きょうの潮流
 

 印象に残った二つの相好がありました。「このたび、私は、第100代内閣総理大臣を拝命いたしました」。初の所信表明演説でそう言い放った際、マスク越しに議場を見回したとき

 

▼もう一つは米国議会で「日本はアメリカとともにある」と強調し、喜色満面にあふれたときです。この人の本性にふれた気がして。結局は自らの権力欲と、アメリカにしがみつく首相だったのかと

 

▼当初売りだった「聞く力」は、すぐに国民の声ではなく、米国や財界の要望だったことが明らかに。原発推進、マイナンバーやインボイスの強行、国の主権さえさしだす米軍との一体化…。聞くだけでなく実行も伴って

 

▼物価の高騰のなかでふみだしたのは大軍拡。くらしの苦しさに目が向くことはなく、人権をめぐっても遅れた体質から抜け出そうともしませんでした。いくら「生まれ変わった自民党を示す」と口にしても、生まれ変われないのは自分自身でした

 

▼それは裏金問題でもあらわに。信頼回復のため火の玉になると大見えを切りながら、解明もせず、抜け穴だらけの改悪法を改革と称して。戦争へと突き進んだ破滅の道を省みるさなかの退陣表明は、平和な国づくりに無責任だったことを示しました

 

▼これで3代続けての政権投げ出し。この間の悪政上積みは、顔を入れ替えても国民との矛盾は深まるばかりだと証明しています。初組閣のとき岸田首相は「新時代共創内閣」と名づけていました。それを実現する道は、自民党政治を終わらせることです。

 

 

岸田首相、言及やめた「積極的平和主義」、加えた「人間の尊厳」 全国戦没者追悼式の式辞に見えた「矛盾」

 
 
 9月の自民党総裁選への不出馬を表明し退陣が決まった岸田文雄首相は15日、全国戦没者追悼式で最後の式辞を読んだ。昨年まで盛り込んでいた「積極的平和主義」の表現を外し、「人間の尊厳」を用いて独自色を演出した。一方、今年も「反省」に触れず、アジア諸国に対する責任にも言及しなかった。首相は「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」と述べたが、岸田政権の2年10カ月では敵基地攻撃能力(反撃能力)保有に踏み切るなど、「不戦の誓い」と矛盾しかねない安全保障政策が進められてきた。 (大野暢子)

◆安倍晋三元首相が掲げた「積極的平和主義」
 
 
 もっとも岸田政権は2022年、安保関連3文書を改定し、敵基地攻撃能力の保有や防衛費の大幅増を決定。殺傷武器の輸出解禁にも道を開いた。今年7月、「核の傘」を含む米国の戦力で日本の安全を確保する「拡大抑止」に関する日米閣僚会合を初開催し、核抑止への依存度も高まっている。

 京都精華大の白井聡准教授(政治学)は「安倍政権との違いをアピールしたつもりなのかもしれないが、対米従属の姿勢はむしろ強まった」と指摘。日本が他国との戦争に巻き込まれる危険が高まりつつあるとし「現政権が人間の尊厳を重視してきたとは言えない」と語った。
 
 
 

木原防衛相が靖国参拝

終戦記念日に初 首相は玉串料

 
 
 木原稔防衛相が終戦記念日の15日、東京・九段北の靖国神社を参拝しました。閣僚ではほかに、新藤義孝経済再生担当相と高市早苗経済安全保障担当相が参拝。岸田文雄首相は参拝を見送り、3年連続で自民党総裁として代理人を通じて私費で玉串料を納めました。

 現職の防衛相が終戦記念日に参拝するのは初めて。過去には、稲田朋美氏が2016年末に、岸信夫氏が21年8月に、防衛相として参拝したことが明らかになっています。木原氏は記者団に対し、私費で玉串料を納めたと発言。日韓関係に与える影響を問われ「韓国とは引き続き関係を強化していくつもりだ」などと語りました。

 超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」も同日に集団参拝を実施。会見で報告された取りまとめによると、衆参両院で議員120人(議員78人、代理人42人)が参加しました。自民党のほか、日本維新の会の議員11人(議員9人、代理人2人)、参政党の議員1人と諸派・無所属の議員3人も含まれています。
 
 
 同議連副会長の逢沢一郎衆院議員(自民)は「日本人の追悼、慰霊の拠点はここ靖国神社にある。そういう思いは、これからも変えようがない」と私見を述べました。

 靖国神社は、戦前・戦中には国民を戦争に動員する精神的支柱の役割を担い、戦後は過去の侵略戦争を正当化し、美化してきた施設です。韓国や中国をはじめ、日本の侵略を受けた国々が防衛相の参拝に強い警戒感を示すことは必至です。