内政干渉を自分で認めたトランプ氏。日本政府はこんな発言に何も言わないでいいのか?

 

 

【ワシントン=共同】トランプ米大統領は16日、衆院選での自民党圧勝を巡り高市早苗首相が「私の支持を要因に挙げていた」と一方的に主張し「大変喜ばしいことだ。われわれは彼女、日本と素晴らしい関係を築いている」と述べた。大統領専用機内で記者団に語った。

高市氏は9日、X(旧ツイッター)で「トランプ大統領の温かいお言葉に心から感謝いたします」と投稿。選挙戦終盤に「全面支持」を表明したトランプ氏に謝意を示していた。

トランプ氏が3月の高市氏との会談を見据え、対日交渉で有利になるよう恩を売っておこうとしたとの見方もある。

 

 

 

 

トランプ関税始動から1年、米国の貿易の変化をみる

 

 

米国トランプ政権が2025年2月に対中関税を引き上げ、2期目の「トランプ関税」が始動してから1年が経った。米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表が2025年末に「フィナンシャル・タイムズ」紙への寄稿で述べたように、2025年は「関税の年」として記憶されるだろう。その間、米国の貿易構造はどう変化したのか。本稿では、1月の政権発足、4月の相互関税発動からその半年後の10月までの貿易統計を基に、主要貿易相手国・地域との貿易動向や関税対象品目の輸入への影響を探る。

対中輸入は低調も、台湾やベトナムからの輸入は増加

米国商務省の貿易統計(季節調整済み、通関ベース)によると、2025年1~10月の財輸出額は前年同期比6.0%増の1兆8,219億ドル、輸入額は6.7%増の2兆8,758億ドルだった。輸出額から輸入額を引いた財貿易赤字額は7.9%増の1兆539億ドルと、暦年ベースで過去最高となった2025年(1兆2,047億ドル)に迫る勢いだ。各種関税措置が発動されてもなお貿易赤字が増加している要因には、年前半に見られた「駆け込み輸入」の影響がある。関税の発動を見越して、在米国企業は需要を上回る在庫の確保を急いだ。その結果、相互関税発動直前の3月の輸入額は前年同月比3割以上増加した。

しかし、相互関税が発動された2025年4月以降は様相が異なる。月ごとの振れ幅はあるものの、関税措置の影響により総じて輸入が減り、4~10月の貿易赤字総額は前年同期比16.1%減少した。財とサービスを合わせた貿易赤字額は10月に294億ドルと、2009年6月以来の低水準を記録した。

主要国・地域別に見ると、中国からの輸入減が目立つ。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、合成麻薬フェンタニルの流入阻止を目的とした対中追加関税(フェンタニル関税)が発動された2025年2月以降、対中輸入額は9カ月連続で前年同月を下回り、1~10月の輸入総額は前年同月比26.7%減の2,663億ドルに落ち込んだ。同期間の対中貿易赤字総額も28.4%減の1,754億ドルと大幅に縮小した。中国に対しては一時、フェンタニル関税と相互関税を合わせて100%を超える追加関税が課されていた(注1)。10月の米中首脳会談などを経て、両国の通商関係は小康状態にあるが、米国の対中貿易は低調な状態が続いている(2025年12月9日付地域・分析レポート参照)。

他方、中国とは対照的に、米国への輸入が増えている国・地域もある。2025年1~10月の台湾からの輸入総額は1,565億ドルと前年同期比61.5%増えた。スイス(978億ドル、125.3%増)、ベトナム(1,581億ドル、40.4%増)、アイルランド(1,250億ドル、46.8%)なども大きく伸びた。輸入増に伴い、2025年の台湾やベトナムに対する貿易赤字は10月時点で、過去最高を記録した2024年を既に上回っている状況だ(図1参照)。品目別に見ると、台湾からは半導体製品を含む自動データ処理機械の輸入が急増し、全体を押し上げた。これは米国内でのデータセンター建設など人工知能(AI)関連投資の拡大が要因とみられる。スイスとアイルランドは医薬品の駆け込み輸入などが寄与した。ベトナムからは自動データ処理機械や電話機、ビデオゲーム用のコンソールおよび機器などの輸入が大幅増となった。これらの品目は、中国からの輸入減少が目立ち、米国企業が対中関税を避けるために、ベトナムなど他国からの調達に切り替えた可能性が高い。

図1:米国の主要貿易相手国・地域との貿易赤字額
米国の主要貿易相手国・地域との貿易赤字額を2024年通年、2024年1~10月、 2025年1~10月の順にみると、台湾は740億ドル、620億ドル、1,120億ドル。ベトナムは1,230億ドル、1,020億ドル、1,460億ドル。メキシコは1,710億ドル、1,420億ドル、1,650億ドル。カナダは620億ドル、490億ドル、440億ドル。日本は690億ドル、580億ドル、530億ドル。中国は2,960億ドル、2,450億ドル、1,750億ドル。

