鉄塔は語ることなく、見下ろすこともない。
変わらぬ風景はいつまで経っても変わらずダラダラと佇んでいる。
夕暮れ時と判るのは鉛色の空色ではなくて、通り過ぎた男達の疲れた顔と歪んだ轍。
帰る方向とは逆の方向に帰る。
鉄塔を背にして。
無表情の親子が自転車を連ねて通り過ぎていく。

見上げても、見下ろしても、遠くを見ても何もかわることのない世界が見えている。
溜め息は生ぬるい風になれない大気に溶け出して足元にまとわりついていく。
鉛色の空に浮かぶ鉄塔。
その脇を三人の男を載せた白い軽ワンボックスカーが通り抜けた。その顔は日に焼け疲れている。だらしなく窓から手の甲だけが妙に白い腕を出している。