まだ12歳のジャーナリスト、中学生新聞くんが「この人、厨二病ですね」と言ったそうで。中1に言われるって。
しかし思えば過去にも、小泉純一郎や橋下徹に熱狂し、騙されていた時期がある。学ばないなあ我々は。

 

すべてが異様だった都知事選を総括・分析 悪夢のような結末は歴史の分岐点になる予感

 公務を理由に政策論争から逃げ回り、噴出する疑惑への質問を封じるためにオンライン会見などで記者を制限、公開討論に応じたのも2回だけだった。その一方で、選挙直前の6月に低所得者層に1万円の商品券を配るなど、“買収まがい”のようなことをした。

 そんな小池を自公は支援したが、裏での票固めに徹し、表には出ないように身を潜めた。つまり、まっとうな審判を避けるために、現職都知事が、ありとあらゆる策を弄し、民主主義の“当たり前”を踏みにじった選挙戦だったのである。

 それなのに、フタを開ければ小池の圧勝、開票と同時に当確が出る「ゼロ打ち」だった。政治を真剣に考えている有権者ほど、この結末には暗澹たる気持ちになったのではないか。

 「何から何まで異様な都知事選でしたね。国民から猛烈な批判を受けている与党が候補者を出せずに、小池氏にステルスで抱きついた。それなのに、野党は批判票を受け止められずに、無党派層は分断された。ネット社会の若者は石丸氏に流れ、マトモな政策論争もないまま、目立たない戦術に徹した小池氏が消去法の雪崩現象で圧勝した。56人もの候補者が出て、選挙を金儲けにしたり、面白がる風潮の中で、民主主義が流動化していく懸念を強く感じる選挙でした」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 

 

【ラサール石井 東憤西笑】#272

 



都知事選の結果は出た。投票率が上がったことは良かった。その上での結果だ。これが民意なのだから仕方がない。蓮舫推しであった私には残念至極だ。

しかし驚いたのは石丸伸二氏の2位だ。165万票、無党派層の4割。とくに若者を惹きつけた。蓮舫氏の街宣の人の集まり具合は凄かったが、どうやら今はそういうことではないらしい。途中抜け出した大学生は「話が難しくてわからない」と言った。Z世代は「政治的な話や党派対立を嫌う」とも言われる。いや政治家の演説で政治的な話をするなと言われても、と思うが石丸氏はそれを実践した。
最後の街宣を聞いたが、政策の話など一切ない。自分の生い立ちや頑張ってきた話。まるで夏フェスのエンディングだ。私には気持ち悪いが聴衆は酔っていた。

 

以前からXには過去の安芸高田市の市議会の様子などが流れていた。随分パワハラ体質の人だなと思った。実際に、ある議員とは訴訟になり、敗訴している。他にも選挙のポスターの印刷代金100万余を公費で賄える30万しか支払わず、印刷会社から訴えられこれも敗訴し支払いを命じられた(判決は7月5日。だがマスコミは選挙翌日の8日に一斉に報じた。えー⁉)。

そして選挙後のインタビューがひどかった。まず質問に必ず顔をしかめ時間を置く。質問がとんちんかんだと言わんばかりに。そして難癖をつける。質問者がひるむとここぞとマウントを取る。不毛な会話が続く。どの局もこの連続。

ただTBSラジオの荻上チキ氏と武田砂鉄氏はかなり頑張った。どう見ても石丸氏がおかしく異常に見えたと思うのだが若者は違うらしい。そもそも彼らはテレビも見ないしXも見ない。

見るのはショート動画とYouTube。そしてそこには石丸氏を称えるような動画ばかりだ。

映画は倍速で見る、ギターソロは飛ばす、長い本は読めない、という若者たちのスマホに、検索しなくても石丸氏のカッコいいショート動画が現れる。一度見たら同じようなものをAIが選んでどんどん見せてくる。

そこで興味を持ったから自分でもっと調べてみよう、他の人と比べてみよう、などということはしないんだな。文句なく飛びつくんだ。

水道橋博士によると、まだ12歳のジャーナリスト、中学生新聞くんが「この人、厨二病ですね」と言ったそうで。中1に言われるって。

しかし思えば過去にも、小泉純一郎や橋下徹に熱狂し、騙されていた時期がある。学ばないなあ我々は。

(ラサール石井/タレント)

 

 

鈴木エイト氏 石丸伸二氏の発言に「耳を疑う…」“おんなこども”呼ばわりを疑問視

 

 

