トルンカの長編人形アニメ
「バヤヤ」のDVD
―イジー・トルンカが描く真実の愛―
表情の変化がない人形が訴えかける怒り、悲しみ、そして、愛…。イジー・トルンカの描くチェコアニメ史上最大の叙事詩「バヤヤ」と、トルンカ監督デビュー作「おじいさんの砂糖大根」などユーモラスで心温まる短編3本が収録された作品集です。
○バヤヤ
●監督 /イジー・トルンカ
●美術 /カレル・ソボタ他
●製作/1950年
●時間/74分
バヤヤは竜に蹂躙された王国にかつえ母であった馬に乗ってやってきました。バヤヤは美しい3人の姫たちに出会い心奪われます。しかし姫たちは竜のいけにえになる運命でした。バヤヤの愛の歌にも心晴れない姫たち。いよいよ竜が現れます。
恐怖に押し潰れそうな気持ちを抑え毅然とする姫たち、姫を守るため竜との戦いに決意するバヤヤの闘志と緊張感。そういった感情が見事に人形から現れています。“人形アニメとは人形に魂を宿すこと”とかつてトルンカは言いました。その言葉をこの作品は見事に証明しています。美しい歌と人形達の気高く凛としたパントマイムが描き出す世界は正に極上のオペラです。
○おじいさんの砂糖大根
●監督 /イジー・トルンカ
●美術 /イジー・トルンカ
●製作/1945年
●時間/8分
おじいさんは今日も畑仕事に精を出していますが、宿敵のカラスや虫から大切な作物を守らなければなりませんので気が抜けません。作物を育てるのは本当に大変です。
なんの経験も方法論もなかった中、挿絵画家だったトルンカが、プラハのアニメスタジオの責任者に就任し、初めて作ったのがこの作品は、世界で大きな評価を得ました。コミカルな動き、ゆったりとしたストーリー展開からは、おじいさんの作物に対する深く、優しい愛情が伝わってきます。
○しものいたずら
●監督 /イジー・トルンカ
●美術 /イジー・トルンカ
●製作/1954年
●時間/12分
雪の積もった村に二人(?)の”霜”がいました。”霜”はとても寒くなるので人間たちの嫌われ者です。ある日、自分たちの悪口を言う人間にいたずらをしてやろうと話をしました。そこへ太った男と老人がそれぞれソリに乗ってやってきました。
人形アニメと2Dアニメを組み合わせた表現が、“霜”たちの世界と人間たちの世界を上手に対比させています。“霜”の世界でも複雑な人間関係があるようです…。
○おじいさんの物々交換
●監督 /イジー・トルンカ
●美術 /イジー・トルンカ
●製作/1953年
●時間/8分
川でおぼれていた金持ちを助けたおじいさんは、お礼にたくさんの金をもらいました。その帰り、馬を持った男に出会い、たくさんの金と馬一頭との交換を持ちかけられました。人を疑うことを知らないおじいさん、ひどい目に会わなければいいのですが…。
紙芝居のようにストーリーは楽しく展開します。絵本作家としても活躍したトルンカが物欲に縁のないおじいさんを優しく描いています。
以上の4作が収録されております。
「バヤヤ」については↓こちらにも書いておりますので、よろしければご覧になってください。
http://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-11956573864.html