〈兵庫県知事側近の“牛タン倶楽部”は3人離脱〉自死した告発職員を「保護対象として扱う必要なし」「居酒屋などで聞いた噂話を信じて文書を作成」県の担当弁護士を直撃すると…

 
 
兵庫県が今年5月、斎藤元彦知事らの疑惑を文書で告発した元西播磨県民局長、Aさん(60)。兵庫県がAさんに懲戒処分を出した際、調査に加わった弁護士がAさんの告発内容を「居酒屋の噂話を信じて作成した文書」と断定し、公益通報者として保護する必要はないと県に伝えていたことがわかった。一方、知事側近の3人が職場を離脱し、県議会調査委員会には疑惑に絡む“通報”が殺到している。斎藤知事の証人尋問も決まり、包囲網が狭まっている。
 
Aさんは公益通報者としての保護を求めたが…
県中枢は7月下旬から大混乱に陥っている。

「片山安孝副知事は7月末に辞職しました。さらに県ナンバー4の小橋浩一理事が体調不良だとして降格を願い出て認められました。

これに加え、片山氏退任後に最も力を持つとみられていた井ノ本知明総務部長も体調不良を理由に出勤しなくなりました。いずれも“4人組”、“牛タン倶楽部”と言われた知事側近グループです」(県関係者)

8月2日午前には、Aさんの告発文書に書かれた7つの疑惑を調べる県議会調査委員会(百条委)が開かれた。そこで県職員を対象に7月31日に情報提供を求めるアンケートを開始したところわずか2日間で3500件超の回答が寄せられたことが報告された。

「新たな疑惑の告発がある可能性もあり、調査範囲はさらに拡大するでしょう」と県議の一人は話す。百条委ではAさんへの県の懲戒が妥当だったのかも問われることが確実視されているが、そこで解明の足掛かりになる文書の存在が今回明らかになった。

その前に一連の騒動を振り返る。

3月12日にAさんが作成した告発文書では、斎藤知事や4人組によるパワハラやたかり疑惑のほかに、昨秋のプロ野球阪神・オリックスの優勝パレードの費用を捻出するため県が信用金庫に補助金を増額し、それをキックバックで寄付させたなどとする深刻な疑惑も書かれていた。

3月25日に片山副知事らがAさんからパソコンを取り上げ、中から告発文書のデータを発見。2日後の27日、斎藤知事が会見で文書は「嘘八百」だと言い放つ。

知事のパワハラや、“牛タン倶楽部”の一員である原田剛治・産業労働部長が企業から商品の供与を受けた不正が徐々に明るみに出て、Aさんの行動が内部告発であることが今でははっきりしている。

だが斎藤知事は3月27日の会見で「ありもしないことを縷々(るる)並べたような内容を作ったっていうことを(Aさん)本人も認めてますから」と発言。Aさんが嘘を書いたと認めたかのような印象操作を行なった上、Aさんは「不満」を抱えて文書を書いたのだと、動機をでっち上げてメディアに広報していた。(♯4)

これを聞いたAさんは公益通報者としての保護を求め、4月4日に県の通報窓口で手続きを取っている。

しかし、県人事課は、Aさんらから聴き取りを行なった上で、5月2日の綱紀委員会の議論を受け、停職3ヶ月にするとの「決裁書・報告書」を作成。斎藤知事が承認し、処分は5月7日に記者会見で発表された。そしてAさんは7月7日に自死した。
 
告発を「居酒屋で聞いた噂話」と断じた弁護士を直撃 
今回、兵庫県明石市の辻本達也市議が県に公文書公開請求を行い開示された「決裁書・報告書」を入手。その中に、県がAさんを公益通報者保護法上の保護対象として扱う必要がないと判断した根拠とみられる「弁護士意見」が書かれていた。

そこには「誹謗中傷文書を作成・配布する行為」との小見出しがあり、告発を「誹謗中傷」と規定。さらに以下のように書かれている。

「作成した文書を10人に配って、その中にマスコミ関係者がいたということは、報道してほしいという意図しか考えられない。マスコミは仕事柄知ってしまった以上書かざるを得ないから広がることを期待していたと評価されても仕方なく、流布したという認定は可能。