ジャーナリストの鈴木エイト氏が11日、「X」(旧ツイッター)を更新。前安芸高田市長の石丸伸二氏の“女子ども(おんなこども)”発言を疑問視した。

石丸氏は東京都知事選で2位となり注目を集めている一方、メディアに忖度しない言動で賛否を呼んでいる。中でも7日夜放送のフジテレビ系の選挙特番[Mr.サンデー“七夕決戦”都知事選SP」では元坂46の山崎玲奈に対する言動が批判された。

この言動について石丸氏は11日放送のテレビ朝日系「グッド!モーニング」に出演し「ちょっとかわいそうだった」と振り返りつつも「女子どもに容赦するのは優しさじゃないと思っている。相手もプロとしてあの場にいらっしゃる」と持論を展開した。

この発言に鈴木氏は今朝のテレビ朝日『グッドモーニング』で流れた石丸伸二氏へのインタビュー映像。石丸氏が『女子供(おんなこども)に容赦するのは優しさじゃない』と発言。『女子供(おんなこども)』に耳を疑う…」と、その言い回しを疑問視した。

石丸氏は山崎の質問に対し「前提が正しくない」などと発言。山崎は「不勉強ですみません」などと恐縮しながら「教えていただけますか」と続けたが「見方が違う」などと返していた。

 

「敵意には敵意を返す」石丸伸二氏 選挙特番での“高圧対応”の真意を告白も「恐ろしい」「大人がすることではない」と広がる恐怖

 

 

7月7日投開票の東京都知事選で2位と躍進した広島県・安芸高田前市長の石丸伸二氏(41)。

メディア対応が連日のように物議を醸すなか、石丸氏がネット番組に出演して“真意”を明かした。

石丸氏は7月10日、YouTube番組『ReHacQ』に出演。様々なやり取りがかわされるなか、番組中盤で、司会者の高橋弘樹氏(43)が「なぜ選挙戦当日の開票特番であんなブチ切れてたのか、ちょっと教えてもらっていいですか。感じ悪くないですか?」という直球の質問を投げかけた。

高橋氏の指摘する“ブチ切れた開票特番”とは、石丸氏が中継で出演した7月7日放送の『Mr.サンデー“七夕決戦”都知事選SP』(フジテレビ系)のこと。司会の宮根誠司(61)や元乃木坂46・山崎怜奈(27)の、公約について都政と国政の比重を問う質問に対し、石丸氏は「前提のくだりがまったく正しくない」などと質問にそもそも取り合わず、冷笑したり逆質問するなど態度を見せ、“高圧的”との指摘が相次いだ。

そうした一連の言動を受け、高橋氏は“感じの悪い”言動の意図を石丸氏に問いかけると、石丸氏はこう説明した。

「僕、常にコミュニケーションの基本として“ミラーリング”するんですよ。善意に対しては善意で返すし、敵意に対しては敵意をちゃんと返す」
「1番距離を取るのが楽というか、最適化しやすいっていう思いがある」

続けて「雑な質問してくる者に対しては 相応の対応をする。でも、雑な質問に雑に答えたらぐちゃぐちゃになるんで、そこは僕の方でうまく整理をする」と言い、「相手が真剣に調べてきてるときには、それに見合った回答をちゃんとクオリティを担保して返すようにします」と解説した。

高橋氏が「突き放して答えてるのは質問者の方がやや敵対的に来てたから?」と質問を重ねると、石丸氏は「敵対とまでは言わないかもしれんけど、雑なんですよね。“今更それ聞く?”みたいな」と質問者の準備不足を指摘。「それこそ政治家の一掃とはっていうのを、そんなんだって告示前の、共同記者会見で掲げてるんですよ。なぜその時にメディアは聞かない、そして報じない。“終わってからそれ聞くの?”っていうのは最初にものすごい違和感を覚えました」と自身の冷ややかな対応について胸の内を明かした。

それに対して高橋氏は「笑顔で大人の対応して、噛み砕いて言って、イメージ良くする」戦略もあるのに、なぜそうしないかを再び質問。

すると石丸氏は「それは絶対取らない」と即答し、「それこそ政治がつまんなくなってる諸悪の根源だ」と持論を展開。地上波のテレビなどのオールドメディアは「紋切り型のステレオタイプの一問一答にしたくてしょうがない」と言い、お決まりのコメントを求められているのが透けて見えるが、それは「有権者が求めてるものじゃない」と考えてると発言。

