【平成21年】 (2009年)
舞ひおりて鶴は光を集めけり やぎ しげる
平成二十一年 賀状
文明のそらおそろしき文化の日 八木 風
平成二十一年一月六日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 入選
犬鳴けば犬吠え返す冬の霧 八木 茂
平成二十一年一月十四日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 入選
正月や古き日本の唄歌ふ 八木 茂
平成二十一年一月二十八日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 入選
声とどくところに妻の冬籠 やぎしげる
平成二十一年二月十七日
朝日新聞 岡山俳壇 08年 年間賞
大寒や顔小さくしてバスを待つ 八木 茂
平成二十一年二月十八日
山陽新聞 山陽俳壇 (三村純也選) 入選
枯蓮あとはおそるることのなし やぎ しげる
平成二十一年二月二十四日
朝日新聞 岡山俳壇 (竹本健司選) 秀逸
【評】枯れ尽くしてしまった蓮の葉柄の有様は、荒廃そのものである。しかし、そうなってしまったのであれば、その現実を受け容れるしかない。あとは恐れることは何もない。作者の諦感を枯蓮に言わしめている。
誰ひとり余命は知らず日向ぼこ 八木 風
平成二十一年二月二十五日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 秀逸
【評】冬、日向で身体を暖めるのは気持ちがよい。平穏な時間が過ぎてゆく。しかし、明日のことは分からない。誰ひとり、余命は知らないまま、今の今を生きるのである。気心の知れた者同士で談笑しながら。
手に汲んで水にかたちのある寒さ 八木 茂
平成二十一年二月二十五日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 準特選
冬ごもりして晩年を充電中 八木 茂
平成二十一年三月四日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 特選
【評】常に完成度の高い作品を投稿される作者のこの一句から、どんな大事に直面しても、泰然と構えて日常を過ごされている様子が窺え、好感のもてる諧謔味を表出している。ゆったりとした調べからは、人生を悠然と前向きに生きる姿勢、価値観までも想像させる。
花の城循環バスの右座席 やぎ しげる
平成二十一年四月二十二日
朝日新聞 岡山俳壇 (竹本健司選)
言葉はや届かねば振る夏帽子 八木 茂
平成二十一年四月
第二十三回 全作州俳句まつり 秀逸
記憶より小さき母校遠花火 八木 茂
二十一年五月三日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 入選
おぼろ夜の限界部落狐鳴く 八木 茂
平成二十一年五月二十七日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 入選
灯りて村のふくらむ遠蛙 八木 茂
平成二十一年六月三日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 特選
【評】田に水を張るや否や蛙の合唱がはじまる。日暮れの家の灯が水田に映りながら増えてゆく。そんな集落と少し距離をおいて作者は住んでいるのであろう。〈村のふくらむ〉は感性の言わしめた措辞。〈遠蛙〉の季語の効果によってこの句が更にふくらみをもった。
風薫る街に赤ちゃんコンクール 八木 茂
平成二十一年六月二十四日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 準特選
婚も忌も同じ顔ぶれ春深し 八木 茂
平成二十一年七月八日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 準特選
紫陽花の毬に埋れて路地稲荷 八木 茂
平成二十一年七月二十四日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 準特選
雑貨屋の奥の筒抜け額の花 八木 茂
平成二十一年七月二十九日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 準特選
家具一つ置かぬぜいたく夏座敷 八木 茂
平成二十一年九月二十三日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 秀逸
【評】あれも要るかも、これも要るかもと部屋の中は物でいっぱいだ。旅館の部屋のように家具一つ置かれていなければどんなに気持ちのいいことだろう。夏座敷は何も置いていないのが一番。青畳の上を涼しい風が渡る。これこそ真の贅沢。
サングラス外せば美人こはれけり やぎ しげる
平成二十一年九月
朝日新聞 岡山俳壇 (竹本健司選)
休暇明け少女すらりと立ち上がる 八木 風
平成二十一年十一月十八日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 秀逸
【評】長い夏休みの終わった9月1日。休暇明けである。学校では授業がはじまる。小学生ら高校生まで制服姿となる。街の風景がガラリと変わる。それは少女がスラリと立ち上ったのように新鮮である。休暇明けが見事に表現された。
日本の秋縁側へ小座布団 八木 茂
平成二十一年十二月五日
山陽新聞 山陽俳壇 (大石悦子選) 第四席
聞き上手ゐて縁先の小春かな 八木 茂
平成二十一年十二月九日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 入選
百年の隙間風あり旧役場 八木 風
平成二十一年十二月二十三日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 入選