運賃体系の見直し | 京阪大津線の復興研究所

京阪大津線の復興研究所

大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

京都市営地下鉄は、少なくともコロナ直前の2018・2019年は両線で連続して23億円の黒字を計上した実績があります。東西線の赤字を烏丸線が穴埋めした上での数値ですが、決して閑古鳥の鳴く列車を漫然と走らせていたわけではありません。

 

では、交通局が運営を続けてもいずれは累積赤字を解消できるのかと言えば、それは違います。京都市に限らず、公営交通には悪い意味での平等主義や同調圧力が働きがちだからです。市民の負担に差をつけないというのが大義名分ですが、黒字の烏丸線と赤字の東西線に同じ運賃を適用することが、果たして真の平等でしょうか。

 

それどころか、東西線の山科ー三条京阪間は京阪時代との格差を縮めるべく「特定区間」に指定されており、定期運賃(特に通学)が通常よりも大幅に安く設定されているのです。この種のしがらみを断ち切るだけでも、民営化の意義があるというものです。

 

黒字区間からの内部補助は、赤字区間単独での収支改善努力を低下させる方向に作用します。京津線の収益区間廃止はその典型であり、大津線が独立企業だったならば、何としても守り抜いたはずです。こうした悲劇を繰り返さないために、拙著【関西私鉄王国の復興計画(下巻)】では、大津線の分社化を主張しました。

 

しかし、東西線が京阪の手中に収まるならば、状況は違ったものになります。現在の京阪では、下記のように京阪線と大津線で異なる普通運賃が適用されており、東西線を挟んで乗り継ぐ際には、事実上3社を乗り継ぐのと同じ事態になっています。これを京阪線の運賃体系に一括して通算すれば、競争力は大幅に向上します。

 

ただし、実際の京阪線にはこれに二種類の加算運賃がプラスされます。なお、通学生が鉄道駅バリアフリー料金の対象外なのは、工事が完成する頃には卒業して沿線を離れる可能性が高いためです。

新線加算運賃の対象は鴨東線と中之島線です。これを東西線と、烏丸線のうち鴨東線より後に開業した北大路―国際会館間にも適用するのが妥当です。

 

また、「新線」ではありませんが、京津線と石山坂本線も赤字路線ということで同額を加算します。なお、新線加算運賃の「二重取り」は、中之島線が絡む場合のみ行うものとします。

 

鉄道駅バリアフリー料金は、京阪線同様にホームドア新設工事のただ中にある烏丸線全線に適用します。京津線と石山坂本線にはそこまでの設備が求められていないので、これまで通り対象外とします。また、東西線は開業当時から全駅にフルスクリーンのホームドアを完備しているので、10円加算は不要です。

 

これらをまとめると、以下の表のようになります。建設費の未回収区間や赤字区間の運賃を高めに設定して内部補助を縮小し、不公平感を緩和するのがこの改定案の趣旨であるため、必ずしも安くなるとは限りません。

例えば、東西線で特に需要が見込める山科―蹴上・東山・三条京阪・京都市役所前・烏丸御池は4~7km帯なので、現状より10円高くなります。しかし、便利な京阪山科の地上ホームを同じ金額で利用できるので、競争力はむしろ向上するはずです。また、表にはありませんが、定期運賃はことごとく安くなり、「特定区間」との格差は解消あるいは逆転します。

 

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