「黄金の3年」どころではなかった岸田文雄政権 「裏金」「旧統一教会」…安倍政権の負の遺産にまみれ幕引き

 
 
 岸田内閣は1日に総辞職し、約3年の政権運営に幕が下りる。岸田文雄首相を退陣に追い込んだ自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と議員の接点を巡る問題など、安倍晋三元首相と関わりがある事柄の影響を色濃く受けた。説明を求める国民の声に「聞く力」は発揮されず、政策面を含めて政治不信を解消できなかった。(坂田奈央)
 
◆「聞く力」を看板に掲げたが
 「今、国の内外で難しい大きな課題が山積している。石破(茂)総裁には強い政権をつくってもらいたい」。岸田首相は27日の党総裁選後、記者団の取材に答え、政権を引き継ぐ石破氏にこのように要望した。
 
 首相は2021年10月の就任時、「聞く力」や「丁寧で寛容な政治」を約束。直後の衆院選で自民は絶対安定多数を確保した。22年7月の参院選も勝利すれば25年まで国政選挙がなく、政権が政策遂行に集中できる「黄金の3年間」が待っていると当時は評された。
 
◆「国葬」を独断で決定、暗転
 だが、参院選期間中に起きた安倍氏の銃撃事件が潮目を大きく変えた。首相が安倍氏の国葬開催を国会に諮らずに閣議決定し、国論を二分する問題となった。
 
 事件を受けて教団と安倍氏の深い関係が指摘されたが、首相は調査しない方針を貫いた。教団と党との「関係断絶」を宣言したものの、党内調査は自己申告制にするなど実態解明には後ろ向きな姿勢を印象づけ、支持率も急落した。
 
 
 政権の運命を決定づけたのは裏金事件だ。一部議員や会計責任者らが立件され、党として議員ら計39人を処分すると、首相の退陣論が公然と出始めた。
 
◆防衛費大幅増へ「歴史的転換」
 政策では、戦後の安全保障政策の大転換を図る「安倍路線」を継承、防衛力強化に取り組んだ。22年12月に安保関連3文書を改定。防衛費を27年度に国内総生産(GDP)比2%とすることや、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を決めた。
 
 一方で、国民への丁寧な説明が足りないとの批判が付きまとった。防衛増税の開始時期ははっきりせず、「異次元の少子化対策」でも、安定財源として創設を決めた子育て支援金に関し「実質的な負担は生じさせない」との説明に終始。分かりづらさが国民を困惑させた。
 
日本共産党 を除く政党に毎年配られる政党助成金 。
血税を原資にしたこの「公助」、余った分は国庫返納が原則なのにそれぞれ億を超える金額を「基金」だと言ってため込んでいます。
 
 
 
主張
政党助成金報告書
裏金つくって税金依存の異常

 
 違法な裏金づくりに手を染めながら、国民の税金を山分けして湯水のように使う。それでも余れば返さずため込む―。政党のあり方が根本から問われる深刻な事態です。

■ため込み額301億円
 総務省が、2023年の政党助成金の使途報告書を公表しました(27日)。9党が約315億3700万円を山分けし、自民党はその半分の159億1000万円を受け取りました。

 23年といえば裏金事件の捜査が本格化した時期です。自民党は実態解明にまったく乗り出すことなく、国から受け取った政党助成金を裏金議員が代表を務める政党支部などにばらまいていたことになります。議員1人当たり1200万円というから驚きです。

 9党の政党助成金の支出総額は268億5900万円でした。自民党はその4割の116億8900万円を支出。人件費や事務所家賃、物品購入、記念品、選挙の公認・推薦料、大会会場費、宣伝物などあらゆるものに使っていました。

 政党助成金の原資は、国民1人当たり250円の税金です。最低限、余ったら国庫に返納するのが世の常識ですが、政党助成法では政党が「基金残高」の名でため込む返還逃れの道が設けられています。

 23年末時点のため込み総額は22年に比べ約46億5000万円増の301億9500万円にまで膨れ上がりました。その9割近くが自民党(258億3300万円)です。4000万円、7000万円を超すため込みをした裏金議員もいれば、裏金事件で捜査当局に関係書類を押収され、支出額や内訳をすべて「不明」と報告書に記載して平然としている議員もいます。

■支持で活動資金を
 政党は、共通の理念・政策を実現するために自主的に集まる組織です。それを税金で支えるのはそもそも筋違いです。政党助成金は「思想・信条の自由」「政党支持の自由」を侵す憲法違反だとして日本共産党は1995年の制度発足以来一貫して受け取らず、国会に廃止法案を提出し続けている唯一の政党です。

 先の通常国会で与党が強行成立させた改定政治資金規正法には、所属議員に規正法違反があった場合、政党助成金の一部を交付停止することが盛り込まれました。自民党総裁選では裏金額相当分を国庫に返納する主張までありました。これらは政党助成金を罰則措置として持ち出すことで裏金事件の真相究明をそらすだけでなく、政党助成金制度そのものを固定化させるものです。

 政党は、国民の中で活動し支持を得て、国民から浄財を集め、活動資金をつくることこそ本来の姿です。政党助成金もパーティー券購入を含む企業・団体献金も一切受け取らない日本共産党は、党費と「しんぶん赤旗」の購読料、国民の寄付で党を運営しています。苦労して資金を集めず、政党の運営資金の大半を政党助成金に依拠する「官営政党」になることは、金への感覚をまひさせ、腐敗政治をつくり出す根源の一つとなっています。裏金事件に無反省、政治をゆがめ政党を堕落させる企業・団体献金と政党助成金を受け取り続ける政党に総選挙で厳しい審判を下しましょう。