関係を結びその証として彼らという存在に名前が贈られる事となった。食事会では賛否別れたが世界最高のシェフが最高の道具と最高の素材を使って作り上げたエリンギ料理が振舞われた。この品の良いとは言えない冗談にも彼らは微笑み、最高責任者と彼らは談笑すらしながらエリンギ料理を口にした。式典は和やかに進み、ついに最高責任者から彼らの正式な名前が贈られる時が来た。恭しく運ばれた豪華な金の装飾を施した布の内側にその名前は刺繍されているのだ。「親愛なる、宇宙の隣人、この奇跡の出会いを記念しあなた方へ友好と尊敬の気持ちを込めてこの名前を贈る。」という意味の長い小難しい言葉の前置きの後、最高責任者はゆっくりと布を開き掲げた。そこに刺繍されていた文字は「エリンギ星人」だった。人類よりも先にエリンギ星人が拍手をした。少し遅れて人類は戸惑いながらも精一杯拍手をした。なぜなら余りにも安直で間抜けな名前であったからだ。確かに今まで人類は親しみを込めてエリンギと呼んだ、エリンギとしか呼んでこなかった。見た目がエリンギに似ているから、それだけの純粋な理由であった。しかし世界の最高責任者が遥々宇宙からやって来た存在に正式にこんな名前をつけるとは思わなかったのである。それでも世界の最高責任者のした事であるから人類は受け入れ、良い名前だと拍手をするしかなかった。最高責任者は最高責任者で自分のした事の奇天烈さを痛感し、今にも倒れそうであった。考えに考えたあげく一番親しみやすく人類の純粋さを表現出来ると思ったのだがこうして豪華に刺繍されていると純粋というより非常に滑稽だ。頭の中で私は世界の最高責任者なのだから多少奇天烈な語り草でもあった方がチャーミングだろうと無理やり自分を納得させる事でなんとか笑顔を作り、これこそ純粋だという無邪気な微笑みを浮かべたエリンギ星人に滑稽な刺繍をなるべく素晴らしい物に見えるように大袈裟な間をとって手渡した。11エリンギ全員で嬉しそうにその刺繍を眺めた後、エリンギ星人の代表は目を潤ませながら世界の最高責任者に次のような意味の言葉を言った。「この上ない幸せであり光栄だ。あなたたちという親愛なる宇宙の友がいて我々が出会えたことは素晴らしい奇跡だ。この事にとても感謝している。この感動をより深いものにする為に一つ尋ねても良いだろうか。星人というのは星の民ということだ。そうだね。そしてエリンギというのはどういう意味の言葉だろう。」彼らはエリンギという言葉の意味を理解していなかったのだ。この言葉に人類の冷や汗が凍り、世界の最高責任者の頭はおかしくなった。とびきりチャーミングになった。自らもつれる足で厨房へ走り慌てて戻ってくると手に握りしめたエリンギをエリンギ星人の前に差し出して考えつく限りの純粋そうな笑顔を作った。純粋さを表現すれば何とかなる、そう思ってのことだった。そして言った。「キノコだよ。今日の食事会の料理にも使われていたキノコのことだよ。見て、君たちにそっくりだ。」世界が止まり、11エリンギ星人全員の顔から笑顔が消えた。エリンギ星人の代表が静かに言った。「つまり、誤解だったようだ。我々は君たちの事を宇宙の友だと思っていた。しかし君たちはずっと我々を見下し蔑んでいたのだ。この式典は我々を嘲笑うための舞台だった。愚かにも先程の食事の席で私は自ら言った、キノコとは最も蔑むべき存在だと。するとあなたは笑いながらその通りだと言った。それが全てだったのだ。」世界の最高責任者は妙に冴えた頭で食事会の時の談笑を思い出していた。繰り返し何度思い出しても最高責任者としてはエリンギ星人が「なかなかな洒落だね」と言い、それをきいて愛想笑いをしながら「なかなかね」と言葉を濁した記憶しか無かった。談笑すら出来るまでに言葉の壁を乗り越えたと思ったのは気のせいだったのだ。真顔のエリンギ星人達の顔が怒りに歪んでいく様は人類を絶望の底へと引き摺り下ろしていった。悪意は無かった。似ていた。そっくりだった。