山添拓さん

石破茂氏が自民党新総裁に選出された。緊急事態条項の創設や9条への自衛隊明記など在任中の改憲実現を強調し、「アジア版NATO」創設を唱え、非核三原則の見直しに言及するなど軍事一辺倒を強めようという。裏金、統一協会、腐敗の真相解明にも消極的。
自民党政治の中身を変える、総選挙での審判を!

 

石破茂氏が自民党新総裁に選出された。緊急事態条項の創設や9条への自衛隊明記など在任中の改憲実現を強調し、「アジア版NATO」創設を唱え、非核三原則の見直しに言及するなど軍事一辺倒を強めようという。裏金、統一協会、腐敗の真相解明にも消極的。
自民党政治の中身を変える、総選挙での審判を!

 

4年前に石破は、講演で〈「7条解散」について「憲法論から『すべきではない』との立場だ」と強調。内閣不信任決議案可決か信任決議案否決に伴う憲法69条による解散などに限定すべきだと主張〉
憲法7条で早期解散するなら、過去の自らの憲法論との整合性問われる

 

まずは、石破新総裁が、岸田首相が退陣の理由とした、裏金問題、統一協会問題について、国民の信頼を勝ちうる対応が取れるのか、臨時国会ではたださねばなりません。そして、賃上げ、社会保障拡充、教育無償化、国民が安心して暮らせる日本へ、取り組むのか、否か、対案を示し問うていかねば。

 

 

 自民党は何を狙っているのか

五十嵐仁

 岸田政権の行き詰まりによって自民党は窮地に追い込まれました。裏金事件や統一協会との癒着は岸田政権になってからのものではなく、長年にわたる自民党政治によってもたらされたからです。端的に言えば、金権化という宿痾を治癒できず、憲法の国民主権や平和主義原則を軽んじ、基本的人権を踏みにじってきた歴代自民党政権による反憲法政治の行き着いた先にほかなりません。
 

 私は27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社、1997年)という本を出しました。その帯には、「『政治改革』やり直しの提言」と書かれています。この「提言」は実行されませんでした。今回の裏金事件は、そのツケが回って来たということです。
 

 その結果、政治的危機に直面した自民党は岸田首相を切り捨て、危機を乗り切ってきた「成功体験」に学ぼうとしました。たとえばロッキード事件での「ダーティー田中」から「クリーン三木」への転換、森喜朗首相から小泉純一郎首相への交代という「小泉劇場」による幻惑、そして、直近ではコロナ対策の失敗から政権を投げ出した菅義偉首相から岸田首相への交代による総選挙での勝利です。
 

 いずれも「振り子の論理」による「疑似政権交代」を演出することで支持を回復しましたが、実際には自民党政治の枠内での政権たらいまわしにすぎません。今回も同様の狙いの下に、総裁選挙に国民の目を引き付け、報道機関を利用したメディアジャックによって支持率の回復を図ろうとしました。
 

 総裁選の期間は過去最長となり、石破茂元幹事長など過去最多の10人以上もの議員が立候補の意思を表明しました。いずれも総裁選への注目を高めるための策謀です。多数の出馬表明は派閥の縛りがなくなったからではなく、派閥の縛りがなくなったかのように装うためでした。旧派閥の領袖の支持を取り付けるために躍起となり、水面下での合従連衡によって多数派工作がなされたのはこれまでと変わりません。
 

 候補者が多くなれば、それだけメディアの注目を浴び、露出度も高まります。こうして国民の関心や興味を引き付けようというのが、自民党の狙いでした。それを知ってか知らずか、テレビなどは完全にハイ・ジャックされ広告塔状態に陥ってしまいました。NHKが高校野球を中断して小林鷹之議員の出馬表明を生中継したのは象徴的な事例です。

 解散・総選挙のプロセスはすでに始まっている

 岸田退陣は総選挙での敗北を避けるためのものでした。自民党の狙いは、総裁選への注目度を高めて危機を乗り切ろうというものです。いずれも、焦点は総選挙に向けて結ばれています。岸田退陣表明以降、すでに総選挙への取り組みは始まっており、総裁選はそのプロセスの一環にすぎません。
 

 立候補の意思を表明した12人は、いずれも世論の反応を見るための「観測気球」でした。「選挙の顔」選びですから、政治家としての力量などの中身ではなく、選挙で票を集められる人気のある人が選ばれるでしょう。拙著で指摘したように、小泉進次郎元環境相による「『小泉劇場』の再現を狙っている」(『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治』学習の友社、115頁)ように見えます。
 

