菜摘ひかるの作品を最初に読んだのはヤングチャンピオンに連載されていた
”仰げば尊し”だった。
当時のおいらは、童貞を捨てたかどうかの時期・・・正直前後はよく覚えていないが、
まぁとにかく恋愛に関しては女の人とほとんど接点がなく、賞与が出た時になけなしの
銭を握りしめ風俗に行って無理矢理大人の階段を上ろうとしたという、まぁ何とも
情けない時期である。やっぱりさ、女の子には色々と幻想を抱くわけですよ、
純情莫迦青年としては。それを、あけすけな性的表現と、屈折した女性心理を
文章とマンガの両面から見せられて、ガツンと衝撃を受けたわけだ。
「男が女に抱く幻想をぶち壊し、『あーあーあー』と頭抱えてのたうち回らせれば、あたしの勝ちである」
(元の文章がどこに書かれていたか忘れたため、多少の語句の違いはあると思うが、ニュアンス的には間違いないはず。)
とあったが、まさにそれに近い状態にさせられた。いや、でも、リアルでの
交際経験が無かった分だけ、逆にふむと変に納得させられた部分もあったか。
とにもかくにも、それ以降彼女のサイトの日記やエッセイを読むようになった。
本書は、彼女が風俗を辞めた後の時期のエッセイ。
性についての話が少なくなった代わりに、己の日々の感じた様を実に赤裸々に書き記してある。
読むほどに、あまりにも素直で、あまりにも痛々しく、あまりにも愛しい、
でも、絶対近くにはいて欲しくないタイプ。多くのカリスマと呼ばれる存在はそんな感じだと思うが、
彼女もまた、ある種のカリスマ性を有する存在だったと思う。
2002年、29歳の若さで急逝。(余談だが、この時初めておいらよりも年下だったことを知る。)
マスコミ向けのコメントで、弟さんの
「姉は殉職したと考えています。」
の言葉は、29年の短い一生を、少なくとも己の信念を曲げずに駆け抜けたということを表していると思う。
興味本位でもなんでもいいから、手を取って一読してほしい本。
- 菜摘ひかるの私はカメになりたい (角川文庫)/菜摘 ひかる
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