そんなに怒るとは思わなかった。とはいえ対等いや、それ以上の知能を持つ相手に対して初対面からずっとキノコ呼ばわりをして来たことは人類の文化でも侮辱ではないとは言い切れない。というより本当に失礼だった。憤怒の表情を浮かべて「エリンギ星人」と豪華に刺繍された布を焼き払うエリンギ星人達を前に人類はただ肝を冷やし申し訳なさそうな気まずい顔で項垂れるしかなかった。謝罪をすれば彼らを侮辱したと認めた事になるだろう。言い訳をしようにも世界中に踊りに踊ったエリンギの文字、そしてそれはキノコの名前である、彼らはそれに似ていると大体の人が思っていた、という事実は変えようがなかった。エリンギ星人達は見たことも無い機械をとりだしてそれに向かって何かを言っている。きっと仲間を呼ぶのだろう。失礼な我々を皆殺しにするのかも知れない。なぜこんな事になってしまったのか。新聞記事の写真の中で優しく気さくに微笑むエリンギ星人達。宇宙船の中を隠さずに紹介し、技術を惜しみなく教えてくれた。この世界の文化を勤勉に研究し嫌な顔一つせずに人類の研究にも協力してくれた。そんな彼らが大好きだった。きっと本当に良い宇宙の友になれただろう。安易にエリンギ呼ばわりなどしなければ。彼らがエリンギに似ていなければ。エリンギがキノコの名前でなければ。いくら軽はずみな行為を後悔し運命を恨んだところでもう遅い。暫くして本当に彼らの仲間がやってきた。たくさんの宇宙船からたくさん現れるエリンギ星人達。ざっと 6千万エリンギ。怯える人類には何倍もの数に見えた。彼らはそれぞれ手に大きな光線銃のような物を持っていて人類はいよいよ死を覚悟したのだ。憤怒の表情のまま黙って整列し世界中を歩き出したエリンギ星人たち。手元からは次々と閃光が放たれていった。だが人類は死ななかった。その不思議な技術は世界中踊りに踊ったエリンギの文字、エリンギ星人についての記録や写真、エリンギ星人が伝えた知識や技術、本物のエリンギ、エリンギにまつわるものだけを次々と焼き払っていった。数時間とせずに世界からエリンギにまつわるものが全て消え去った。エリンギ星人達は無表情に宇宙船へ乗り込むと人類へ目をくれることもなく宇宙へ去ってしまった。エリンギのあった場所が灰だらけになった世界でなす術もなかった人類の心は大いに傷付き誰も口をきけずにただ呆然としていた。少し経つとぽつりぽつりと灰を片付け始める人が出てきた。灰の上には人々の涙が落ち非常に掃除がしにくかった。そんな中始めに宇宙船が降り立ったビーチの片隅で誰かがあっと声をあげた。ビーチパラソルのかげ、放ったらかしにされていたバーベキューセットの網の下、彼らの光線から逃れ今や世界でたった一つだけのエリンギが転がっていたのだった。人類は、苦く辛い思い出にはなってしまったがエリンギ星人がこの星にやって来た事、人類は彼らが好きであった事を形に残そうと最後のエリンギが見つかった場所にそのエリンギを模した記念の石碑を建てしっかりと文字を刻んだ。石碑が完成した日やっと人類に少し笑顔が戻り、訪れる人は後を絶たなかった。その日のうちに人類は星とともに粉微塵に吹き飛んでしまった。実は星に帰ったエリンギ星人は残してきたライブカメラで人類の打ちひしがれる様子を見ていて失礼な行為をされたとはいえ過剰な反応だったと反省していたのだ。やっと見つけた似たような星の友じゃあないか、明日にでも焼き払ってしまった情報を元に戻して関係を修復しに行こう。そう思った時であった。ライブカメラが例のビーチを映し出したのだ。エリンギを模した大きな石碑に「エリンギ星人ここに来たれり」と刻まれ、その前で人類は微笑み写真を撮っていた。エリンギ星人はこれ以上無い程の憤怒の表情でボタンを押した。消え去った、今はなきあの星の研究の記録の最後には「どこまでも執拗に相手を侮辱するのが好き。どうかしている。」と書き殴った。あの星とは地球の事では無いので安心して欲しい。終わり