※個人的妄想。苦手な方はご遠慮ください。

 

 

 

 

「寺子屋の翔先生の母上様が

 左官屋の所に来たんだって。」

 

今日も龍神長屋の井戸端は

賑やかです。

 

「母上様、って何だよ(笑)。」

「母上様だろ?」

「長屋中に饅頭のお裾分けを

 いただいたよ。」

「ああ、智ちゃんが配って歩いていたね。」

「美味しかったね。」

「ああ、上品な味でね」

「美味しかった」

 

おっかさん

たくさんお持ちんなったんですな。

 

「で、何の話だったんだい?」

「隣のとんかちがうるさくて

 良くは聞けなかったけど」

ああ、お隣の寺子屋建築現場ですな。

 

「聞いたんだね?」

「聞こえてきただけさ。

 今日は天気が良かったから

 障子戸も開けていたしね。」

「で?」

「新しい寺子屋の壁は

 左官屋が塗るんだって。」

「まあそりゃそうだろ。」

「いやいや、智っつぁんは、

 普段は寺や神社の仕事ばかり

 してるんだって。」

「ああ、なんか聞いたことが

 あったような気もするね。」

「翔先生のおっかさん、

 特別に願って、みたいに

 言ってたよ。」

「左官屋 大したもんなんだね。」

「塗り壁なんざ

 どれも同じに見えるけどね。」

「腕が確かなんだろうさ。」

「だろうねぇ。」

 

「あとは、寺子屋の赤ん坊の話、さ。」

左官屋のお隣のおかみさん、

声を潜めるフリをします。

 

「翔先生が育てる、

 って言ってる?」

「翔先生の実家でも

 それを認めて」

「まだ独り身なのに?」

「嫁さんはいなくても、ねぇ・・・」

「あの赤ん坊のてて親が、

 こないだの井戸に毒を投げた男らしい。」

「なんだって」

「そりゃ本当かい」

 

おかみさん方 声が大きくなりましたな。

気付いた何人かが

しぃーッとやります。

 

「坊さんだったよね」

「子どもがいるってことは

 嫁がいたんだね」

「囲ってた、みたいなんだろね、

 女も子どもも

 物みたいに扱ってたようだよ。」

「坊さんなのに?」

「元々の性格が

 ひねくれて暗かっただけでなく

 おかしかったみたいで」

「毒を投げるくらいだからね」

「おかしいとこに女は気付いて

 怖くて逃げたらしい。」

「そりゃ怖かろうよ。」

「もっと早く逃げりゃ良かったのに。」

「気付いた時には

 お腹が大きくなってたのかもね。」

「ああ、そうかもね。」

 

「で、赤ん坊は?」

そうそう、赤さんは?

 

「男の性格がそのままなら

 子ぉもああなるのかって

 それも怖くて」

「捨てたのかい?」

「そうらしい。」

「寺子屋、ってのがまた・・・」

「寺子屋だって

 わかって捨てたのかね?」

「らしいよ。

 真っ直ぐ育って欲しい気持ちは

 あったんだろうね。

 後で 男にみつかった時にも

 子どものことは

 絶対に話さなかったんだって。」

「まぁ 捨ててったんだから

 分からないっちゃぁ

 分からない。」

 

「女も気の毒だが

 やっぱ一番可哀想なのは

 罪のない赤ん坊だね。」

おかみさん 頷き合います。

 

「男の家は

 なんか大層なとこらしい。」

「大層な金持ち、とかかい?」

「その辺りは聞けなかったけど。

 そこん家と翔先生が

 ちゃんと話をして」

「へぇ」

「で、赤ん坊は

 正式に翔先生の子に

 なったんだって。」

 

「で、なんでそれを

 翔先生のおっかさんは

 左官屋に話したんだい?」

 

「そりゃ お前さん、

 おっかさんも

 翔先生の恋心を

 知っていなさるからだろ?」

「やっぱり それかい?

 あっちとこっちは

 こうなんだね?」

「いやさ、それじゃぁ

 男同士だろうがよ。」

おかみさん方、

一気に口調が過熱しましたな。

 

「そうじゃなくて、

 いや それもあるんかもしれないけど、

 それよりも、さ、

 赤ん坊の母親を

 左官屋が見つけ出したから、

 らしいよ。」

 

「へ?どういうことだい?」

 

おかみさん方の立ち話は

まだ続くようです。