路面電車新設の可能性(2) | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

逆に、事業費の抑制を最優先するのであれば、整備区間を五条坂―烏丸五条に限定し、拙著【軌道系都市交通の復興計画(後篇)】で紹介した「トランスロール」を導入するのも一案です。これはゴムタイヤ式の路面電車というべきもので、走行路の中央に埋め込まれた案内用のレールを2つの鉄輪で左右斜め上から挟み込む構造になっています。

 

トランスロールは通常の路面電車と同じく左右のハンドル操作が不要なのが利点です。それでいて、レールに荷重が掛かりにくくなるため、工事の負担も小さくなります。国内ではまだ採用例がありませんが、開発国のフランスをはじめ、イタリアや中国などの複数の都市で実用化されています。

 

その建設費は通常の路面電車の約7割、1km当たり14~21億円程度です。五条坂―烏丸五条間は約1.5 kmなので、32億円程度の投資で収まることになります。

 

さらに、トランスロールにはもう1つのメリットがあります。それは、蓄電池や燃料電池を搭載していれば、架線やレールがない一般道路も走行できることです。よって、例えば国道1号線を東進した先にある京阪バス山科営業所、または左京区の京都バス高野営業所の一角を間借りして車庫と工場を設け、回送運転で出入りすることが可能です。

 

ただし、一般道路から案内用レール設置区間への進入には徐行運転と慎重なハンドル操作が不可欠なので、頻繁に行うのは好ましくありません。海外でも、レール設置区間以外での営業運転は行っていない模様です。早朝の入線時のみ行うべきでしょう。

 

なお、営業距離が約1.5 kmに留まるからには、京阪本線および烏丸線との乗り継ぎを前提としなければ運営が成り立ちません。トランスロールを京阪の1路線として運賃を通算した上で、新線加算の60円を課すのが妥当です。この場合、清水五条に快速特急を含む全列車を停車させれば、大阪方面から清水寺へのアクセスが向上します。

 

前述の通り、トランスロールは国内に前例がありませんが、それゆえにそのもの自体が一種の観光資源となる可能性を秘めています。京福との直通運転は取りあえずできなくなりますが、将来的に通常の路面電車に改築する余地は残されています。段階的な整備という観点からも、取りあえずは車庫と工場に多大の投資をしなくて済むトランスロールを導入するほうが現実的ではないでしょうか。

 

 

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