居酒屋などで聞いた単なる噂話を信じて作成した文書は、その内容が真実であると信じるにつき相当な理由にはならず、告発者の利益を守る対象ではない」

公益通報者保護法はメディアへの情報提供も公益通報とみなし、通報者の詮索や、通報者に不利益を与えることを禁じている。Aさんは文書を発送したときから保護対象になるとの見方が強いが、弁護士意見は真っ向からこれを否定している。

辻本市議もこの点に注目し、「法律の専門家が“居酒屋”という表現も使って告発内容を一刀両断しており、驚きました。県にもAさんを公益通報者とする観点が見当たらない」と話す。

県人事課は、この弁護士が5月7日の処分発表の記者会見に「兵庫県特別弁護士」の肩書で同席した藤原正広氏だと認めた。そこで藤原氏に2度にわたって電話で尋ねた。

――文書に書かれたことを話した記憶はありますか?

「何とも申し上げようがないですね」

―-決済文書に「弁護士意見」と書かれています。

「『真実であると信じる相当な理由があるか』というところは当然問題になっていたところではあるんだと思います」

――告発文書には真実であると信じる相当な理由はないという判断をしたのですか?

「多分そう…、正確にはどう言ったかというのは覚えていない。多分そういう方向での話にはなってたとは思いますが」

――「居酒屋で聞いた話」という言葉は、Aさんがそう言ったのですか?

「事情聴取の発言内容は今のところオープンにはできないということなんで、コメントはできないです」

――Aさんは公益通報者保護法の保護対象ではないかという検討は、調査でなされましたか?

「私としては見解は示している」

――その結果が記載内容ですか?

「いや、それがどういう受け止め方をされたかは存じ上げない」

――県に示した見解というのは、Aさんを保護の対象とすべきとの考えですか?

「内容についてはちょっと申し上げられない」

弁護士意見の核心は、告発文書には「真実であると信じるにつき相当な理由がない」と断定し「告発者の利益を守る対象ではない」と言い切っていることだ。この文言について、県人事課担当者は、公益通報者保護法を検討した末の藤原弁護士の判断だと説明した。

――弁護士の発言の主旨を県が変えたことはないですか?

「(「弁護士意見」の記載は)一言一句そのままではないですけど、こちらで先生(藤原弁護士)からうかがったお話をまとめて記載しているということです」

――「告発者の利益を守る対象ではない」という文言があります。これは公益通報者保護法を検討した結果、こういった意見が出たのですか?

「はい。そうですね」

――公益通報者保護法の対象に(Aさんが)なるかもしれないという検討はしましたか?

「そうですね」

――弁護士はこのような意見を出し、結果あのような処分になったと?

「そうですね」
 
弁護士意見の開示は知事と側近を追い込みたい勢力の仕業か
一方、弁護士意見にある「マスコミは仕事柄知ってしまった以上書かざるを得ない」との記述も荒唐無稽だとの指摘が出ている。雑誌記者は「メディアに情報を寄せても裏付けが取れなければ記事にはなりません。タレコミがすぐ記事になるというのは妄想ですね」とあきれる。

告発を「居酒屋の噂話」と一方的に断定した上、メディアへの情報提供についての理解も足りない弁護士意見は、開示された文書の中で処分が妥当だと主張している唯一の部分だ。

この記述によって処分に必要な客観的な意見を得たように装った県はAさんの処分を決行したが、公益通報者保護法が当時どう扱われていたのかが開示であらわになった。

Aさんをなぜ当初から公益通報者として扱わなかったのか、は重大な焦点に浮上している。

斎藤知事は7月24日の会見で、「(Aさんが4月4日に手続きを取った)公益通報の前に今回の文書が配布されました。内容が真実ではない。核心的なところに虚偽の内容が入っていた。人事課もそこは問題だということで、懲戒処分の対象になるということで調査を進めたということです」と主張し処分手続きを中断しなかったことを正当化。

その根拠に「当時の弁護士さんも、後から公益通報の手続きをとってもそれ以前に配布したことが保護される対象にはならないと発言をされています」と述べ、藤原弁護士がこの主張の根拠を与えたことも隠さなかった。

