「時間ぴったり」
「ほんとにぴったり」

 昨日、わたしと二人きりで話をしたいと申し出たはにかみイケメンくん。時間ぴったりに集合場所に着くと、どうやら先に来ていたらしい彼と合流する。

「私服、可愛らしいね」
「貴方からそんな言葉が出てくるとは思わなかったわ」
「まぁ服がかわいいのはどうでもいいけどな」
「でしょうね」

 くすくすと笑いながらどちらからともなく喫茶店の方面に歩き始める。友人というには少し距離が近い。けれども恋人という相手ではない。微妙な距離が、微妙な空気をーー……

「なんでそんな性格悪いの?」
「ド直球ね。嫌いじゃないわ。でも内緒よ」

 運んでくるわけではなかった。そりゃそうだ。なんたってわたしも彼も、互いの性格の悪さを認識しているのだから。それにしても

「あーあ、やっぱりやめとけばよかったかしら」
「なにそれ、待ちぼうけ食らうの?」
「連絡はちゃんと入れるわよ。ほら」

 と、彼の名前の連絡先を見せる

「誰からもらったの?」
「さぁ、誰かしら??」
「まぁでも、人のこと言えないけどね」

 その瞬間に携帯が鳴る。ディスプレイを見ると彼の名前。

「誰からもらったの?」
「さぁ、誰だろう??」
「人のこと言えないわね」

 この会話中も鳴り続ける携帯。止めなさいよと目線をやるとにやりと笑う彼。仕方なく電話を取る。

「もしもし」

 ワンテンポ遅れて聞こえる電話の声。意図がつかめず彼を見ながら答える。

「もしもし」
「はじめまして」
「…はじめまして」
「君の名前は?」
「自分から名乗るのが筋よ」
「知ってるくせに」
「そのままお返しするわ」

 傍から見たら変な人だろう。道の途中で立ち止まってお互いに向き合いながら電話越しで話をしているなんて。さらに内容も滑稽だ。

「ご用件は?」
「一言言いたくて」
「なんでしょう?」
「君の違和感のない作り笑いにそろそろ飽きてきた」
「違和感がないのならいいじゃない」
「本当の笑顔が見たい」
「あら、素直ね」
「だから」

「今日は心から笑ってくれるまで、帰さないから」

 笑みを深めた彼には、「悪魔の笑顔」がぴったりはまった。


【Twitterお題アンケ:悪魔の笑顔】