“兵庫のおねだり知事”斎藤元彦と“公務員はタダ働き”大阪維新の凶悪すぎるタッグ…「阪神・オリ優勝パレード」担当はなぜ自死するほど追い詰められたのか

 
「阪神・オリ優勝パレードのカネ集め」に奔走させられた兵庫県のパレード担当課長が自死していたことが明らかになり、そのカネも「信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」と告発されていた。

 一体何のための、誰のためのパレードだったのか? 万博PRのために懸命になったのも大きな要因にみえるが、万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマである。ゾッとする。

 兵庫県の斎藤元彦知事は3年前の知事選で自民と維新が推薦して当選している。「おねだり」以外にも、知事の背景を含め、告発内容にあらためて注目すべきではないか。
 
 
 兵庫県の斎藤元彦知事をめぐる問題。果たしてワイドショーなどでやっている「おねだり」疑惑中心の視点でよいのだろうか。
 
「公益通報」など重要な論点があるが、今回ここで注目したいのは「阪神・オリックス優勝パレード」である。あれはいったい何だったのか。知れば知るほどゾッとするのだ。

 まず、先週またしてもショッキングなニュースがあった。

「阪神・オリックス優勝パレード担当 兵庫県元課長が死亡 告発文で『疲労し療養中』と記載 斎藤知事が公表」(毎日放送7月25日)

《兵庫県の斎藤知事を告発した文書で、阪神・オリックスの優勝パレードの業務で疲弊し療養中と記載されていた元課長の男性(53)が、今年4月に死亡していたことがわかりました。》
  
 ここで言う「斎藤知事を告発した文書」とは、この春まで兵庫県で西播磨県民局長を務めていた60歳の男性職員(以下X氏)による文書のことだ。

 X氏は3月中旬、知事による部下へのパワハラや視察先企業からの贈答品の受け取りなど7項目の疑惑を指摘した文書を、一部の報道機関や県議に送付。県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。

 その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『うそ八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。

 X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた(週刊文春7月25日号)。

 X氏の告発には2023年11月23日に開催された阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。兵庫と大阪を本拠地とする関西のチームがセ・パ両リーグで優勝したことを祝うために大阪市と神戸市でおこなわれた。

優勝パレードで見え隠れする維新の影
 文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった。担当部局は当初1億円で予算要求したが、副知事の指示で4億円に増額したという。

 さらに告発文書には「パレードを担当した課長はこの一連の不正行為と難しい調整に精神が持たず、うつ病を発症した」と記されていた。この課長は告発文書が公になった後の4月20日に自死していると週刊文春は7月25日号で伝えた。

 そして先週24日、兵庫県は阪神・オリックス優勝パレード担当課長の死を認めた。県は死亡から3カ月にわたって公表していなかった。

 3月に斎藤知事をめぐる疑惑が浮上して以降、X氏と優勝パレード担当課長の2人の職員の死亡が明らかになったのである。
 
維新には「公務員は働かせてナンボ」という考え方がある
 ではあらためて阪神・オリックス優勝パレードを振り返ろう。実は当初から数々の問題が指摘されていた。

「阪神・オリックス優勝パレード 教職員に大阪府 ネット募金要求 「寄付で評価?」組合懸念」(しんぶん赤旗2023年11月9日)

 パレードの開催費用を集めるため、大阪府が府立学校の校長・准校長に、教職員がクラウドファンディング(CF)に協力するよう事務連絡を出したことがわかったと記事は伝えている。

 大阪府はパレード開催のため警備費、交通規制告知などに5億円かかると説明。しかし集まりが悪いから教職員に協力を「求めている」という。

 さらに大阪府と市は、パレードの現地で来場者の誘導などを担う要員として各1500人のボランティアも募っていた。

「勤労感謝の日に職員3000人を7時間タダ働きさせようとする大阪府・大阪市のヤバさ これが『維新流』?」(東京新聞2023年11月9日 )