 10人以上も声を上げたのに、誰1人として憲法を守るという人はいませんでした。改憲論の大合唱です。憲法尊重養護義務を定めた99条に違反する人ばかりです。続投を断念した岸田首相が改憲の論点整 理を指示し、早期の発議に向けて縛りをかけたのも異常です。
 

 岸田首相退陣の理由が裏金事件や統一協会の問題であったにもかかわらず、その再調査や統一協会との絶縁を表明する人も、これらの問題に厳しい対応を打ち出す人もいません。みな「臭いものにふた」をする「同じ穴のムジナ」にすぎないのです。
 

 新総裁の選出と新内閣の成立によって「刷新感」を演出し、「ご祝儀相場」で支持率を引き上げ、ボロが出ないうちに解散を打って総選挙になだれ込む作戦だと思われます。それがどのような経過をたどるかは不明ですが、2021年の菅首相から岸田首相への交代が参考になります。
 

 菅首相は9月3日に退陣を表明し、総裁選は今回より2日遅い9月29日に実施されました。その後、10月4日の臨時国会召集、岸田内閣発足、所信表明演説と続き、解散は10月14日、総選挙の投票日は31日でした。「2匹目のドジョウ」を狙って似た経過をたどるとすれば、総選挙の投票日は早ければ10月27日、遅くても11月10日になる可能性が高いと思われます。

 追撃戦の課題と展望

 岸田首相の退陣によって、政権交代に向けての歴史的なチャンスが生まれました。解散・総選挙に向けての追撃戦を展開することで、このチャンスを活かさなければなりません。大軍拡・腐敗政治によってやりたい放題の悪政を押し付けてきた自民党に、その罪を自覚できるだけの強烈な罰を与えるには政権から追い出すのが最善です。
 

 とはいえ、それは簡単なことではありません。1割台にまで支持率を低下させた森元首相から政権を引き継いだ小泉首相が「自民党をぶっ壊す」と言って自民党を救った前例があります。3割台にまで支持率を減らして退陣せざるを得なくなった菅元首相から政権を引き継いだ岸田首相も、劇的に支持率を回復させて総選挙で勝利しました。この「成功体験」を繰り返そうとしているのが今の自民党です。
 

 この自民党の狙いを見破り、国民に幅広く知らせることが何よりも重要でしょう。情報戦で勝利しなければなりません、メディアに対する監視と批判を強め、私たち自身の情報リテラシーを高めてだまされないようにすることも大切です。SNSなどを通じた情報発信力や都知事選で注目を集めた「1人街宣」、集団でのスタンディングなども有効でしょう。
 

 また、野党には政権交代を視野に入れた幅広い連携を求めたいと思います。通常国会で実現した裏金事件での真相究明のための連携を総選挙でも継続してもらいたいものです。裏金事件や統一協会との腐れ縁に怒りを強めている保守層にも、今度だけは自民党にきついお灸をすえなければならないと訴えるべきでしょう。イギリスでの政権交代は、労働党への支持の高まりというより、保守党に対する失望によるものだったのですから。
 

 市民と共産党を含む野党の共闘を再建するための働きかけを強めることも必要です、立憲民主党には改憲と戦争法に反対した立党の原点を忘れず共闘の立場に立つ代表の選出を求め、各選挙区だけでなく可能な限り全国的な「連携と力合わせ」によって有権者の期待を高める必要があります。支持団体の連合には共闘を妨害したり足を引っ張ったりしないように働きかけ、選挙は政党に任せて余計な口出しはするなと言うべきです。
 

 たとえ自民党が議席を減らしても、維新の会のような「第2自民党」がすり寄るのでは政権交代を実現できません。議席の減らし方によっては国民民主党や前原グループ(教育無償化を実現する会)が加わる可能性もあります。このような形で自民・公明の連立政権を助けないようにけん制する必要もあります。
 

 絶好のチャンスをどう生かすかが問われています。腐れ切った自民党大軍拡・腐敗政治に対する追撃戦で勝利し、政権交代に向けて希望の扉を開かなければなりません。そのための決戦が間もなくやってくるにちがいないのですから。

 

 

自民新総裁に石破茂氏 高市氏を抑え選出

 
早い話が、自民党って税金を使って不正蓄財をするために、政治を利用しているだけなんだが。
 
自民党総裁選挙は、1回目の投票でいずれの候補者も過半数に届かず、決選投票の結果、石破元幹事長が215票、高市経済安全保障担当大臣が194票で、石破氏が1回目で1位になった高市氏を逆転し、新しい総裁に選出されました。