2位という選挙結果について聞かれることに対しても「“勝ち負け”という視点がすごく小さい」とし、石丸氏に投票した約165万人の票を“勝ち負け”で測ることは失礼であると指摘した。

逆質問を織り交ぜるなどの石丸氏独特の受け答えがネット上で”石丸構文”と揶揄されていることに対しては、「あれも一周回って、僕は全然構わない。むしろ”いいぞ、もっとやれ”って」と発言し、何かを言っているようで何も言っていない“進次郎構文”と揶揄される小泉進次郎氏(43)との対談も「全然やります」と積極的な姿勢を見せた。

批判や揶揄も受け入れる理由について「僕は政治のエンタメ化に真剣」だといい、誹謗中傷があったとしても「自分の個の利益と社会の利益を分けて考えるので、自分が嫌な気持ちになるのも確実なんですけど、社会の利益があまりにも莫大なので許容する」と発言。政治に興味を持つ人が増えればそれが「本望」だと明かした。

山崎を“論破”した真意を明かした石丸氏。《石丸氏に質問や、他の人への質問でもそうだけど、予め下調べしてから、質問するべきだと思います》と共感する声もあったいっぽう、Xやネット上では、疑問の声が相次いでいる。

《ミラーリングの本質を致命的に誤解している上、これでは弁解でなく責任転嫁しているだけになる》
《言い分が恐ろしい 「善意には善意で返し、敵意には敵意で返す」 自分の崇拝者には恩恵を与え、少しでも懐疑的な態度を示す者には、説得・理解を得るのではなく容赦なく切り捨てる》
《人によって態度を変えるのね 周りをYESマンで固める独裁者の臭いプンプン》
《若い方から質問されても冷たく返す姿勢は変わらない。 確かにコメンテーターとしてあの場にいたタレントはそぐわないかもしれない。 だけど政治に疎い方から質問を受けても丁寧に受け答えができるのが政治家じゃないかな。 敵意があるなら敵意でというのは大人がする事ではない》

 

石丸伸二現象の古臭さ…NHK“新たな選挙戦”とヨイショも「強い言葉」「メディア攻撃」に既視感

 

「選挙の基本を徹底させた一方で、都内のわが家の固定電話にも女性ボランティアが『石丸伸二をよろしくお願いします』とかけてきました。ドトール名誉会長ら経済人を味方につけ、豊富な資金力にモノを言わせた印象です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

 

 

 都知事選後のメディアは石丸伸二前安芸高田市長(41)の話題で持ち切り。政党の支持を受けず165万票を獲得。無党派層と10~30代の投票先はトップで「ネット世代が『切り抜き動画』を拡散して支持」との分析が目立つ。NHKは“石丸現象”“新たな選挙戦”と持ち上げたが、そこまで石丸は目新しいのか。

「恥を知れ」「政治屋の一掃」など強い言葉で、耳目を集める手法は「自民党をぶっ壊す」の小泉純一郎元首相とソックリ。既成政党やメディアを攻撃するスタイルは大阪府の橋下徹元知事を思い出す。YouTubeやTikTokなどの伝達手段が新しいだけで、言葉自体に新鮮味はない。

 選挙戦も古典的だった。街頭演説は1回15分刻みで場所を変え、1日6~12カ所をこなす。私鉄沿線の小さな駅前や商店街、スーパーもコツコツ回り、顔と名前を売る。「つじ立ち」と呼ばれるオーソドックスな手法で、活動量は主要候補の中ではダントツ。昭和を引き継ぐ地道なドブ板選挙だった。

「選挙の基本を徹底させた一方で、都内のわが家の固定電話にも女性ボランティアが『石丸伸二をよろしくお願いします』とかけてきました。ドトール名誉会長ら経済人を味方につけ、豊富な資金力にモノを言わせた印象です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

 

■得票数は東国原英夫氏以下

 今年72歳になる現職の小池知事に親子ほど年齢の離れた“青年”が挑む。この構図も既視感たっぷり。2009年の衆院選で民主党が自民重鎮の対立候補に女性の新顔をぶつけて次々と議席を奪い、政権交代を成し遂げた。性の違いはあれど、当時の「小沢ガールズ」戦略と相似形である。

「都内の無党派層は基本的に新しもの好き。約30年前の都知事選でタレントの青島幸男さんを当選させたように、昔から既成政党と一線を画す“改革派”を支持したがる。よくあるパターンに石丸氏もハマっただけとも言えます」(金子勝氏)

