路面電車新設の可能性(1) | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

京都駅からの「東福寺ルート」「山科ルート」に、「バスと地下鉄の役割分担」の記事で記した民営バスのB・C・D系統を組み合わせれば、左京区南部と東山区の観光地をおおむねカバーできます。ただし、参拝客が特に多い清水寺の最寄りにある五条坂停留所付近は渋滞が慢性化しています。

 

鉄道の最寄り駅は京阪本線の清水五条ですが、バスの五条坂停留所までは1km近く離れており、そこからさらに同じくらいの距離を登らなければ清水寺にはたどり着けません。駅から直接歩くのはかなりの負担です。やはり、清水五条駅や烏丸線の五条駅から五条坂まで軌道系の交通機関が欲しいところです。

 

東山通を越える手前の国道1号線の高架下に五条坂のホームを設け、南側を並走する側道のゼブラゾーンと緑地帯を転用すれば線路用地を確保できます。そのまま西へ進み、1号線が地上に降りて五条通と合流するあたりで線路を中央分離帯に移せば、烏丸五条まで路面電車を新設することは可能です。

 

問題は車庫と検査用の工場です。京都市内では都心からよほど遠ざからなければまとまった用地を確保するのは難しく、景観の問題もあります。それならば、いっそのこと公共用地である京都駅前烏丸口のバスターミナルの地下にホームごと設けてはどうでしょうか。

 

烏丸五条からなおも西進して堀川五条の交差点を南へ曲がり、西本願寺前を経て七条堀川の交差点の手前で地下に入り、今度は東へ曲がって塩小路通を進めば京都駅前へ到達できます。堀川通は五条通より中央分離帯が狭いですが、車線は多いので線路に転用する余裕はあります。

 

さらに、堀川五条から四条堀川まで北上し、西へ曲がって四条大宮へつなげれば京福との相互乗り入れが可能になります。すなわち、京都駅前と嵐山の中心部および清水寺、さらには両観光拠点を軌道系交通機関が直結できるようになるのです。この場合、バスのD系統を代替でき、C系統の増発も不要になります。

 

軌道内への進入禁止を徹底し、電車の接近時に進行表示を延長する優先信号を可能な限り設置すれば、路面電車はバスより速く、定時性にも優れた乗り物になります。四条堀川と四条大宮の間は上下合わせて4車線だけなので、一番南の車線を転用して単線の軌道を敷くしかありませんが、距離はわずか200mなので許容範囲でしょう。

 

路面電車の建設費は1km当たり20~30億円程度であり、地下鉄のおよそ10分の1です。ここで述べた設置案の総延長は約3.5kmで、そのうち約2.5kmは路面を走行するので、75億円以内に収まります。

 

ただし、残りの1kmと車庫・工場は地下に設ける想定なので、総事業費は相当な金額になります。それを誰が負担しどうやって償還するのか、運営主体や運賃体系をどうするのか、超低床車を導入するのか、京福に合わせて高床車にするのかなど課題は山積みですが、この案が実現すれば京都市内交通の利便性は大きく向上します。

 

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