 
決選投票は、国会議員1人1票と各都道府県連に1票ずつ割り振られた47票の、あわせて415票で争われました。

その結果、有効票は409票で石破氏が国会議員票189票、都道府県票26票のあわせて215票、高市氏が国会議員票173票、都道府県票21票のあわせて194票で、石破氏が高市氏を逆転し、新しい総裁に選出されました。
 
石破氏「笑顔で暮らせる安全・安心な国に」
自民党の新しい総裁に選出された石破茂氏は、両院議員総会であいさつし「日本国をもう一度、皆が笑顔で暮らせる安全で安心な国にするために全身全霊を尽くす」と決意を述べました。
 
この中で、石破氏は「岸田総裁が大変な決意をもって、自民党が生まれ変われるように、もう一度国民の信頼を取り戻せるように、職を辞す決断をされた。私たちは一丸となってそれに応えていかなければならない」と述べました。

その上で「私たちは3年あまり野にあった。安倍総裁のもとで私は幹事長を拝命し、自由かったつな議論ができる自民党、公平公正な自民党、謙虚な自民党を目指し、皆が心をいつにして政権を奪還した。もう一度そのときに戻りたい」と強調しました。

そして「国民を信じ、勇気と真心を持って真実を語り、この日本国をもう一度、皆が笑顔で暮らせる安全で安心な国にするために全身全霊を尽くしていく」と決意を述べました。

自民党は両院議員総会のあと臨時の役員会や総務会を開き、石破新総裁に党の役員人事を一任することを確認しました。

森山総務会長は記者会見で「石破新総裁は数々の要職を務めてこられ、極めて豊かな政治経験をお持ちだ。今後、石破新総裁のもと一致団結して国民の期待に応えていかなければならない」と述べました。

鳥取出身の首相は初
石破氏は午後6時をメドに党本部で記者会見し、今後の政権運営などについて自らの考えを明らかにすることにしています。

その後、直ちに幹事長や総務会長など党役員人事の検討に入るものとみられます。

そして、来月1日に召集される臨時国会の冒頭で行われる総理大臣指名選挙を経て、第102代の総理大臣に就任する見通しです。

鳥取県出身の総理大臣が誕生するのは初めてとなります。
 
妻 佳子さん 笑顔であいさつ
 
 
鳥取市内で開票の様子を見守っていた、石破元幹事長の妻 佳子さんは集まった支援者を前に「今、国内でも諸外国でも大変な状況の中で、石破茂は国の舵取りをすることになりました。多くの方に石破を支えてもらい、いい日本を作っていってもらいたいです」と笑顔であいさつしました。

海外メディアも速報
中国国営の中国中央テレビは、結果が発表された15分後にニュース番組で「石破氏にとっては自民党の総裁選挙への5回目の立候補だった。農業や安全保障、地方創生などさまざまな分野に携わり、自民党の幹事長や政務調査会長などを歴任してきた」などと伝えました。

また、中国共産党系のメディア「環球時報」は日本のメディアの記事を引用しながら「石破氏は自民党内でタカ派とみられ、アメリカと日本やアメリカと韓国の同盟などを統合した『アジア版NATO』の創設を主張している」などと伝えています。

イギリスのロイター通信は「元防衛大臣の石破氏が接戦を制した。過去数十年で最も予測不可能な総裁選のひとつだった」とか「一匹狼を自称する石破氏が、4度の落選を経て自民党のかじ取りを担う」などと報じました。

また、アメリカのAP通信は、石破氏を防衛政策のエキスパートと伝え「石破氏が日本初の女性首相をめざしていた保守派の高市氏を破った。汚職スキャンダルに悩まされていた岸田政権にかわって、自民党は総選挙を前に国民の信頼を取り戻すため、新たな総裁を望んでいた」と報じています。
 
決選投票で敗れた高市氏「敗北は私自身の力不足」
 
 
決選投票で敗れた高市氏は、党本部で記者団に対し「まずは当選された石破新総裁に心よりお祝いを申し上げる。敗北は私自身の力不足で、多くの方に助けていただきながら申し訳ない」と述べました。

その上で、石破新総裁から人事の打診があった場合の対応を問われたのに対し「仮定の話には答えられないし、いまからは一国会議員として、しっかりと自民党を立て直していく一助になればと思っている。みんなで知恵を結集して、国家や国民の利益を最大化していくべく、支えさせていただきたい」と述べました。
 
 

河野太郎氏「ありません」とあらためて断言 保険証廃止の記録 質問にはテンプレ回答…説明の本気度は?

