「政治とカネ」を巡り、自民党国会議員ら与党関係者が、近年、相次いで東京地検特捜部に摘発されています。21世紀に入ってからで見ると、第2次安倍晋三政権下で、摘発数が増加。自公政権の12年間で与党議員の起訴が通年行事のようになった異常な事態です。(三浦誠)

 検察を長年取材してきたジャーナリストは、ここ数年に特捜部が相次いで国会議員らを摘発していることについて、「かつてないことだ」と指摘します。

 2012年12月26日に第2次安倍政権が発足して以降、特捜部が摘発した与党国会議員、秘書らの事件は20件(表参照)。うち起訴された議員は自民党が14人、公明党が1人です。他方、01~12年の間に起訴された国会議員らの事件は11件でした。

 とくに安倍政権末期の20年からは毎年、議員が起訴されています。

 20年には安倍政権が進めてきたカジノを中核とする統合型リゾート(IR)を巡り特捜部が、秋元司元内閣府副大臣=一審、二審実刑判決=を収賄罪で起訴。同年には、河井克行元法相、妻の河井案里元参院議員=ともに有罪判決が確定=が、19年の参院選を巡る大規模買収事件で起訴されています。

 菅義偉政権発足後の20年12月には、安倍元首相の政治団体が主催した「桜を見る会」前夜祭の開催費用を政治資金収支報告書に記載していなかったとして、公設第1秘書が政治資金規正法違反罪で略式起訴に。この事件の発端は「しんぶん赤旗」日曜版のスクープでした。

 日曜版スクープを巡っては、今年に入ってから、自民党派閥の裏金事件がらみで議員4人、安倍派、岸田派、二階俊博元幹事長の事務方など8人が起訴されています。しかも裏金事件はいまだ真相解明されていません。

 安倍元首相ら自民主要派閥というトップの金権腐敗体質が、政権復帰後の12年間で党全体にまん延した―そんな形です。

 「政治とカネ」の事件が増えたことについて上脇博之神戸学院大学教授は、「自民党はカネを使わないと当選できなくなってきている」として、こう指摘します。「格差社会が広がるなかで自民党についていっても“得”がなくなってきた。自民党員も減っている。自民党が退潮するなかでも選挙で勝ってきたのは、買収で逮捕された河井元法相夫妻のようにカネの力が大きい」

第2次安倍政権発足後に東京地検特捜部が摘発した与党関係者の事件
 2013年

 12月 徳田毅(衆)親族 公選法違反

 2015年

 4月 小渕優子(衆)元秘書 政治資金規正法違反

 2020年

 1月 秋元司(衆) 収賄

 7月 河井克行(衆)、河井案里(参) 公選法違反

 12月 安倍晋三(衆)秘書 政治資金規正法違反

 2021年

 1月 吉川貴盛(衆) 収賄

 6月 菅原一秀(衆) 公選法違反

 12月 遠山清彦(衆、公明) 貸金業法違反

 2022年

 12月 薗浦健太郎(衆) 政治資金規正法違反

 2023年

 9月 秋本真利(衆) 受託収賄

 2024年

 1月 柿沢未途(衆) 公選法違反

 1月 池田佳隆(衆) 政治資金規正法違反

 1月 谷川弥一(衆) 政治資金規正法違反

 1月 大野泰正(参) 政治資金規正法違反

 1月 二階俊博(衆)秘書 政治資金規正法違反

 1月 安倍派会計責任者 政治資金規正法違反

 1月 二階派会計責任者 政治資金規正法違反

 1月 岸田派元会計責任者 政治資金規正法違反

 8月 堀井学(衆) 公選法違反、政治資金規正法違反

 8月 広瀬めぐみ(参) 詐欺

  *遠山氏以外は自民所属だった議員(年月は起訴時)

 

紀藤正樹弁護士「裏金推薦人がいる候補者は当然裏金問題を先送りする…首相になるべきではないと思う」

 
 
 弁護士・紀藤正樹氏(63)が16日までに自身のX(旧ツイッター)を更新。自民党総裁選(27日投開票)について言及した。

 総裁選には、高市早苗経済安全保障担当相、小林鷹之前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長と過去最多の9氏が立候補。

 国会議員票367票と党員票367票の計734票で過半数を獲得すれば当選となるが、過半数の候補者がいなかった場合は上位2人による決選投票に。ここでは国会議員票367票に加え、各都道府県連の47票の計414票で争われる。

 紀藤氏は、9氏それぞれの推薦人のうち、裏金議員が何人いるかを報じた「【推薦人一覧】「裏金議員」は誰に何人?自民党総裁選 5候補で計21人 政治改革への影響は」と題された記事を引用し、「裏金推薦人がいる候補者は当然裏金問題を先送りする、あるいは手心を加える可能性があり自民党の総裁、すなわち首相になるべきではないと思います」と自身の考えをつづった。

【9氏の推薦人のうち、裏金を受け取っていたと党本部が公表した議員と不記載額】(届け出順、敬称略)

◇高市早苗氏 裏金推薦人13人=杉田水脈(不記載額1564万円、衆院比例中国ブロック)、鈴木淳司(同60万円、衆院愛知7区)、関芳弘(同836万円、衆院兵庫3区)、高鳥修一(同544万円、衆院比例北陸信越ブロック)、谷川とむ(同188万円、衆院比例近畿ブロック)、三ツ林裕巳(同2954万円、衆院埼玉14区)、若林健太(368万円、衆院長野1区)、赤池誠章(268万円、参院比例)、衛藤晟一(同80万円、参院比例)、佐藤啓(同306万円、参院奈良選挙区)、西田昌司(同411万円、参院京都選挙区)、堀井巌(同876万円、参院奈良選挙区)、山田宏(560万円、参院比例)の各参院議員

◇小林鷹之氏 ゼロ ※出馬表明の記者会見には複数の裏金議員が同席

◇林芳正氏 ゼロ

◇小泉進次郎氏 1人=山田美樹(不記載額76万円、衆院東京1区)

◇上川陽子氏 1人=森雅子(不記載額282万円、参院福島選挙区)

◇加藤勝信氏 4人=亀岡偉民(不記載額348万円、衆院比例東北ブロック)、石井正弘(同378万円、参院岡山選挙区)、石田昌宏(同26万円、参院比例)、羽生田俊(同818万円、参院比例)の各参院議員

◇河野太郎氏 ゼロ

◇石破茂氏 ゼロ

◇茂木敏充氏 2人=簗和生(不記載額1746万円、衆院栃木3区)、上野通子(同318万円、参院栃木選挙区)