 政権与党が独自候補を擁立できず、現職の圧倒的有利--今回のシチュエーションと酷似していたのが11年、東日本大震災直後の都知事選だ。投票率は57.86%と今回の60.62%より低かったが、4選した石原慎太郎元知事の261万票に対し、次点の東国原英夫氏は169万票を獲得。今回の石丸票を上回っていた。

 東国原氏の今を思えば、石丸の健闘を変に持ち上げたりせず「そのまんま」を評価すべきだ。

 

 

「当選していたら東京でもとんでもないことしていたよ」石丸伸二氏の躍進を安芸高田の市議たちはどう見たか?「独裁、パワハラ… 彼は安芸高田をガタガタにした」「後継者が落選したのが民意」

 

 

再び降ってわいた学歴詐称疑惑もなんのその、現職の強みを活かして小池百合子氏(71)が圧倒的な得票数で3選を決めた東京都知事選。しかし、その七夕決戦で165万超の票を集め、知名度抜群の小池氏と元参院議員の蓮舫氏(56)の間に割って入る次点に食い込んだ前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)の健闘ぶりは、俄然注目を浴びた。一方で石丸氏が任期途中で職を投げ出した安芸高田市長選も同日に行われ、こちらは石丸市政からの転換を訴える新人が、石丸路線継承を掲げた前市議らをおさえて初当選するなど、石丸氏の為政者としての評価には疑問符がつくような結果になった。

 

「当選してたらきっと東京でもとんでもないことしてましたよ」
過去最多の56人が立候補した都知事選は投票率60.62%(前回55.00%)で小池氏が291万8015票で圧勝、続いて石丸氏は165万8363票を集め、蓮舫氏は128万3262票の3位に終わった。

人口約2万6千人の安芸高田市の首長を辞し、500倍以上の人口約1400万人を擁する首都東京に乗り込んだ知名度もない男が、強烈な旋風を巻き起こした。

さぞや地元で実績を残して絶大な人気を誇り、「後継者」がすんなり当選を決めたのかと思いきや、当選したのは反石丸色を前面に打ち出した元郵便局長の無所属新人、藤本悦志氏(51)だった。

市議会で数少ない「石丸派」として路線継承を訴えた前市議の熊高昌三氏(70)は2000票以上差をつけられ、次点にとどまった。藤本氏は昨年11月末に立候補を表明、「石丸氏は市議会や市民との対話も少なく、その手法は対立と分断を招いた」と訴えていただけに、石丸市政の落とした影は思いのほか色濃かったようだ。

 

♯1で報じたように、地元の公立中高を経て京都大学経済学部に進学、卒業後は三菱東京UFJ銀行に入行、ニューヨーク駐在員も経験した石丸氏は2020年7月に突如、安芸高田市長選に立候補して当選。

華々しいキャリアの凱旋は救世主感に満ちていたが、他者を寄せ付けない攻撃的な一面が次第に表面化し、その摩擦と軋轢で広島の小都市は疲弊した。現職の安芸高田市議は今回の都知事選の結果を含めた一連の経緯をこう分析した。

「危うく東京都民も騙されるとこだったから、小池さんが3選してよかったって思いますわ。石丸さんが掲げる政治再建や財政再建は、よく聞くと中身もほとんどないんだけど、人気取りだけは上手いからね。

安芸高田市長選の時もそうでしたけど、『よし、わしらが手伝ってやる』と名乗り出た地域のおじさんたちの手を『選挙カーも応援もいらない。1人でやる』と払いのけ、駐車場にイスを並べて演説ばっかりしてましたよ。それで『このニューヨーク帰りの若者は何かやってくれそう』という期待感であっという間に人気者になりました。

今回の都知事選でも小池さんや蓮舫さんは政治の話ばかりでしょうから、そんな中で『石丸ちゅうんは面白い』と思われて人気は出たんでしょう。でも、あれが当選してたら、きっと東京でもとんでもないことしてましたよ」

 

「これまでより市政は間違いなくよくなると思う」 
安芸高田市の現況を例に挙げ、市議は続けた。

「今回、当選した藤本さんは『市議会や市民との対話が大事』と言い続けている人で、議会と激しく対立ばかりしていた前任者と比べたら、わしらも大歓迎です。

結局、市民も石丸市政はダメだって気づいたって事ですわ。人気取りで市長になったものの、やったことは自分の意見を押し通すだけ。

彼が議会の反対を押し切って進めてきた認定こども園の問題も、藤本新市長は方針を改めるそうなので期待しています。この問題は吉田町(旧高田郡吉田町)内にある保育所や幼稚園の立地場所に土砂崩れの危険性があり、別の地区に移転の必要があるとされたことに起因します。