 府市トップの所属はいずれも維新だが、記事の中で大阪在住のジャーナリスト吉富有治氏は、

「もともと維新は大阪府市を統合する大阪都構想が党是。その中で『税金の無駄遣いをなくす』ことや『コストカット』を言い続けてきた。根本に『公務員は働かせてナンボ』という考え方がある」と解説。

 ここで維新の名前が出てきたが、阪神とオリックスのパレードの資金集めは当初は万博を前面に押し出していた。

阪神もオリックスも悪くない。優勝のめでたさに名を借りた「万博PR」が批判されていたのだ
《9月下旬の発表では、名前が「兵庫・大阪連携『阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード』~2025年大阪・関西万博500日前!~」と、なぜか無関係の万博が盛りこまれていたため炎上。》(中日スポーツ2023年10月18日)


 これには「パレードの政治利用だ」と批判が噴出。専門家はスポーツを使って体制側の悪評を隠す「スポーツウオッシング」に当たる、と指摘した。※『優勝パレード、万博PRに? 「政治利用」と批判噴出』(共同通信2023年11月18日)

 当時も今も阪神ファンとオリックスファンの中にはせっかくの優勝に水を差されたようで気分がよくない方もいるだろう。

 ポイントはまさにそこで、阪神もオリックスも悪くない。優勝のめでたさに名を借りた「万博PR」が批判されていたのだ。

 万博の建設費用が当初の計画より高騰し、批判が高まっていた時期だけにどさくさ感があった。
 
一体何のための、誰のためのパレードだったのか?
 さらにパレードでは大阪府・大阪市の職員へのタダ働きや募金要求などが問題となった。維新による公務員残酷物語だ、と。

 大阪府の吉村洋文知事はパレード後にXに次のようにポストした。

〈【速報】阪神とオリックス、史上初の優勝記念同時パレードは計96万人の観客 大阪会場は前回の阪神パレード超える55万人→監督、選手、パレードに来てくれた人達96万人のこの笑顔。やって良かったよ。メディアからは、散々批判を受けたけどね。この笑顔。これが答え。

午後5:59 · 2023年11月23日〉

 ところが今回「カネ集め」に奔走させられた兵庫県のパレード担当課長が自死していたことが明らかになり、そのカネも「信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」と告発されていた。

 一体何のための、誰のためのパレードだったのか? 万博PRのために懸命になったのも大きな要因にみえるが、万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマである。ゾッとする。

 兵庫県の斎藤元彦知事は3年前の知事選で自民と維新が推薦して当選している。「おねだり」以外にも、知事の背景を含め、告発内容にあらためて注目すべきではないか。

プチ鹿島
 
 

〈追及・斎藤兵庫県知事&牛タン倶楽部〉「知事絡みのポスターはいらないと幼稚園が拒否」「感謝状もいらん」四面楚歌の“ボッチ”知事に新たな火種。県研究機構の副知事“不可解人事”を告発文書が指摘

 
兵庫県の斎藤元彦知事らの違法行為疑惑を指摘する告発文書で、県政の混乱が続いている問題。県の事業に協力した人から「斎藤知事名の感謝状は受け取りたくない」という声まで飛び出し、県政の停滞は隠せない。“牛タン倶楽部”と陰口を叩かれた知事側近グループも体調を崩したり知事と距離を置いたりと解体状態で、県政を「前に進めていく」と言い続けているのは知事一人という状況になってきた。


疑惑の知事は県民からも総スカン
斎藤知事を巡っては、日常的にキレ散らかすパワハラや、視察先で目についた特産品や商品を“ごっつぁんです”とばかりに届けさせるたかり体質がクローズアップされてきた。

4月から県の幹部職員2人が相次いで自死。その背景に違法な公金支出疑惑や、こうした問題を指摘した公益通報者の保護制度を無視した人事報復があった可能性があることも明らかになっている。

