※個人的腐妄想BL系  苦手な方はご遠慮ください。




”帰るメール”をしたのに
LINEが既読にならない。

「ただいま~」
声をかけても返事はない。
リビングは明るく暖かい。
智君の姿を探して寝室をのぞいたが、
ベッドにもいない。

小さ目のノックをして
智君の部屋に続くドアを開ける。
あまり使われず
ほぼ倉庫と化しているそこで
智君は居眠りをしていた。

俺が智君のアトリエにしたいその部屋は
床暖房もあるし
防音もばっちりで 眠るには最適!
って なんか違ーーう・・・

智君は
棚に自分が描いた絵を2枚立てかけて
それを肴に呑んでいたようだ。
うち1枚は モデル俺、
門外不出・・・にしたい若干露出が激しい作品だ。

棚には 俺が贈った鉛筆セットが
未使用のまま麗々しく飾られている。
その隣には
やっぱり俺が買ったカッターと芯削り器も備えてある。

嬉しいような、
使ってもらえなくて寂しいような・・・

智君は
俺にくれたラスベガス土産のクッションを枕代わりにし
薄いラグだけ敷いて床に横たわっている。
起きる気配はない。

どうしようかと思ったが、
床暖房が入っていたし
毛布だけ掛けて
自分は入浴することにした。



「智君、起きて。
 風邪ひくからベッド行こう。」
風呂からあがっても まだ寝ていたあなたを
(気持ちの上では)優しく起こす。

ゆさゆさと辛抱強くゆする。
そろそろ諦めて担いでいこうかと算段し出した頃
智君が覚醒し始める。
意味不明な声を発し
開かない眼をこするのも可愛い。

真に 愛とは盲目である、
年上のおっさんが可愛く見えるんだから。

「・・・お帰り~・・・」
両の腕が俺を包み
唇 が 重 な る。
・・・キ ス してくれるってことは 結構呑んでるってこと?

「あんた、ビールくさい。」
「翔ちゃんはぁ 良い香り~」
・・・軽く酔っぱらってんじゃん。

「寝ますよ。」
「・・・ちょ・・・
 おいら 待ってた~」
「?」
「あそこのスケッチブック取って。」
智君は棚を指す。

鉛筆が飾られた下の段に
資料用の本とかクロッキー帖とかが置かれている。
「それぇ」
「どれ?これ?」
「ん。」

寝起きの酔っ払いは
ラグの上に座ってスケッチブックを受け取ると
クッションを前に置き
俺にそこへ座れと言う。
ふっくらクッションは座布団じゃないでしょ、智君。

「これ、バレンタインのお返しぃ。
 何にも思いつかなかったからぁ。」
酔ったせいか
いつもより照れや恥じらいを表に出さずに
あなたが 或る頁を示す。

柔らかい鉛筆で書かれた絵は
またしてもモデル俺、但し またしてもパン一。

「・・・あ、ありがと。」
俺のためらいは智君に伝わるわけで・・・。
「・・・邪魔?」
「まさか!
 邪魔なわけない!
 すっごい嬉しい! けど・・・
 服は?」

「・・・モデルさんのぉ
 一番きれえだと思うところをぉ
 描いてみたのッ」

・・・
そうやって ふにゃふにゃ笑うあなたが
綺麗だよ。

智君の指が俺に向かって伸びてくる。
自分ちにある鉛筆を色々使ったんだと
説明してくれる。
腕のラインは4Bで影は6B
腹筋は4B
頬は6B・・・
唱える智君の声が何かの呪文のように響く。

「瞼は2B・・・」
智君の優しい眼が
俺に近付いてくる。
「唇は・・・どれだったっけ?」

見つめ合って
次の瞬間には どちらともなく
唇 を 重 ね ていた。


智君、
俺 絵をもらえるのはものすごく嬉しいんだけど、
飾れるような絵が今度は欲しいな。
例えば 前に描いていた犬の絵の下絵とか
額に入れて玄関に飾るなんてどうだろう。

今日のところは
今いただいた
絵の御礼から、まずは。