※個人的妄想。苦手な方はご遠慮ください。
「ごめんよ、
誰かいるけぃ。」
盆踊りを明日に控えた日の昼下がり
宗順先生のお宅に 客が来たようです。
「はぁぁい。」
おかねさんより先に
一朗ちゃんが玄関に出ます。
宗順先生の書斎から来ましたから
師に何か教わってたんでしょう。
客は 見たことのない男です。
粋を気取った
流行りの柄の着物姿ですが、
洗い張りくらいしたほうがいい、
どっか草臥れた様子です。
恐らく 左官屋と似た歳のようですが
目元や腹回りに
色んなものが溜まっておりますな。
「おめぇさんは この家の子だね。」
「はい、櫻井翔一朗と申します。
失礼ですが
どちら様ですか。」
台所から顔を出したおかねさん、
玄関に正座している一朗ちゃんの
受け答えに感心しながらも、
この怪し気な客に
丁寧な対応はいらないんじゃないかい
と思っているようです。
「しょういちろう、か、
てぇした名だな。」
ほら、質問に答えもしません。
男は じろじろと一朗ちゃんを見ます。
左官屋は 今日は仕事を休んでおります。
明日の祭の準備がありますからな。
今は 松吉に手伝ってもらって
長壽寺の本堂に行っております。
頼まれてもいない翔先生も
ついていってしまいました。
今 家にいるのは、宗順先生と
一朗ちゃん、おかねさんの三人です。
一朗ちゃんは 平気そうですな。
客は 上がり框に腰をかけます。
笑った顔が なんとも小狡い・・・
「坊主、おめぇの本当の名は
そんなんじゃねぇ。
おめぇは ここん家の子でもねぇ。
己が おめぇの実の親よ。」
不穏な様子を察知して
宗順先生が 廊下に顔を出します。
おかねさんに至っては、飛び出て行って
一朗ちゃんの横に膝をつき
その右腕をしっかと握りましたよ。
翔先生
左官屋
一朗ちゃんの一大事だ!
とっとと帰って来ねぃ!