あまりの深刻さに、3年前の知事選で推した自民党県連も辞職を求めているが、知事本人は「選挙で大きな付託を受けた。県政を前へ進めていくのが私の責任」と繰り返し、知事を続ける構えを崩していない。
 
Aさんが3月に作成した告発文書。7月19日に兵庫県議会百条委で一部黒塗りで公開された(撮影/集英社オンライン)
 
こうした中、斎藤氏がトップにいること自体が県政の障害となっているとの悲鳴が次々と上がっている。

 「“ため池マン”のポスターを幼稚園などで貼らせてもらえないんです」

そんな声まで現役職員から届き始めたと県関係者は怒りの口調で話す。

「ため池が約2万1500も県内にある兵庫県は、斎藤氏の知事就任前からため池保全条例を設け、子どもたちにも重要性を知ってもらえるようにと“ため池マン”というゆるキャラをつくり広報をしてきました。ところが今や、ため池マンまでが憎しみの対象になっています」(県関係者)

 斎藤氏は昨年4月、環境保全イベントに登場。斎藤氏はコスプレ好きで知られ、各地のイベントに登場してきたが、この時もため池マンに扮して現れ、自身のSNSに写真付きで「私も変身。」とポストしている。
 
23年4月に斎藤知事が投稿したXのポスト
 
「ため池マンは斎藤知事だというイメージが付き、ポスターの他にも『イベントへの影響も大。チラシも配れません』という声が出ているのです」(同関係者)
 
県の事業に長年協力した人に感謝状を贈ろうとしても「斎藤元彦知事名の感謝状はいらん」と拒否される事態も起きているという。

「現場は困っています。これ、県政の停滞じゃないんですか。知事には早よ辞めてもらわんと」と、この関係者は憤慨する。
 
告発文書に記された不可解な人事
一方、県庁でも異変が起きている。

「牛タン倶楽部はほぼ解体状態です。片山安孝副知事は7月末に辞任すると発表し、ほかのメンバーの理事や総務部長、産業労働部長の中には正常に出勤をしていない人もいます。一人はふさぎ込んでいて周囲が心配するほど。

片山副知事は辞任発表時に、斎藤知事にも辞職を5回勧めたが拒否されたと話しましたが、ほかの幹部の中にも知事に退陣を求めた人がいるとの情報があり、もう支えられないとの空気が出ています」(別の県関係者)
 
さらに、これよりも深刻な事態も起きていると別の関係者は話す。自死した2人のうちの1人、元西播磨県民局長、Aさん(60)は3月に斎藤知事らの違法行為疑惑についての告発文書を書いた。このAさんに県当局が懲戒処分で報復する過程で、Aさんへの情報提供を疑われた複数の職員が調査を受けている(♯3)。

「その対象になった人の中にも心身の健康を崩した人がおり、友人らが心配しています。今回の問題では亡くなった2人以外にも深刻な被害から立ち直れていない人もいるのです」(関係者)

また、告発文書を書いたAさんは3月末に定年退職を予定していたが、メディアや警察、県関係者に告発文書を発送したのは3月12日のことだ。

目前となった定年まで待たなかったAさんの心情は、文書に挙げた7つの疑惑で「五百旗頭真(いおきべ・まこと)先生ご逝去に至る経緯」との項目を最初に置いたことからうかがえる。

神戸大名誉教授で外交史研究者の五百旗頭氏は、防衛大校長を務め歴代首相の知恵袋的存在だった碩学だ。兵庫県出身で、井戸敏三前知事との縁から、阪神・淡路大震災後、県のシンクタンク「ひょうご震災記念21世紀研究機構」の理事長に就き、災害からの「創造的復興」という考えを提唱してきた。

その五百旗頭は今年3月6日に研究機構で執務中に「急性大動脈解離」で倒れ急逝している。
 
神戸大で行われた五百旗頭真氏を偲ぶ会
 
研究機構の副理事長には政治学者の御厨(みくりや)貴・東京大名誉教授や防災研究の権威、河田惠昭・京都大名誉教授という重鎮が名を連ねていたが、斎藤県政は御厨、河田両氏を職から外すこと決め、五百旗頭氏が死去する6日前に片山副知事が五百旗頭氏に通告に行っている。

