※個人的妄想。苦手な方はご遠慮ください。
おんなし頃 智ちゃんは
差配さんの家におりますよ。
おとっつぁんのほうは、
翔先生のおっかさんを
寺子屋建設現場にご案内しています。
おっかさんを
籠が待つところまでお送りしたら
そのままその足で 用足しに行くようです。
「今の寺子屋は どうだい?」
差配さんの奥さんが
智ちゃんに団子を勧めます。
智ちゃん、いただきますをして頬張ります。
「宗順先生が たくさん書を
教えてくれる・・・くれます。」
「ああ、腰がよくなりなすったんだね。」
奥さんは 仮住まい中の寺子屋が
どんな風か尋ねたのですが、
智ちゃんはどうやら今 書に夢中のようです。
「翔先生んとこの赤ん坊は
元気かい?」
これは差配さんの質問です。
「はい。
どこにでも行くし
なんでも口に入れるので
先生方の本のあるお部屋は
入っちゃいけないことに
なった・・・ました。」
拾われたばかりの頃は
宗順先生の書斎で
吊床に揺られておりましたのになぁ。
差配さん夫婦は
智ちゃんとお喋りを続けます。
おや、赤さんの産みの親の
話になりましたよ。
「おとっつぁんは
赤ん坊は親と一緒が一番いい
って言って、でも、
翔先生が親んなりたいんなら
それがいっち良いから、
産みのおっかさんが
後から取り戻しに来ないか
確かめておかないと、って。」
ああ、左官屋が
”遠くへ泊まりの仕事に行った"時の
ことですな。
帰ってきてから
智ちゃんにも きちんと
話してくれたんでしょうか。
それとも 師匠方に報告するのを
一緒に聞いていたんでしょうか。
「智坊のおとっつぁんの情報もあったから
てて親も母親もわかったんだってね。」
うん、と智ちゃんが頷きます。
おとっつぁんのことが
誇らしいんでしょう。
智ちゃんが知らなくて
差配さんだけが知っていることも
ございましてな。
左官屋が
赤ん坊の母親に会いに行った時
(居場所の特定には
親分方の力を借りましたよ)、
女は 男のことを怖がり
話したがらなかったそうです。
左官屋は 女に
”責めるつもりは毛頭ない、
ただ 赤ん坊の父親に
なりたがっている男がいるから、
それについて
承知してもらいてぇだけなんだ”
と言ったそうな。
女は 智のもの静かな様子に
安心したのでしょうか、
ひとたび口を開くと
男とのこれまでを
一気に語り尽くしたのだとか。
結局その話が聞けたからこそ
井戸に毒を投げ入れた犯人も
捕まえることができました。
「おとっつぁんは
子どもは親を選べない、けど、
赤さんは
翔先生を選んだんだろう、って
言ってた。」
「ああ、そうかもしれないねぇ。」
「見る目のある赤ん坊だ。」
智ちゃんのおとっつぁんは
普段は口数が多くはありません。
でも、大切なことは ちゃんと言います。
”産みの親がどんなでも
子どもに罪は無ぇ”
おとっつぁんは 智ちゃんに
そう言ったのです。
てて親の罪は 子どもには
関係ありませんわな。
智ちゃんには 『罪』という言葉が
少ぅし難しかったようです。
赤さんは 翔先生の所で
幸せに育つでしょう。
師匠は その子育てに
おとっつぁんを当てにしている、と
智ちゃんは知っています。
その時も
おとっつぁんは 智ちゃんを
優しくぽんぽんしてくれましたっけ。
そこでは
言葉が節約されてましたが。
”おいらには
おとっつぁんがいて良かった”
智ちゃんが そう考えていると
差配さんたちも
丁度褒めてくれているところでしたよ。
「智ちゃんのおとっつぁんは
大したもんだねぇ。」
「大切なことが何か
よぉくわかっているし。」
「仕事の腕も一流だし。」
おやおや、
智ちゃんが照れてますよ。
そろそろ家に帰る?
近いですけど、お気をつけて。