しかし、7月30日の記者会見では一転し、県の対応は「時系列を整理した上で説明したい」と説明を拒むようになった。

県関係者は「対応がまずかったため余計なことを言うなと誰かからアドバイスを受け、知事は態度を変えた印象を受けます」と話す。

口を閉ざしはじめた斎藤知事には、多くの問題をはらむとみられる弁護士意見の開示は痛手になると考えられる。

これが黒塗りにされず表に出たのは、当時の処分が不当であることを明らかにして、斎藤知事や4人組を窮地に追い込みたい県庁内勢力の思惑があるのではないか、との見方まで出ている。

8月2日の百条委は、8月30日に斎藤知事に対して証人尋問を行うことも決めた。調べの対象になった知事と一斉に姿を消した側近たち。兵庫県庁の混迷は深まっている。

 

【疑惑の斎藤知事】最側近“4人組” 2人が離反、3人目もサボタージュ…「辞任は否定」も「阿部一二三に祝福コメント」で批判殺到

 
 
 元県民局長からパワハラなどの問題を告発された兵庫県の斎藤元彦知事(46)は、8月1日で就任から丸3年を迎えた。本人は未だ意気軒昂のご様子だが、知事の側近たちには異変が起きている。
 
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 まず、県政でNo.2の立場の片山安孝副知事(64)は、斎藤知事に5度も辞職を迫った挙げ句、それが叶えられないと自ら辞職を表明。7月31日をもって退職した。もっとも「副知事の退職金が規程の満額支給されるのが、許せない」という職員の声が県庁内に広まっているとか。

 続いて、小橋浩一理事(60)が体調不良を理由に降格を申し入れ、8月1日付で総務部付の部長級とする人事が発表された。

 ある県職員は言う。

「小橋理事は3月末まで総務部長だったのですが、今の総務部長が職員の人事権を握りたいがために、知事に直訴して、小橋氏を誰もやりたがらない若者Z世代担当理事に追いやったと言われています。総務部長は斎藤知事の秘書広報室長を務めるなど知事の最側近と言われています」

 斎藤知事に対する元県民局長の告発について審議する百条委員会の2回目の会合が6月27日に開かれ、丸尾牧県議(59)は今年4月から5月にかけ独自に行った県職員へのアンケート調査を発表した。そこには、こんな回答がある。

《知事は人事に興味がなく、こいつは生意気だという程度の人事。人事の大半は、A副知事、C部長、D部長が行う。人事は能力主義ではなく、好き嫌いのみ。またE部長の妻は就任1年の副課長を横滑りで追い出す形で、この春に行われている》(公表された資料のママ)

「C部長というのが降格した小橋理事で、E部長というのが総務部長です。彼の妻も県の職員で、夫と共に管理職となっているというわけです」

 この回答によれば、斎藤知事は単純なパワハラ気質で、実質的な人事は知事側近の“4人組”によって行われているという。しかし、そのうちの2人が知事の下を去った。さらにもう1人……。
 
総務部長はサボタージュ
「先週あたりから総務部長が、県議会や政策会議、総合教育会議までドタキャンを繰り返しているそうです」(前出の県職員)

 デイリー新潮は7月27日配信の「【斎藤元彦知事】全国から兵庫県庁に1日200件を超える電話…思い詰めた最側近から辞任を迫られ、漏らした衝撃の一言」で、総務部長が知事に辞職を迫った様子を報じた。

「思い悩んで知事室に向かったものの、『メンタルケア窓口に行ってください』で済まされては、さすがにやっていられないと思ったんじゃないですか。小橋理事も総務部長も告発文書の中でも名前が挙げられていましたから、相当堪えていたんでしょう」

 元県民局長の告発文書の【知事選挙に際しての違法行為】では、3年前の知事選で選挙期間以前から斎藤候補への投票依頼などの事前活動が行われていたとあった。小橋理事と総務部長は、ここで名指しされていたのだ。

「筆頭の副知事が退職し、理事が降格、さらに総務部長まで重要な会議を欠席となれば、県政は滞ってばかりです」

 総務部長も知事の下を去るつもりだろうか。

「知事に従うつもりはなくなったのかもしれません。もっとも、自分が総務部長でなくなったら、知事選の事前活動や元県民局長からパソコンを押収した問題などを百条委員会で部下に証言されてしまう可能性があるので、そのまま居座るつもりのようです。人事という既得権で睨みを利かせようというわけです」