普通なら町内のなるべく他の場所に移設しようと考えようもんですが、石丸さんは『校区をまたいで移設する』と言い出した」

 

石丸氏の提唱する移設先には私立保育園もあった。ところが…

「そんな地域であれば、まずは計画書を持って地元の人や私立保育園に説明すべきだと議会は主張したんだけど、石丸氏は『予算使って計画書なんて作っても反対されたらお金をドブに捨てるようなもんでしょ』でしたからね。

その移設計画に関しても藤本新市長はまずは吉田町の中で土地探しから始めようという方針です。議会と市長も、対立ではなく対話できる関係の方がいいでしょう。今まで異常だったことがようやく平常に戻っていけそうです」

別の市議もこう胸をなでおろした。

「そりゃあもう選挙で藤本さんが市長に選ばれたんだからそれが民意なんでしょう。市民が石丸市政の継続を望んでいれば、後継者である熊高さんが当選したはずですから。

石丸は結局のところ、4年間何の実績もなく安芸高田市をガタガタにするだけして、このままじゃ次の選挙は無理だと思って東京に逃げていったわけでしょう。

彼は地方議会の特色である二元代表制をまったく重んじることなく、とにかく自分の好き勝手で物事を進めるだけの独裁者でしたから。

そのパワハラぶりについて今、こと細かに言うつもりはありませんが、議会で議員をアホ呼ばわりしたり、私自身も高圧的な物言いをされたことがありますよ。

こうして『対立』を選んだ前任者に対し、新市長の藤本さんは『対話』を重視すると言っているので、これまでより市政は間違いなくよくなると思うし、またよくしていかないといけません。

一方でなんの実績もない石丸氏が知名度抜群の蓮舫さんをおさえて2位になった都知事選に関しても、東京都民の『民意』なんだと思います」

その都民の民意が反映された都知事選後の民放各社の選挙特番で、石丸氏はコメンテーターやアナウンサーの質問をはぐらかしたり逆質問でキレてみせる様子がSNSなどで拡散され、パワハラ体質が早くも懸念されている。

今後は「まだ決めていない」としながら国政転身について「選択肢としては当然考えます。例えば衆院選広島1区。岸田首相の選挙区です」と述べるなど、強気キャラにも拍車がかかったようだ。驕る平家は久しからず。どうぞご随意に。

 

 

「信念など欠片もない政治家」選挙特番に出演した石丸伸二氏をXで13人の“オピニオンリーダー”次々批判 意外な共通点が

 
 失言から一気に“旋風”が消滅するのか、それとも強い“岩盤支持層”に支えられるのか──。7月7日に投開票された都知事選で約165万票を獲得し、2位に食い込んだ前広島県安芸高田市前市長の石丸伸二氏(41)に批判が殺到している。評価の転換点となったのが、1本の地上波特番、1本のYouTube番組、そして1本のラジオ番組だった。
 
 ***

 放送開始順に見ていこう。日本テレビは公式YouTubeチャンネル「日テレNEWS」で午後7時50分から「【都知事選ライブ】東京都知事選デジタル特番」を配信した。担当記者が言う。

「この特番には社会学者の古市憲寿さん(39)が出演し、石丸さんとの質疑応答が注目を集めたのです。そもそも石丸さんは都知事選で『政治屋の一掃』を訴えており、その点について日本テレビの解説委員長である小栗泉さん(59)が質問しました。ところが石丸さんは明白な回答を避けたようなところがあり、古市さんが再び問いを投げかけました。しかし最後まで2人の会話は噛み合わず、時間切れで終わってしまったのです」

 このやり取りに注目したのが「取材不足」氏。「石丸伸二ウォッチャー」を自称し、YouTubeやXで石丸氏に批判的な投稿を行っている。

 取材不足氏が現代ビジネスに「都知事選に出馬表明した安芸高田市・石丸伸二市長は『恫喝裁判』『73万円踏み倒し裁判』で相次ぎ敗訴…! それでもSNSで大絶賛される若きエリートの『実像』」など複数の記事を寄稿した際は、石丸氏の支援者と思われる投稿者から批判が殺到し、炎上状態となった。

ふかわりょうの投稿
 取材不足氏は古市氏と石丸氏のやり取りを採録し、《安芸高田市で繰り返されてきた典型的な石丸マジックが日テレnewsという全国版で炸裂した。素晴らしい》とのコメントと註釈を付けた上でXに発表した。冒頭の一部だけを引用させていただく。※の部分が取材不足氏の註釈だ。

