沖縄県に伝えていれば、米側に対応をとらせ、その後の事件を防げたかもしれない。沖縄県に通報せず、隠蔽したことを「問題なかった」と、いまだ居直り続ける。日本国民の人権と尊厳に鈍感な人に外務大臣を続ける資格なし。

 

 

 

沖縄、米兵の性暴力事件。通報制度どおり沖縄県に伝えなかったことは「問題があるとは考えていない」と開き直った外務大臣。
今日の国会では「心が痛む」「耐えがたい」など述べたが、4月の日米首脳会談でも6月の沖縄「慰霊の日」も語らず、米側への抗議も沖縄県民への謝罪もない。
どこの国の大臣か。

 

 沖縄で起きた米兵による少女への性暴力事件を取材している。今回の場合、事実関係の整理が重要だ。

 沖縄県の米軍嘉手納基地所属の空軍兵士(25)が、去年12月24日、県内に住む16歳未満の少女を公園から車で自宅に連れ去り、同意なく性的暴行を加えた。被害者の少女から顛末(てんまつ)を知らされた母親からの通報で、沖縄県警は、この米兵の氏名・所属を特定、米軍側に照会した。その際、逮捕状は請求せずに、一貫して任意で米兵を聴取した。

 日米地位協定という壁がどれほど県警の捜査現場で意識されていたのかは分からない。だが県警は、何と3カ月近くもたった今年3月11日にこの米兵を書類送検した。これを受け那覇地検が米兵を起訴したのが3月27日。その際、那覇地検は那覇地裁に身柄拘留を求めた形を一応取ったようだが、米兵側は速やかに保釈金を支払い、米兵の身柄が日本側へ引き渡され拘留が実際に行われたのかどうかは曖昧だ。

 米軍側はこの米兵のパスポートを保管中というが、彼は、海外渡航は別として基地内で自由に生活していた。沖縄県やメディアには何の連絡も発表もなかった。その一方で、沖縄県警は、外務省の出先機関である外務省沖縄事務所には起訴前の段階で通報していた。同省の宮川学沖縄大使から東京の外務省本省に連絡が行き、岡野正敬事務次官や上川陽子外相も事実を把握していた。

 起訴当日、外務省は岡野事務次官名で在日米国大使館に遺憾の意を電話で申し入れたというが、沖縄県やメディアには何の連絡も発表もなかった。沖縄県警から沖縄防衛局には通報されていなかったというが真相は不明だ。常識的には考えにくい。一方、沖縄県警から東京の警察庁には連絡が行っていたという。そこから警察庁長官や国家公安委員長と情報が共有されていた可能性が濃厚だ。その証拠に、岸田文雄首相や林芳正官房長官らも起訴前の段階で事案を把握していたことを認めている。

 知らぬは、沖縄県知事と県民、そしてマスメディアだけだったのだ。在沖米軍からは東京の在日米軍司令部に報告が上がっていた。また、那覇地検からは東京の最高検に報告が上がっていたという。共通しているのは、みんなそろいもそろって、沖縄県にある出先が、中央(東京)の上部機関、上司たちにはきちんと報告していたという現実だ。

 それから何と3カ月以上経過した6月25日、地元民放テレビ局QAB(琉球朝日放送)の昼ニュースでの報道(午前11時57分)を見て、沖縄県が初めて事件を知ったのだった。驚愕(きょうがく)するしかない。QABの一人の若い記者が6月24日の午後3時ごろに「公判期日簿」を確認して(これは裁判担当記者たちのルーティーン業務だが、前日23日の「慰霊の日」の取材疲れで、地元マスコミ各社でそれがおろそかになっていた節がある)、疑問に思ったことが事件発覚のきっかけだった。

 「こんな事件は発表もされていないし聞いたこともない。おかしいな」。那覇地検はQABからの問い合わせに対して渋々、起訴状を提供してきた。それが6月25日の朝だ。直ちに昼ニュースに突っ込んだ。QABの放送時点まで、外務省は沖縄県に一切の通報・連絡をしていなかった。これを意図的な情報隠しと言わずしてどのように言えばよいのか。

 1995年に発生した米兵による少女暴行事件をきっかけに、日米間では米軍絡みの重大事件については、県当局への連絡も含む「通報手続き」が合意されていたはずではなかったか。