 奇妙な動きも見られるという。

「総務部長は部長室の電気を消して、部屋の入り口のガラスにポスターを貼り、目隠しした上で、新聞記者を順次招いていたのが目撃されています。そのすぐ後に、小橋理事の降格の速報が出ました」

 なぜ記者たちを呼んでいたのだろうか。

知事を百条委員会に
「記者に情報を与えることで恩を着せ、手なづけているつもりかもしれません。いずれにしても、知事だけが辞職しても側近たちを何とかしなければ、兵庫県政は良くなりません」

 一方、就任4年目に入った斎藤知事は目下、パリ五輪で兵庫県出身の選手が活躍していることに、連日、コメントを発表している。例えば、以下のようなコメントだ。

《パリ2024オリンピック競技大会で、神戸市出身の阿部一二三選手(柔道男子66kg級)が2大会連続の金メダルを獲得されました。/地元神戸の皆さんや、妹の詩選手など、多くの人たちの思いや声援を力に変え、力強い闘いぶりで、見事、五輪連覇を達成されました。本当におめでとうございます。/あとに続く選手の皆さんのご活躍も期待しています。また、兵庫県として、スポーツをはじめ様々な分野で世界に飛躍しようとする子どもや若者たちの夢を支援してまいります。》(兵庫県の公式ホームページ「ようこそ知事室へ」より)

 地元の神戸新聞が7月20、21日に行った世論調査で、斎藤知事の支持率が15・2%しかなかったことに対しては、こう答えた。

《15%の応援していただいている方にも感謝したい。一つ一つの仕事を前に進めることが大きな責任》(神戸新聞・7月31日)

 これまで同様、全くブレはない。だが、ある県議は言う。

「斎藤知事は百条委員会の証人尋問に11月頃には呼ばれる予定でしたが、8月下旬の出頭を求める方針となっています」

デイリー新潮編集部
 
 

百条委が兵庫知事の喚問を決定 証人尋問でパワハラ疑惑問う

 
 
 兵庫県の斎藤元彦知事によるパワーハラスメントなどの疑惑が文書で告発された問題で、県議会の調査特別委員会(百条委)は2日、斎藤知事に対して30日に実施する証人尋問への出頭を求めることを決めた。複数の疑惑が指摘されている中、まずはパワハラの有無に絞って知事本人の証言を得る方針だ。

 告発文は元県西播磨県民局長の男性(7月に急死)が3月に作成し、一部の県議や報道機関に送付していた。パワハラをはじめとする七つの疑惑について記されており、斎藤知事は当初、「内容はうそ八百」と否定。5月には県人事課が、文書について「核心的な部分が事実でなく、誹謗(ひぼう)中傷に当たる」とする内部調査結果を公表していた。

 告発文は、知事が出張先で20メートルほど手前で公用車を降りて歩かされたことに立腹して職員らを怒鳴ったなどパワハラと受け取れる言動について記述。これに対し、斎藤知事は6月下旬の定例記者会見で「業務上の指導の範囲内で適切に指導・助言している」と弁明し、辞職を否定している。

 元局長が百条委に向けて作成し、調査資料に採用された陳述書でも、職員に対する新たなパワハラ疑惑が浮上している。百条委は職員約9700人にアンケート調査を実施しており、1日午後5時までに3538件の回答があった。今後被害を訴える証言が出てくる可能性がある。

 次回百条委は23日にあり、原則として傍聴できない「秘密会」で職員らの証人尋問を実施。30日の斎藤知事の証人尋問は公開する。【中尾卓英、山田麻未】

 

【速報】斎藤知事「しっかり対応したい」 「パワハラ・おねだり」疑惑の百条委員会 証人尋問へ

 
 
兵庫県の斎藤知事は先ほど、自身のパワハラ疑惑や贈答品のいわゆる「おねだり」疑惑について調査する百条委員会で、30日に証人尋問を受けることが決まったことについて、「しっかり対応したいと考えています」、「どういった質問されるかはこれから判明するのでしっかり対応したいと思います」などと報道陣の取材に答えました。