出所:米国国際貿易委員会(USITC)データベースを基にジェトロ作成

関税対象品目が大幅増

各種関税措置により、米国に輸入される際に関税が課される品目は大幅に増えた。商務省の貿易統計で関税の賦課状況(輸入額ベース)を見ると、無税(HS1~97類)の輸入割合は2024年に44.8%だったが、2025年1~10月は22.4%に半減した(注2)。一方、追加関税対象品目(HS99類)の割合は6.4%から27.6%と4倍以上に膨らんだ(図2参照)。

2025年1~10月に輸入された追加関税対象品目の内訳を見ると、一般機械(HS84類)が15.6%と最大だ。次いで電気機器(HS85類、15.0%)、自動車・同部品など(HS87類、13.5%)、光学機器・医療機器(HS90類、5.2%)が続き、これらの品目で全体の約半分を占める(表1参照)。自動車・同部品などは1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品関税、そのほかの品目は相互関税や232条に基づく鉄鋼・アルミ派生品関税の対象になっている。

図2:米国への輸入における関税賦課状況(輸入額ベース)
米国への輸入における関税賦課別の割合を2024年通年と2025年1~10月で比べると、無税(HS1~97類)は44.8%から22.4%に、無税(HS99類)は0.6%から27.8%に、一般関税率対象は20.4%から5.9%に、追加関税対象など(HS99類)は6.4%から27.6に、その他は27.7%から16.3%に変化している。

注:関税賦課状況は「税率規定(Rate Provision)」に基づく分類。米国の追加関税措置の対象品目と適用除外品目はHS99類で指定されている。「その他」は外国貿易地域(FTZ)に搬入された貨物などを含む。
出所:米国商務省貿易統計を基にジェトロ作成

表1:追加関税対象品目の輸入額(2025年1~10月)(単位:100万ドル、%)(ーは値なし)注:「税率規定(Rate Provision)」に基づく分類のうち、追加関税対象品目など(HS99類)の輸入額。
品目 HSコード 輸入額 割合
一般機械 84 123,190 15.6
電気機器 85 119,004 15.0
自動車・同部品など 87 107,115 13.5
光学機器・医療機器 90 41,034 5.2
プラスチック 39 27,187 3.4
家具など 94 25,156 3.2
衣類 61 24,457 3.1
鉄鋼製品 73 22,449 2.8
玩具 95 20,055 2.5
合計(その他含む) 791,524 100

注:「税率規定(Rate Provision)」に基づく分類のうち、追加関税対象品目など(HS99類)の輸入額。
出所:米国商務省貿易統計を基にジェトロ作成

相互関税がほぼ全ての国・地域に対して課される中、いまだ無税で輸入されている品目があるのは、特定の食品など一部の品目が相互関税の適用除外になっているためだ(2025年11月17日付ビジネス短信参照)。また、相互関税の対象から外れているカナダ、メキシコには別途、フェンタニル関税が課されているが、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たす品目は同関税が免除されている。米国に輸入する際のUSMCA利用率(輸入額ベース)は、2024年にカナダが37.8%、メキシコが48.8%にとどまっていたが、2025年10月には両国とも9割弱に達した(図3参照)。関税免除の恩恵を受けるために、USMCAの利用を新たに始めた事業者が増えたことによるものだろう。米国に輸出する企業にとって、USMCAは関税コストの軽減につながる有効な手段となっており、北米地域に進出する日系企業からも「USMCAの活用で、欧州やアジアの競合他社よりも有利になっている」との声が聞かれる。その反面、2026年7月に予定されている協定の「共同見直し」で、カナダ、メキシコへの関税上の優遇措置が見直されることへの懸念も大きい(注3)

図3:カナダ、メキシコから米国への輸入におけるUSMCA利用率(輸入額ベース)の推移
米国への輸入におけるUSMCA利用率(輸入額ベース)をみると、2024年にカナダは37.8%、メキシコは48.8%だったが、2025年10月にはそれぞれ88.0%、87.4%に上昇している。

出所:米国商務省貿易統計を基にジェトロ作成

2026年も関税措置の継続的な変動に備えを

企業は今後も関税措置の対象品目の修正・拡大や税率の変動に継続的に備える姿勢が欠かせない。米中関係の文脈では、トランプ政権が中国による合意違反を理由に、関税引き上げなどの措置を打つリスクは常に存在する。米国の首都ワシントンの有識者や産業界の間でも、米中関係が容易に不安定化し得るとの見方は強い。

232条を巡っては、医療機器やロボット・産業機械などの分野で商務省の調査が終わり次第、新たな関税措置が発表される可能性がある(表2参照)。また、鉄鋼・アルミ関税と自動車部品関税は、対象品目の拡大が見込まれる。商務省が米国内の事業者から対象品目の拡大要請を定期的に受け付けているからだ(2026年1月7日付ビジネス短信参照)。ドナルド・トランプ大統領は、銅派生品や木材製品、中・大型トラック部品についても同様の仕組みを作るよう指示しており、これらの産業に関わる企業は今後も関税対象品目の見直しが必要になる公算が大きい。

