デジタル通信無線とWi-Fi監視技術は極めて深く関係しています。 そもそもWi-Fi自体が代表的なデジタル無線通信規格であり、Wi-Fiセンシングという技術はデジタル無線通信の仕組みとデジタル信号処理(DSP)の基盤のうえに成り立っています。
具体的な関係性と重要性は以下の通りです。
1. OFDM(直交周波数分割多重)技術
現代のデジタル無線通信(Wi-Fiや5Gなど)では、データを1つの波ではなく多数の細かな周波数帯(サブキャリア)に分割して送信するOFDMが採用されています。CSIセンシングは、このデジタルサブキャリアごとの振幅・位相の変化を取り出して解析します。
2. プリアンブル(既知パケット)による伝送路推定
デジタル無線のパケット(フレーム)の先頭には、送受信間で事前に決められた「プリアンブル」と呼ばれる既知のデジタル信号が含まれています。受信機が「本来届くはずの既知信号」と「壁や人体に反射して実際に届いた信号」を比較・補正することで、空間の歪み(CSI)をデジタル数値として正確に算出します。
3. MIMO(多入力多出力)とビームフォーミング
複数のアンテナを使って同時に通信・処理を行うMIMO技術により、電波が空間のどの方向から反射してきたか(到来角:AoA)をデジタル計算で算出・特定できます。
4. デジタル信号処理(DSP)とAI解析
受信したアナログ電波をA/D変換器でデジタルデータ(IQサンプル)に変換し、高速フーリエ変換(FFT)やノイズ除去フィルタを適用することで、呼吸や微細な体動による微少な変化を抽出します。
Wi-Fiセンシングは、単に電波の強弱(RSSI)を見るアナログ的な検知ではなく、デジタル無線通信のプロトコルとデータフレーム構造そのものをセンサとして応用した技術です。
Wi-Fi電波は空間を伝搬する際、壁や家具、人体の表面で反射・屈折・散乱します。人が動くことで電波の伝搬経路が変化し、受信される波形が歪む現象を利用します。
CSI(Channel State Information:チャネル状態情報)の抽出
通常の通信速度(RSSI)よりも細かい、サブキャリアごとの振幅や位相の変化データを物理層から直接取り出します。
信号前処理(ノイズ除去)
CSIデータに含まれる機器由来の位相ノイズや環境ノイズを、バンドパスフィルタや主成分分析(PCA)などで除去・整形します。
機械学習 / 深層学習モデル
整形されたCSIデータをAIモデル(CNN、LSTM、Transformerなど)に入力し、「在室・不在」「移動方向」「呼吸・心拍」「24部位の身体ポーズ」などを推論します。
IEEE 802.11bf(標準化規格)
Wi-Fiルーター等の機器に人体検知機能やジェスチャー認識機能を標準搭載するために策定が進められている次世代標準規格です。