 
 
健康保険証の廃止が、どのような議論を経て決まったのか。国民に大きな影響を与える政策決定の経緯を政府は記録に残していない。
 
マイナ保険証への一本化を押し進めてきた河野太郎デジタル相は27日の閣議後会見で、記者から国民への説明責任を問われると、「これからも丁寧で分かりやすい説明に努める」と従来の説明を繰り返し、正面から答えることはなかった。
 
現行保険証の廃止を巡っては、河野氏が2022年10月、2024年度秋の廃止する方針を表明。現行保険証の選択の余地も残すとしていた「原則廃止」からの大転換だった。
廃止決定の経緯が分かる記録を政府が残していなかったことは、東京新聞の情報公開請求や関係者への取材で判明した。
 

 
◆河野氏も「大臣間で協議」でも記録なし
この日の会見で、河野氏は、保険証廃止の決定について「関係閣僚間の協議は、大臣間で直接、適宜行っている」と説明した。しかし、大臣間の協議の事実を裏付ける記録は「ありません」と断言した。
 
東京新聞の開示請求に対し、デジタル庁は決定経緯が分かる文書として、表明前に開かれた関係省庁の会議の議事概要を開示した。この議事概要には、河野氏の発言しか記されておらず、他の関係省庁からの意見は「なし」だった。
 
開示文書からは、いつ、どのような議論を経て、誰が決めたのかが分からない。
 
会見で、河野氏に改めて、決定経緯について記者が尋ねたが、「大臣間で意見交換はしている」「関係省庁の意見については、議事概要の通り」と答えるにとどまった。
 
◆もはやお決まりの「丁寧で分かりやすい説明に努める」
保険証廃止は、国民全体に大きな影響を与える重大な政策決定ですが、国民への説明責任を果たしていると考えていますか―。
記者から、こう問われた河野氏は、説明責任の有無については言及することはなかった。
 
代わりに返ってきた答えは、これまでも会見で幾度となく語ってきた次のような決まり文句だった。
「これからもさまざまな広報手段を用いて国民に対して丁寧で分かりやすい説明に努めていきたい」(マイナ保険証取材班)

 

河野太郎氏 前回“次点”から惨敗8位 マイナ保険証推進に批判「覚悟の上で改革」も…逆風は想像以上

 
 
 第28代自民党総裁を決める総裁選が27日、都内の自民党本部で投開票され、河野太郎デジタル相(61)は1回目の投票で9候補中8位に終わり、落選した。

 投票では、小泉進次郎元環境相に続き、壇上へ上がった。口を真一文字に結んで、緊張の面持ちを崩さずに投票を終えた。紺のスーツと青ネクタイは、小泉氏とまさかの丸かぶりだった。

 初出馬した09年は、谷垣禎一氏に敗北した。21年、2度目の出馬では、小泉進次郎氏、石破茂氏と“小石河連合”を組んで躍進。上位2人が進む決選投票に臨んだが、岸田文雄首相に敗れた。そんな中で迎えた三度目の正直だったが、決選投票にも進めない惨敗だった。党員・党友による算定票は8票、国会議員票は22票。合計30票で、決選投票には大きく届かなかった。1位は高市早苗経済安保担当相で181票、2位は石破氏で154票。ともに過半数を獲得できず、決選投票に進んだ。

 改革を旗印に臨んだ選挙戦だった。外務相、防衛相、行革担当相などを歴任。新型コロナワクチン担当相としては、世界中からワクチンをかき集め、“令和の運び屋”を自負した。「安全保障や財政、改革を実現してきたことには賛同をいただいてきたのではないか」。自信を胸に臨んだ総裁選だった。今回の総裁選では、裏金議員に収支報告書への不記載分を国庫に返納させることを明言するなど、他の候補より一歩踏み込んだ対策を掲げた。

 しかし、デジタル相としては、マイナ保険証の移行をめぐり強引な部分が指摘され、国民の理解を得られなかった。「改革を進めていくと、例えば今、保険証で困ってないのになんでマイナンバーカード保険証に変えないといけないのという批判はありますから、やっぱりどうしても数字は下がる。それは覚悟の上で改革は進めないといけないということでやってきました」。逆風は覚悟の上だったが、その“風速”は予想以上だったようだ。また所属する麻生派が高市早苗経済安保担当相(63)支持に回るなど、まさかの事態が“河野太郎首相”誕生を阻んだ。