《古市「石丸さんが批判する政治屋と石丸さん自身はどう違うんですか?」
石丸「なんか堂々巡りになってる気がするんですけど、先ほど定義についてお話しましたよね」
 ※初めての質問なので堂々めぐりの要素はありません
古市「だから改めて定義を聞いてるんですけど、石丸さんの考える、批判する政治屋と、石丸さんが今自分が体現してる政治家っていうのはどう違うんですか? その定義を聞いてます」
石丸「同じ質問を今繰り返しされてます? さっき答えたばっかりですけど」
 ※石丸氏は政治屋の定義しか答えていません》

 このような押し問答が開票特番で放送されることは滅多にない。一般のネットユーザーも古市氏と石丸氏のやり取りをXなどに投稿し、あっという間に拡散した。これにお笑いタレントのふかわりょう(49)がXに「【心配】 石丸さん、サブウェイ注文できるかな」と投稿するとネット上で一気に火が付いた。
 
石丸構文の誕生
「サンドイッチのチェーン店であるサブウェイは店員さんにパンの種類やトッピングなど、細かく指示する必要があります。ふかわさんは『石丸さんのような高圧的な態度では、店員とコミュニケーションが取れるはずがない』と揶揄したわけですが、これにネット上は盛り上がって“石丸構文”という造語を作ってしまいました。古市さんとの会話を元に、石丸さんがサブウェイで注文しても噛み合わない様子がパロディ化されるなどし、石丸さんを批判する声は拡散を続けました。あまりにも反響が大きかったため、かつて『セクシー発言』などが批判された元環境相の小泉進次郎さん(43)も“小泉構文”という造語が作られ、石丸構文と小泉構文を比較する投稿も相次ぎました」(同・記者)

 TBSラジオは午後7時58分から「開票LIVE2024~カオス! 東京で何が起きていたのか」を放送。メディア評論家の荻上チキ氏(42)が「どんな点、手応えを感じた選挙だったのでしょうか?」と質問すると、いきなり石丸氏は「うん? どのくだりをされてらっしゃいます?」と逆質問した。

 その後も荻上氏と石丸氏の質疑応答は噛み合わず、荻上氏が「どんな点に手応えを感じたんでしょうか?」と再質問しても、石丸氏は冷笑を浮かべながら「手応えって言うんですかね。それ」と質問自体に対する違和感を表明し続けた。

繰り返される逆質問
 さらにライターの武田砂鉄氏(41)が石丸氏の著書『覚悟の論理』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)に《相手の問題は「どうなっても私は知りませんよ」と割り切れる》との記述を問題視し、政治家として適切な姿勢ではないとの主旨で質問を行った。

 ところが石丸氏は同じように「どこに違和感を覚えられました?」と逆質問。武田氏が説明を行っても納得しなかったのか「失礼ですが、本当に熟読されました?」と逆質問を繰り返した。

 これに武田氏は「熟読しましたね」と即答し、荻上氏も「めっちゃ付箋貼ってますね」とフォロー。石丸氏は納得したのか、武田氏の質問について「そういう風な思いでは言っていません」と否定した。

 フジテレビ系列では「Mrサンデー“七夕決戦”都知事選SP」を午後9時から放送。出演した元乃木坂46の山崎怜奈(27)が石丸氏に質問したところ、「前提のくだりが全く正しくない」、「ゼロ公約と私が今回掲げた政策、どこに共通点が?」などと厳しい口調で難詰。山崎は出演後、SNSに「あー怖かった」などと投稿した。
 
石丸氏の敵対的な姿勢
「日テレでは小栗さんと古市さん、TBSラジオでは荻上さんと武田さん、そしてフジでは山崎さんが石丸さんのインタビューを行いましたが、石丸さんは常に冷笑を浮かべたり、相手の質問に逆質問で返したり、質問の内容にこだわり、イライラする様子を隠そうともしないなど、普通の政治家ならあり得ないような態度が目立ちました。ネットユーザーからは『石丸氏はパワハラ気質』、『パワハラが常態化していた以前の上司を思い出して息苦しい』など、高圧的な態度を問題視する投稿で炎上状態となりました」(同・記者)

