やってしまった…
大学時代の後輩K君とお互いに家庭がありながら、付き合うようになって3か月。
まさか、こんなに早くやらかしてしまうなんて…
女性課長3人で飲んだ帰り道、「迎えに行こうか?」という夫の申し出を「ウォーキングしたいから」と断って、歩いて帰った。
実は忙しくてなかなか連絡の取れなかったK君に帰りながら電話がしたかった。
色々あって落ち込んでいるだろうK君を励ましたかったから。
家までの20分、声を聞いておしゃべりして、満たされた気分で家に帰った。
長男が送ってきた旅行先の写真がとてもきれいだったからK君にも見せてあげるね、と約束して。
家に着いてすぐ、お風呂にスマホを持ち込んで、K君にLINEを送った。
息子が旅行先から送ってきた写真を転送して、メッセージを添えた。
「さっきはお付き合いありがとう。私もおかげでK君分を補給した」と。
するとしばらくして、グループLINEに夫から、
「送り先間違えてるよ」とメッセージが❗️
なんということか、家族のグループLINEに間違えて、K君へのメッセージを送ってしまった‼️
しかも、気づいたのは夫…。
既読がついたメッセージは取り消すことができない。それなのに動揺して削除したりして…
夫と息子2人に、K君へのメッセージを見られてしまった。これは絶体絶命❗️
何が墓場まで嘘を突き通す、だ?
こんな初歩的で決定的な凡ミスで、K君とは、まさかのジ・エンドなのか…。
しばらくは混乱したものの、あわててグループLINEで弁明した。
「ごめん間違えた」
「後輩にふざけて送るヤツ入れちゃった…
文だけ読むと相当怪しいけど、仲良し後輩とふざけてるヤツだから。ちょっと落ち込んでたから」
と弁明を入れてみたけど、もうアウトじゃなかろうか…
送り先が男の人なのは「K君」で明白。
しかも「K君分補給した」とは…
だれが読んでも恋愛関係は明白…。お風呂から出て、慌てて夫に事情を説明した。
夫は何食わぬ顔で、
「いや、だって言わなきゃ気づかなかったでしょ?間違えたままじゃマズイよね?」
と、拍子抜けするくらいあっけらかんとしていた。
私もあわてて、LINEで弁明したとおり、前に話してた大学の後輩が息子さんが本命の大学に落ちちゃったから励ましてたと説明。帰りに電話してたことも正直に伝えた。夫は大学のサークル仲間のことはざっくりと話してあったからそこは腑に落ちたよう。
「文だけ見ると相当怪しいでしょ?でも相手もちゃんと結婚してるし、さすがにK君とはないわ。私もそういうことするなら相手選ぶわ。そもそも、本気の相手だったら、◯◯君分補給とか、あんなふざけた言い方はしないわ!」と弾丸のように言い訳した。
夫は本当に心からそう思ってるのか?は不明だけれど、全く曇りのない笑顔で、
「そうだよね。俺が嫉妬深い夫でなくて良かったね」とニヤリと笑い、疑うそぶりを全く見せなかった…。
ついでに次男にも、
「お父さん、ひどくない?お母さんが間違っていれた、あのヤバいLINE見て全く疑わないんだよ」
と言ってみた。
次男はあっさりこう言った。
「まぁ、10年とか20年前だったらそうかもね」
長男からは、何言ってんだ?風味のスタンプが入って終わり…。
夫よ、息子たちよ…。
まさか、本当にあんなつたない言い訳を信じたのか?
よく考えたら、すべてが繋がるはずだけど。
K君は仙台。2月に私、一人で仙台に行こうとしてたじゃないの。寒波で行けなかったけど。
最近、夜一人で本屋に出かけるとか、ヨガの帰りにコメダ珈琲によってくるとか、お風呂場にスマホを持ち込むとか…どれも今までしてないことだから、充分、怪しいでしょう?
その後も、夫からは全く疑うそぶりを感じない。
私一人がスマホをうっかり見られたりしないかと、前よりドキドキするようになっただけ。
もしも、本当に夫が私の言い訳を鵜呑みにしているのならば、やはり54歳ってもう恋愛するような女ではないと思ってるんだろうな。私自身もずっとそう思っていたし。
ある意味助かったけど、女として見られていないことを改めて突きつけられて、ちょっと寂しい気持ちになった。同時に初めて夫に罪悪感を感じた。
54歳の妻や母親は、世間的には恋なんてしない存在。
せいぜいふざけてると思われるか、本気だと知ったら「イイ歳して気持ち悪い」と思われるか。
だけど、54歳でも、結婚してても、母親でも、恋はするのよ…。
私も正直、自分にびっくりした。
自分の身に起きた現実に…。
世の中にはいろんな人がいて、欲望を満たす相手を探して関係を結ぶ人もいるだろうし、私のように思いもかけず恋に落ちてしまった人もいるはず。
私のような後者の場合、どうやってこの罪悪感と付き合っているのだろう?
家族や世間に言えない秘密を抱えることに。
いっそやめてしまえばどんなに楽になるかと思いながら、消すことのできない気持ちに引きずられて、K君と恋は今も進行中…。
自分から告白したのだし、一生嘘を突き通すと決めたのだからと思っても、時々、揺り戻しのように後ろめたさに襲われる。
それでも、常識に縛られて後ろを向きそうになる私をK君が冗談で笑わせてくれる。
「結婚してたんだっけ?何年前に?28年前、それ、もう時効じゃない?
ちび子さんは人生の道が急に曲がったって言うけど、広くなっただけだよ。
一車線だった道が二車線になったようなもの。時々、車線変更できるようになったでしょ?」
とんでもない理論だと思うけど、K君のふざけた口調で言われるとつい笑ってしまって、私も心が軽くなる。
だけど、本当はK君だってこんなことをするような人ではないこともよくわかってる。ずっと自分の家庭だけを大事にしてきた人なのに。
だけど、私には絶対にそんな迷いや後悔は見せず、54歳になった私に恋をしていると言ってくれる。
その強さがきっと、K君が最初に言ってくれた
「ずっと特別だったから。大切にするから」ということなんだと感じている。
久しぶりに花を買った。
毎日の家事に追われるキッチンで咲き誇るガーベラは、まるで私の日常で突如始まった恋みたいにそこだけが華やいでいる

