11篇 指切りをした その26

 

 結婚式が終わると兄夫婦は空港ホテルに宿泊する事になっていた。新婚旅行へ出発する飛行機便が朝早かったので、遅れない様にとの心づもりだ。兄に見送りは要らない、と言われていたけれど、両親と私は空港に出向いた。見送りは私達家族だけかと思っていたが、立木佳史も両親と一緒に来ていた。驚いたけれど娘の門出だから、見送りに来るのは当然と言えば当然だった。出発するまで見送りのロビーで、それぞれの家族が和やかに過ごしているのを見ていると、来て良かったと思った。


 兄夫婦が旅立っていくと二家族はそこで別れた。両親は其のまま自宅へ帰るので駅に向かい、私はアパートに戻るために一人でバスターミナルに向って歩いた。その目の前に立木佳史が現れたので吃驚して立ち止まった。先ほど別れたばかりなのに、どうして此処にいるのか戸惑った。


 声も無く立ち尽くしていると、立木佳史は話があるから少し付き合って、と言い近くにあった喫茶店を指さして入って行った。私は素直に従うしかなかった。中に入ると奥のテーブル席が空いていたので其処に座った。直ぐにウエイトレスが注文を取りに来たので、立木佳史はコーヒーを、私は紅茶を頼んだ。


  姉さんに頼まれていたんだ。これを渡してくれって。


そう言いながらポケットから白い封筒を出して目の前に置いた。何だろうと訝しく思いながらも受け取って開けて見た。出て来たのはビーズで出来た高級感のあるブレスレットだった。


  それ、姉さんの手作りなんだ。
  趣味で作っているものだから遠慮しないで受け取って欲しいって。


以前会った時にビーズでアクセサリーを作っていると聞いた事があった。まさか自分に作ってくれるとは思ってもいなかった。感激して胸が詰まった。


  付けてあげるよ。

 

私の手からブレスレットを取ると自然な動作で左の手首に付けてくれた。立木佳史の指先が触れると頬が熱くなるのが判った。


  うん、似合うよ。姉さんの自信作だって言ってた。


優しい眼差しを向けられると胸がドキドキして痛くなる。


  ありがとう。とっても素敵。嬉しい…。


じんわりと目頭が熱くなって来た。それ以上の言葉が出なかった。