 ちなみにTBSもYouTubeの公式チャンネルで午後7時30分から「【LIVE】小池百合子氏が当選確実 東京都知事選2024 開票速報&“最速”データ分析・結果【選挙DIG】」の配信を開始したのだが、出演したJX通信社の米重克洋氏(35)の質問に石丸氏は「なんという愚問」と回答を拒否。自身が掲げた政策「東京一極集中の是正」についても「TBSがあんまりそう報じなかったから響かなかったのかもしれないですね」と嫌味を言うなど、一貫して敵対的な姿勢に終始した。

 こうした石丸氏の言動を問題視する投稿は拡散を続け、投開票日翌日の8日ごろから一般のネットユーザーだけでなく、著名人もXで石丸氏の言動を批判する投稿が相次いだ。

出演者を擁護し、石丸氏を批判する声
 まずは“当事者”である武田砂鉄氏の投稿が話題になった。全文をご紹介しよう。(註:改行など一部の表記を改めた。以下同)。

《昨晩のTBSラジオ開票特番での石丸氏。これまで、相手が動揺したり絶句したりする場面を意図的に作り出し、優位に立っていると思わせる構図を作り続けてきたのだろうが、受け止めるほうが動揺したり絶句したりしなければ、一瞬で彼自身の不安定さが明らかになる》

 取材不足氏の投稿を引用し、古市氏を擁護するポストをXに投稿したのはタレントのラサール石井(68)だ。

《典型的な石丸論法。これだけ見てもどんな人間かわかるじゃん。はじめて古市を応援した。いや、なんでみんな票入れた? 》

 元乃木坂46の山崎怜奈を労ったのは、元明石市長の泉房穂氏(60)だ。また泉氏はフジテレビの特番で、石丸氏が橋下徹氏(55)には丁寧に説明したことについても驚きを示した。2本の投稿をご紹介する。

《何も間違ったことを言っていないのに、「正しくない」と断定され、さぞ驚かれたと思う。それでも臆せずに「教えていただけますか」とか、「すみません不勉強で」といった受け答え、立派で誠実な対応だったと私は思う。それにしても、石丸伸二氏の対応が不思議でならない……》

《山崎怜奈さんに対する対応と、橋下徹氏に対する対応とが、大きく違っていることにも驚いた。自分を評価してくれる人と、素朴に質問をしてくる人とで対応を変えるというのはどうなんだろう。私への対応は予想外にフレンドリーだったが、ホンネはどうなんだろう……》
 
高須院長も参戦
『世界のニュースを日本人は何も知らない』(ワニブックス|Plus|新書)などの著作がある谷本真由美氏がXに《石丸氏、これじゃ人がついて来ないよ。とにかく失礼 残業拒否したり自己中な世間知らずの若い子には受けるんだろうけどねぇ…》と投稿。

 この投稿を「高須クリニック」の院長、高須克弥氏(79)が引用し、《失礼な方だと思います。これが民主主義です。失礼な人たちが支持するなら失礼な人たちの代表です。仕方ないです。》と応じた。

 毎日新聞(電子版)は7月7日、「低知名度の石丸伸二氏躍進 『国政当然考える。例えば衆院広島1区』」との記事を配信した。記者会見で今後の政治活動について質問されると、「まだ決めていない。(国政進出については)選択肢としては当然考える。例えば、衆院広島1区。岸田文雄首相の選挙区」と答えたことを伝えた。

 この毎日新聞の記事をXで引用して石丸氏を強く批判したのは、大王製紙前会長でカジノに106億8000万円をつぎ込んだ背任事件で知られる井川意高氏(58。

《信念など欠片もない政治屋 田舎の市長職を放り投げて都知事選に落ちたら衆議院選に? クソクズだな》

 石丸氏が「政治屋一掃」を掲げたことを当てこすったわけだが、怒りが収まらないのか、続けて2本の投稿を行った。

《田舎の公立から一浪して京大の経済か メガバンクに入行するもすぐに子会社にトバされて実務から外れた仕事をさせられた なんて経歴だとムダに歪んだプライドと屁理屈だけ亢進するわな ほんとうの自信がないから己の弱点や非を指摘されると素直に認めたり謝ったり出来ずムキになる あ いや 一般論ね 最近 選挙出た候補のことではないよ》

《一浪京大経済が質問者を小馬鹿にして圧かけようとするならオレがインタビュアーになってやろうかな》

逆質問の意図
 ちなみに井川氏は筑波大学附属駒場中学校・高等学校を経て東京大学法学部を卒業している。

 石丸氏の名前を明記しなかったものの、多くの読者が「石丸氏のことを言及しているのだろう」と判断したポストも拡散を続けた。まず哲学者の内田樹氏(73)の投稿をご紹介しよう。