A氏の告発文書ではこれを以下のように厳しく批判している。

「来年1月は阪神淡路大震災から30年の区切りの時を迎えます。機構の役割・使命を果たす事実上最後の大きな契機であると言っても過言ではないと思います。

御厨、河田の両先生はまさにこの分野における第1人者であり、井戸前知事が要請し、兵庫県政に関わってこられました。五百旗頭理事長もお二人には全幅の信頼を寄せておられているにも関わらず、このタイミングでの副理事長解任はハッキリ言って、五百旗頭先生と井戸前知事に対する嫌がらせ以外の何ものでもありません」

そして、この人事の背景として「とにかく斎藤氏は井戸嫌い、年長者嫌い、文化芸術系嫌いで有名です」と記し、「斎藤知事、その命を受けた片山副知事が何の配慮もなく行った五百旗頭先生への仕打ちが日本学術界の至宝である先生の命を縮めたことは明白です」と結んでいる。
 
井戸前知事の体制の否定が狙いか
文書は片山副知事の通告が五百旗頭氏死去の「前日」だったと誤って書いており、片山副知事は辞職を発表した7月12日の記者会見で、自身の面会は6日前だったことを強調。

さらに「4人いらっしゃる副理事長を組織の効率化から2人にすることをご相談していますが、削減するお二人の副理事長さんが兼務する『人と防災未来センター長』や『戦略研究センター長』につきましては続けて就任していただく方向で作業するとしておりまして、そのことで理事長さんを圧迫したという認識はありません」と反論している。

さらに斎藤知事もこう主張する。

 「当時、片山副知事の報告を随時受けながら、適切に人事の対応をしてきたものと考えています。もちろん、五百旗頭先生や名前の挙がっておられる2人の先生についても、大変尊敬をしております。機構の人事は任期に伴う適切な判断だったと考えています。

今回の機構の人事について、五百旗頭先生の命を縮めたことは明白というふうにあるのは、科学的根拠もないまま、ある種の誹謗中傷にもなるものなので、大変私自身も残念だと思っています」
 
無論、今回の人事と五百旗頭氏の急逝の因果関係を証明することは不可能で、A氏の指摘はこの件では「告発」とも呼べないものだ。

だが、県OBは「井戸前知事が自身の人脈も使って作り上げた綺羅星のような専門家集団を、斎藤知事は井戸体制を否定したいという一念でつぶしにかかっているとしか思えない。この人事は五百旗頭さんの両腕をもいだも同然で、時期的にも信じられない仕打ちだ」と話す。

A氏が告発文書を書いた3月12日は、五百旗頭氏の初七日に当たる日だ。Aさんが3月末の退職を待たずに告発したのは、五百旗頭氏の死を見て、こらえきれなくなったのだろうと親しい知人は推測している。

7月27日、五百旗頭氏ゆかりの神戸大で研究機構が「偲ぶ会」を開き、300人超の知人や県関係者が集った。斎藤氏は知事でありながら「弔辞の依頼は検討もされなかった」(県関係者)といい、献花をしただけで会場を離れた。

その直後に記者団から、五百旗頭氏の急逝が告発文書で指摘されたことへの受け止めを聞かれると「本日は五百籏頭先生を偲ばしていただく会ですので、文書についてのコメントは差し控えたいと思います」とかわしている。
 
故五百旗頭真氏を偲ぶ会に参列した後、記者団に話す斎藤知事
 
その上で「知事の仕事をしっかりやらせていただくということが大事だと思っています。先生のお考えやご遺志を継いでですね、災害に強い地域社会づくりというものを目指していきたいと思います」と県政継続になお意欲を見せた。

だが、それを可能にする人材もトップへの信頼も、どんどん細っている。