 外務省の小林麻紀外務報道官は、6月26日の記者会見で「適切に判断して対応している。特に本件のように被害者のプライバシーに関わるような事案については、慎重な対応が求められると考えている。常に関係各所にもれなく通報することが必要だとは考えていない」などと述べていた。小林報道官は、事件を県に通報する公益性とプライバシー保護を意図的にすり替えている。プライバシーを保護しながら事案を発表することはこれまでも行われてきたではないか。なぜ県には伏せられていたのか。

 この間、沖縄県では6月16日に県議会選挙があった。玉城デニー知事を支える与党勢が大敗した選挙だ。今回の件が公になっていたならば、当然ながら選挙での大きな争点の一つになっていただろう。4月には岸田首相の訪米があり、日米関係は歴史上「かつてない高みに達した」と政府は自画自賛していた。その陰で事件は隠されていたのだ。

 初公判を傍聴した。被告は胸板の厚いがっしりとした体格で、真っ白いワイシャツに黒ズボン姿。茶色の髪のいささか童顔の白人だった。既婚者で妻と口論してむしゃくしゃしていたとは検察側の主張である。性的な行為はしたが同意の上だと思っていた、16歳未満との認識はなかった、「I’m not guilty」とはっきりとした口調で無罪を主張した。

 法廷で検察が明らかにした被害少女の身長と体重の小さなことに驚いた。裁判所の配慮で被告は通常とは違う出入り口から入退廷し、被告の人権はしっかりと護(まも)られていた。被害者の人権はどうなのか。本紙掲載の上間陽子琉大教授の傍聴記を読んで強く共感した。〈黙り通し、隠し通し、口先だけの沖縄の負担軽減を述べて濁す。それが暴力への結託でなくて何なのか〉

 植民地には傀儡(かいらい)政権ができる。傀儡とは操り人形のことだ。宗主国=本当のご主人様(日本政府およびアメリカ)の言いなりに植民地機関は働く。沖縄県警が、沖縄県知事と県民に事件を伏せていたことは、沖縄の民を護らず、ご主人様のご機嫌をうかがう振る舞いではないのか。植民地主義が今も生きていることの悲しい証しではないのか。沖縄県警や那覇地検の関係者らに問いたい。沖縄は植民地なのですか?(テレビ記者・キャスター)=随時掲載

 

 

木原防衛相が野党の辞任要求を拒否 「責任の取り方と思わない」

 

山添 拓さん
外交防衛委員会の閉会中審査で質問。日米2+2に続く拡大抑止の大臣会合は米軍の「核の傘」=核兵器を含む抑止力の強化を強調。
岸田首相の言う「核のない世界」とどう整合するかと問うと「矛盾しない」と外務大臣。
核抑止力にしがみついていては核廃絶はおろか核軍縮にも近づかない。矛盾でしかない。

 

 

 木原稔防衛相は30日の衆院安全保障委員会で、海上自衛隊の潜水手当不正受給問題など一連の防衛省・自衛隊の不祥事を受けた野党の辞任要求を拒否した。「今、仕事を放棄することが責任の取り方とは思わない。隊員の意識改革、組織の体質改善の方向性をしっかりと示したい」と語った。

 木原氏は「地位には全く固執をしていない」としながらも、「岸田文雄首相からはリーダーシップをとって組織を立て直すように指示を受けている」とも語った。

 また、潜水手当不正受給問題で逮捕者が出ていたことが未報告だった問題に関し「文民統制という観点からは非常に問題があった。本来であれば、逮捕された昨年の11月に報告があってしかるべきだった」と言及。今月5日に一連の不祥事の報告を事務方から受けた際、説明はなかったものの資料に注釈として記載があったことも明らかにし、「私に全く落ち度がなかったかというと、一端の責任はある」と述べた。【中村紬葵、樋口淳也】

 

指揮統制の議論継続  日米防衛相会談で一致

 

 木原稔防衛相と米国のオースティン国防長官は29日、防衛省で会談し、日米の指揮統制の枠組みを向上させるため、今後設置する作業部会で調整要領や連携強化に向けた議論を継続することで一致しました。28日の外交・軍事担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、横田基地に置かれている在日米軍司令部を再構成し、「統合軍司令部」を新設することを受けたものです。

