協調性障害とは:
・協調運動は固有感覚系、小脳系、錐体路・錐体外路系などが関与してなされるものだが、その一部が障害されたために円滑な調和のとれた運動が行い得なくなった状態を協調性障害という。
・協調運動障害には
運動失調(ataxia)、
共同運動不能(asynergia)または共同運動障害(dyssynergia)、
ジスメトリア(測定障害)(dysmetria)、
変換運動(反復)障害(dysdiadochokinesis)、
筋トーヌス低下(hypotonia)、
振戦(tremor)などの徴候を示す。
運動失調の分類
小脳性 |
筋力や深部感覚には異常ない。 |
脊髄性 |
深部感覚の障害によって起こる。 |
迷路性 |
深部感覚や四肢の随意運動には障害がない。 |
大脳性 |
前頭葉、頭頂葉、側頭葉などの障害で起こる。 |
小脳性と脊髄性運動失調の鑑別:
鑑別のKeyとなるのは深部感覚の障害の有無である。鑑別チャートと対比表
症状 | 小脳性 | 脊髄性 |
深部感覚障害 |
- |
+ |
「脊髄性運動失調」
・深部感覚、すなわち位置覚・運動覚・筋覚の障害により起こるもの。
ロンベルグ試験が陽性。
運動失調は下肢に著明で、床を見ながらパタンパタンと歩くようになる歩行障害が特徴的である。
閉眼すると運動失調はますます増悪する。
測定異常があり、振戦は粗大振戦。
腱反射は消失。
これを示す代表的な疾患は脊髄癆。
梅毒が原因で35~50歳で発症することが多い。
「小脳性運動失調」
・筋力や深部感覚には異常がないのに小脳疾患により協調が障害されて起こる運動失調。
ロンベルグ試験は陰性で閉眼の影響はない。
歩行はよろめき歩き(酩酊歩行)。
測定異常があり、振戦は企図振戦。
腱反射は軽度低下。
構音障害(爆発性・不明瞭・緩慢)がみられるのが特徴的。
◎「小脳性運動失調症の6つの要素」
1:測定異常、
2:反復拮抗運動不能、
3:運動分解、
4:協働収縮不能
5:振戦、
6:時間測定障害
1:測定障害検査 1:測定異常 2:反復運動障害検査
1)arm stopping test 1)指指試験 1)手回内回外試験
2)コップつかみ運動 2)指鼻試験 2)finger wiggle
3)過回内試験 3)鼻指鼻試験 3)foot pat
4)線引き試験 4)膝打ち試験 4)tongue wiggle
5)模倣現象 5)足指手指試験
6)踵膝試験
3:運動分解;
小脳性運動失調では運動の分解が起こる。
これは、たとえば上肢を伸展させ、示指で同側の耳朶を真っ直ぐに指すように命じる。この際指先が3角形の一辺を真っ直ぐいかず(斜線)、2辺をたどりようになる。
4:「共同運動障害の検査」
・日常の行為は一般に単一な運動ではなく、いくつかの運動が組み合わさったものであるが、それらの運動の順序や調和が障害されたり消失した状態。
小脳障害でみられる。
検査方法として以下のようなものがある。
1)背臥位からの起き上がり
・患者を背臥位にして両腕を組ませて起き上がらせる。
小脳障害があると起きあがれず脚が高く上がる。(片麻痺にもみられる)
2)立位での反り返り
・患者を立位にして体を後方に反り返らせる。
正常では膝を曲げて後方に反り返ることができるが、
小脳障害では膝を曲げられず後方に転倒する。
6:時間測定異常
・動作を始めようとするとき、また止めようとするとき、正常人よりも時間的に遅れることをいう。運動興奮の遅れによるものである。
患者に検者の手を両側同時に握るように命ずると。
障害側では動作の開始が遅れ、完全に握りしめるまでの時間も遅れる。