11篇 指切りをした その19

 

 兄の彼女から会いたいと言われて、喜んで会うほどの度胸は無いのに、断る訳にもいかず了承したものの、胸がドキドキして痛くなる。だって何を話せばいい?どんな態度で会えばいい?嫌われたらどうしよう。そんな心配を麻美に話したら、まるでしいちゃんがお見合いするみたいじゃない、単なる顔合わせなんだから気楽にかんがえなさいよ、と笑われた。

 

 麻美も交えて大学の友人たちと街中を歩いていると、一人が喉が渇いたから何か飲みたいね、と言い出した。目の前に喫茶店があったので、入ろうか、と顔を見合わせていると、ドアが開いて客が出て来た。先に出て来たのは立木佳史だった。 面と向かって顔を合わせた事も無いのに、どうしてこんなにも遭遇するのだろうかと吃驚した。さらに驚いたのは次に出て来た女性が兄の彼女だったからだ。二人は親し気に体を寄せ合い笑っていた。え、どうして?胸がバクバクと激しく動いた。

 

  ね、どうしたの?入るんでしょ?

 

立ち止まってしまった私を見て麻美が不思議そうに腕を引っ張る。慌てて笑顔を作り中へ入った。麻美は立木佳史に気付かなかったのか、一言も口にしないので此のまま黙っている事にした。

 

 胸のモヤモヤが消えないまま、その日がやって来た。待ち合わせは青い鳥だ。私が緊張しているので、解すために知っている場所にしたのだと言われた。確かに青い鳥はアルバイトをした所だから気楽に行ける。出不精の私には最適かもしれない。約束の時間より少し早く着いた。中へ入ると、いらっしゃいませ、と聞きなれた声が出迎えてくれた。三田美子がニコニコして小さく手を振っている。店長夫妻も笑顔だ。見渡すと兄は奥のテーブル席で彼女と向い合せに座っていた。彼女は私を見ると椅子から立ち上がった。私は急ぎ足で其方へ向かった。

 

  初めまして、水上志穂です。兄がお世話になってます。

 

丁寧に頭を下げて挨拶をした。

 

  立木千晶です。よろしくお願いします。

 

彼女の方も硬くなっている様だった。顔を見合わせて何方からともなく微笑んだ。私は兄に勧められて隣の席に座った。初めて間近で見た彼女は薄化粧なのに美しくて驚いた。