 米軍の統合軍司令部は、来年3月に創設される自衛隊の「統合作戦司令部」の「重要なカウンターパート(相対するもの)」と位置付けられ、日米の指揮統制の一体化につながります。自衛隊は、装備・情報両面で圧倒的に優位な米軍の指揮下に事実上、組み込まれます。

 また会談では、憲法違反の敵基地攻撃能力(反撃能力)について、日米での効果的な運用に向けた作業を加速させることで一致しました。

 普天間基地の「返還」のため、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設などを加速させることを確認。対中国を念頭に「南西地域における日米の共同プレゼンス(駐留)を着実に拡大していく重要性」で一致しました。

 

 

主張
日米2プラス2
自衛隊を米の属軍にするのか

 

山添拓さん

外交防衛委員会の閉会中審査で質問。日米2+2に続く拡大抑止の大臣会合は米軍の「核の傘」=核兵器を含む抑止力の強化を強調。
岸田首相の言う「核のない世界」とどう整合するかと問うと「矛盾しない」と外務大臣。
核抑止力にしがみついていては核廃絶はおろか核軍縮にも近づかない。矛盾でしかない。

 

 自衛隊を事実上、米軍の指揮の下に置き、米国の属軍にする重大な動きです。28日に東京都内で開かれた日米の外交・軍事担当閣僚による会合(日米2プラス2)での合意です。

■統合軍司令部新設
 日米2プラス2では、米軍と自衛隊の指揮統制をめぐり、米側が、在日米軍を再編して「統合軍司令部」を新設することを打ち出しました。

 現在、米軍横田基地(東京都)にある在日米軍司令部は、基地の管理などに権限が限られています。これに対し統合軍司令部には、ハワイの米インド太平洋軍司令部が持っている在日米軍の作戦指揮権の一部が与えられます。自衛隊が陸海空の部隊などを一元的に指揮するため、24年度末に立ち上げる「統合作戦司令部」に対応する組織(カウンターパート)になります。

 狙いは、平時から戦時までの米軍と自衛隊の戦術や装備、後方支援などの共通性(相互運用性)と、共同訓練や共同作戦など実際の活動での協力をさらに深化・促進させることです。米軍は自衛隊に比べ、情報量でも装備面でも圧倒的に優越しています。“共同”とは言っても、自衛隊が米軍の事実上の指揮下に組み込まれることは避けられません。

 2プラス2では、長距離ミサイルなど自衛隊の敵基地攻撃能力について「米国との緊密な連携の下での日本の反撃能力の効果的な運用」が強調されました。国際法違反の先制攻撃も選択肢にする米軍の指揮に従い自衛隊が他国をミサイル攻撃する危険があります。

 ミサイルの日米共同生産で合意したことも看過できません。昨年末に決めた地対空ミサイル・パトリオットの米国への輸出に加え、新たに戦闘機に搭載する空対空ミサイルと、パトリオット改良型の日米共同生産を始めます。米国を通じた紛争当事国への輸出につながり、「死の商人国家」の道を突き進むものです。

 2プラス2は、対中国軍事戦略の最前線として、自衛隊部隊の追加配備や日米共同演習など「南西諸島における二国間のプレゼンス(存在)を向上させる」ことでも合意しました。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設を「加速させる」としていることなどとあわせ、県民に過重な基地負担を一層負わせるものです。

 昨年12月の沖縄での少女暴行事件をはじめ全国で米兵の性犯罪が隠蔽(いんぺい)されていた問題で、日本側の抗議も、米側からの謝罪もなかったことは許されません。

■「核の傘」を強化
 2プラス2後に「拡大抑止」に関する初の閣僚会合が開かれたことも極めて重大です。

 拡大抑止とは、米国が自国の核戦力による「抑止力」=「核の傘」を同盟国にも広げて提供するというものです。核兵器の使用を前提にしています。

 会合では、日米で「拡大抑止を強化する最善の方法を探求し続ける」ことを確認しました。米国が広島、長崎に核爆弾を投下した「原爆の日」を前に言語道断です。

 2プラス2と拡大抑止協議は、東アジアの軍事的緊張をいよいよ激化させるものです。今必要なのは、憲法9条に基づく外交による平和創出への努力です。