心に棘が刺さったからといって落ち込んでみても、見える景色は変わらない。
もし変わるとしたら色が褪せているだけ。
「どこまで行くの?」という問いに、彼は寂しく「どこまで行けばいいんだろう。」と答え、「もうここらあたりでいいんじゃない?」という問いかけに、彼女は物憂げに「ここらあたりでいいのかも」と答えた。
彼と彼女は、溜め息と肩の荷を残して消えた。
残された溜め息は深く生暖かく、荷物の中身は山ほどの言い訳と壊れた夢の欠片とへしゃげたプライドだった。

いつだって逃げ出せる準備はしてる。

いつだって去りゆく準備はしてる。

いつだって消える準備はしてる。

景色を見ながら、悔恨の足音を残して。
ゆっくりとなんかやってられない。
次から次と浮かんでは消える闇。流れ出ていく時間。足止めくらわされてる場合じゃない。
目まぐるしく刺さっていくニュースに無反応で対抗などできない。
差し戻された善意は、どこまでも漂い腐敗し朽ち果て虚無感の温床となる。
愛想笑いはふやけてしまって、何時溶け出すのかわからない。
陽溜まりに肩を寄せ合い、やり過ごそうなんて考えてても、温かな想いは、剥がされていく。

見ろよ。
流されていく様を。

聞き逃すなよ。
漂う声を。

偶然という奇跡と、
必然という奇跡の中に、奇跡的に生きている。

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ただひたすら生きていく。
漂流することも、
彷徨することも。

回り道しても、
歩くしかない。

とことんどこまでも生きていく。
馬鹿野郎と呼ばれても、
馬鹿野郎と呼んでも。

青い山々が続こうと、荒れ果てた荒野であろうと、道があってもなくても。
息をして、心臓が打ち続けていく。

見えているものが実在するとは限らない。
触れるものが現実と思わなくていい。

風の声、街の匂い、脳裏によぎるのは、懐かしい想い出であって欲しい。

無情にも夢は砕かれるもの。今いる足下に人生は集約されて、世は無常だと逃げ場を作る。

片頬を上げ笑いをつくり、夜の闇と共に眠りにつこう。

また生きていれば、朝がやってくる。

否応なしに。