表2:232条に基づく2026年末までの主なスケジュール

調査中または追加報告の対象品目注:大統領は、232条調査の報告書を受領後90日以内に、対象品目の輸入が国家安全保障上の脅威を及ぼすか否かを判断し、必要であれば輸入制限措置を発表する。輸入制限措置は、発表から15日以内に実施しなければならない。
日付 予定
1月26日 民間航空機・ジェットエンジンに関する調査報告書の大統領への提出期限
3月28日 ポリシリコン・同派生品、無人航空機システム(UAS)・同部品に関する調査報告書の大統領への提出期限
4月14日 半導体製品に関する外国との交渉状況の報告期限(大統領は報告を受領後、半導体製品に対する広範な関税賦課や米国内での製造を促進するための関税相殺プログラムを検討) 
5月10日 風力タービンに関する調査報告書の大統領への提出期限
5月30日 個人用防護具(PPE)・医療用消耗品・医療機器、ロボット・産業機械に関する調査報告書の大統領への提出期限
6月30日 米国内の銅市場(精錬能力を含む)および米国における精錬銅の市場状況に関する報告期限(大統領は報告を受領後、精錬銅に対し、2027年1月1日から15%、2028年1月1日から30%の関税を課すか否かを決定) 
7月13日 重要鉱物に関する外国との交渉状況の報告期限(大統領は報告を受領後、重要鉱物に対し関税など輸入調整措置を検討) 
10月1日 広葉樹材および製材品の輸入や市場に関する報告期限(大統領は報告を受領後、それら品目に対し追加関税を課すか否かを決定)
関税対象品目の追加プロセス
日付 予定
4月1日 自動車部品関税の対象品目の追加申請を受け付け開始 
5月1日 鉄鋼・アルミ関税の対象品目の追加申請を受け付け開始
7月1日 自動車部品関税の対象品目の追加申請を受け付け開始
9月1日 鉄鋼・アルミ関税の対象品目の追加申請を受け付け開始
10月1日 自動車部品関税の対象品目の追加申請を受け付け開始

注:大統領は、232条調査の報告書を受領後90日以内に、対象品目の輸入が国家安全保障上の脅威を及ぼすか否かを判断し、必要であれば輸入制限措置を発表する。輸入制限措置は、発表から15日以内に実施しなければならない。
出所:米国ホワイトハウスおよび商務省の発表資料を基にジェトロ作成

相互関税などIEEPA関税は、その合法性が裁判で争われており、2026年夏頃までに連邦最高裁判所が判決を下す見通しだ。違法と判断された場合、これまで支払われた関税還付の有無や他の法律に基づく代替関税の導入が焦点となる。一方、IEEPA関税が全面的または部分的に認められた場合でも、トランプ政権が関税の国内経済への影響を考慮して、適用除外品目を増やしたり、税率を調整したりするシナリオには留意すべきだ。米国では2026年11月に中間選挙を控え、民主党は関税によって国民の生活コストが上昇しているとして政権批判を強めている。これまで関税のインフレへの影響は、企業が在庫を積み増して価格転嫁を先送りしたり、関税コストを吸収したりしたことで、事前の想定よりも緩やかだ。しかし、2026年には価格転嫁が本格的に進むとみられており、政権が何らかの影響緩和策をとることもあり得る。直近でも、232条に基づく木材関税の税率引き上げが延期されたほか、半導体関税が外国に輸出される製品の輸入に限定されるなど、関税の運用が細かく調整される場面が増えている。

地政学的なイベントに伴って突発的に発表される関税措置に対しては、冷静な受け止めが必要だろう。トランプ大統領は、経済制裁における2次制裁を模した「2次関税」のように、外交問題の解決に関税を積極的に援用する傾向を強めているが、実際に発動に至らないケースも多い。また、最高裁判決によりIEEPA関税を封じられた場合、こうした急な関税導入は困難になる可能性が高い。ただ、第2次トランプ政権で、関税が米国の地政学的な目標を達成するための正当な手段になったことは明らかだ。国務省やUSTRなどで要職を務めた、米国ブルッキングス研究所のカリ・ヒールマン上級研究員は、トランプ政権の通商政策は「法的制約や国際的約束ではなく、行政府による判断が裁量的な通商措置を主導している」と指摘する(2026年1月21日付論考参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。トランプ大統領が関税によって行政権限の限界を試し続ける限り、米国の通商政策を巡る不確実性は続く見通しだ。


注1:
対中関税を含むトランプ政権の関税措置に関する最新情報は、ジェトロウェブサイト「特集:米国関税措置への対応」を参照。 本文に戻る
注2:
2025年1~10月の無税(HS1~97類)の輸入額の4分の3以上は、相互関税発動前の1~3月の輸入分となっている。 本文に戻る
注3:
ジェトロが2025年9月に米国・カナダ進出日系企業を対象に実施した「海外進出日系企業実態調査(北米編)」では、USMCAの見直しによって新たな関税が賦課されることを懸念する声などが聞かれた。USMCAを巡る最新動向については、ジェトロ特集ページ「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を取り巻く環境」を参照。 本文に戻る

執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課 リサーチ・マネージャー
甲斐野 裕之(かいの ひろゆき)
2017年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課、海外調査部米州課、ニューヨーク事務所〔戦略国際問題研究所(CSIS)日本部客員研究員〕を経て、2024年2月から現職。