日本共産党の小池晃書記局長は30日に開いた会見で、自民党の鬼木誠防衛副大臣が南極で海上自衛隊の砕氷船「しらせ」が採取した氷を自身の選挙区内に配布した問題に言及した。

同党の機関紙「しんぶん赤旗」は29日、鬼木氏が衆院福岡2区の選挙区内で〝南極の氷〟という入手困難で希少価値が高いものを配っていたと伝えていた。この行為は「公選法で禁止された寄付行為にあたる疑いがある」とも指摘している。

小池氏は「(赤旗の)問い合わせに対して、鬼木氏は回答をされていない。これは重大で、海上自衛隊の砕氷船で採取した南極の氷は、非常に貴重な価格的にも大事なものですが、税金を使って採取したものです。自分の選挙区内で配るのというのは、公職選挙法違反に関わる問題になる可能性があると思います。明確な説明を求めていきたいと思います」とコメントした。

 

南極の氷の価値については「見た人によると凄い音がするらしい。長きにわたって圧力がかかっているから。うちの文科科学委員の証言によりますと、非常に希少価値があるものだと…。文科省所管の極地研究所の研究資料として使われています。数千メートルボーリング調査し閉じ込められているようなもの(氷)を科学研究として『しらせ』が採取していたものだと聞いています」と語った。

一方、鬼木氏はNHkの取材に対し同日、自身が選挙区内で氷を配っていたことを明かした上で「自衛隊に関心を持ってもらいたいという思いで、政治利用する意図は一切なかった」と述べた。複数回にわたって児童や保護者に配ったといい、「もし法令に違反しているということであれば、すぐにやめる」と答えている。

林芳正官房長官は同日に開いた会見で「個々の議員の活動にかかわることであり、この場で私がコメントすることは控えたい。一般論として言えば、議員が必要に応じて説明責任を果たすことが重要だ」と述べるにとどめた。

 

 

 

自民・鬼木防衛副大臣

南極の氷 選挙区で配布

「海自から入手」 公選法違反の疑い

 
 南極で海上自衛隊の砕氷船「しらせ」が採取した氷を、自民党の鬼木誠防衛副大臣が自身の選挙区内で児童や保護者に配っていたことが29日、本紙の取材でわかりました。「南極の氷」という入手困難で希少価値の高いものを選挙区内で配ることは、公職選挙法(199条の2)が禁じる「寄付行為」に当たる疑いがあります。(田中正一郎、矢野昌弘)

 「衆議院議員 鬼木誠氏のご厚意により、『●小学校児童』を対象に南極の氷体験会を開催することになりました」

 これは鬼木防衛副大臣の選挙区(衆院福岡2区)にある福岡市南区内の小学校関係者から保護者らに一斉に送られたメールの中身です。

 これによると、同小学校の児童を対象に定員「40名」「3年生までは必ず保護者の方の付き添いを」「4年生以上でも保護者の付き添いは可能」となっています。

 21日に市内の公民館であった「体験会」には、鬼木氏自身も出席。参加者によると、PTA役員が会場案内し、PTA会長があいさつ。その後、鬼木事務所のスタッフが司会役となり、鬼木氏とスタッフが「南極の氷」を割って、参加者らに渡していました。

 「体験会」で鬼木氏は、参加者を前にあいさつ。自身が衆院議員で、防衛副大臣だと名乗り、「しらせの隊員の人たちが南極から採ってきた氷を私にいくつかくれたんですね。今日は、本当に何個かしか手に入らなかった氷のうちの一つをこの●校区に持ってきて、みなさんにご披露したい」と述べたといいます。

 鬼木氏は2023年にも、選挙区内の別の小学校区を対象に「体験会」を開いていました。

 神戸学院大学の上脇博之教授は「南極の氷は相当な希少価値のあるものです。これをPTA側が無償で受け取っている形であり、公選法が禁止する選挙区内の者に対する寄付に該当する可能性がある」と指摘します。

 また「公選法の問題とは別に、税金で行われた南極観測で採った氷を特定の議員が得ている。鬼木副大臣が入手した経緯も含めて防衛省は説明する必要がある」といいます。

 本紙は25日に、鬼木氏の事務所に取材を申し込みましたが、29日夕方までに鬼木氏側から回答は来ていません。防衛省は「確認中の段階です」としています。鬼木副大臣は、防衛省の特定秘密漏洩(ろうえい)再発防止委員会の委員長を務めています。