《質問に対して質問で返すのはマウンティングの常套手段です。質問者は回答者に対して使える構文、語彙、情報を限定することができますし、自動的に「相手の回答の出来不出来を採点する」立場に立てるからです。ですから「相手より優位に立つ」ことを最優先する人間は必ず質問に対して質問で返します》

 石丸氏が逆質問を繰り返したのは先に見たとおりだ。内田氏は別のポストで《この種の「マウンティング原理主義者」から質問の答えを引き出すことは絶望的に困難なのであります。そういう人を公人にしてはなりません》とも指摘している。

 芥川賞作家の平野啓一郎氏(49)のポストにも石丸伸二氏の名前はどこにも書かれていないが、読めば石丸氏を批判していることが分かる投稿内容になっている。

《本当に賢い人って、1を聞いただけで、或いは相手が0.3位しか上手く言えなくても、10まで理解してサクサク答えるような人ではないか。コミュニケーションのコストが無駄に高い人(冷笑的、恫喝的、言葉のマイ定義に拘る、話を聞かない、嘘つき、論点ずらし、etc...)は困る。特に政治家は》
 
水道橋博士と藤井聡氏
 批判を通り越し、「呆れた」というニュアンスのポストをXに投稿したのは、お笑いタレントの水道橋博士(61)と、元内閣官房参与で京大大学院教授の藤井聡氏(55)だ。それぞれのポストを水道橋博士と藤井氏の順でご紹介しよう。

《今まで一度も見たことがなかったので都知事選で2位になった石丸氏のYouTube関連を次々と見たが……。一言感想を言えば、かつての橋下徹氏が中学生の委員長になって現在に飛来した感じ。期待して応援している識者との対談も、まるで子供と話しているようだった。それにしても政治経済以外のことはミスや間違いが多すぎて(ボクはもう認知の問題でその点ではひどいので他人の事が言えないが)恥ずかしくなった》(水道橋博士)

《都知事選で旋風を巻き起こした石丸氏 選挙中の演説を見た所イメージ戦略ばかりであまりの中身の無さに心底驚きましたが,選挙後のメディア対応を見た所質問者への礼儀や敬意が全く無く,都民はよくもまぁ何も知らないこの人物に160万票も投じたものだと心底唖然と致しました》(藤井氏)

「若者の票は離れるだろう」
 石丸構文の本質を解明しようとしたのは、映画評論家の町山智浩氏(62)だ。2本のポストをご紹介する。

《開票後の古市氏と武田氏のインタビューは「議論」の場ではなく、石丸伸二の政治的な理想や目標、信条を表明できる絶好のチャンスなのに、質問の腰を折るばかりだった理由は【1】それしかコミュニケーションの方法を知らない。【2】そもそも語るべき政治的な理想がない。のどちらかではないかと》

《石丸伸二は会話がキャッチボールだということがわかってなくて、相手が投げた球を取ろうとせず、相手が取りにくい球ばかり投げる。それで相手が取れないことを勝ちだと思ってる》

 先に紹介した谷本真由美氏の投稿を引用し、「石丸ブームは終わる」と指摘したのは作家でジャーナリストの門田隆将氏(66)だ。

《若者の票は蓮舫氏より石丸伸二氏に向かったようだか、すぐ離れるだろう。各局で見せたこの人の態度は、1期で放り出した安芸高田市長時代の態度を彷彿させる》
 
「落選インタビューで大失敗」
 都知事選に立候補した暇空茜氏もXに《石丸伸二さんがどういう人間かなんて市長時代から分かりきってたし、石丸構文も市長時代から使いまくってたし、"そんな石丸伸二がクラウドワークスとかの切り抜きでめちゃくちゃ恣意的にゴリ押しされて結果都知事選挙2位"ってのはめちゃくちゃ怖いことなんだよ》と投稿したが、門田氏はこの投稿も引用してポストを投稿している。

《イメージ戦略に乗って165万もの票を石丸伸二氏に投じた都民。安芸高田でもくり返した質問者をネチネチ締め上げる屁理屈は早くも“石丸構文”と名づけられた。この人が“どういう人間か市長時代から分りきってたし、石丸構文も市長時代から使いまくってた。そんな人が都知事選2位。めちゃくちゃ怖いこと”に頷く。民主主義の欠陥を突かれた都知事選だった》

 インタビューの受け答えだけで一気に世論が変わってしまったと指摘したのは作家の百田尚樹氏(68)だ。

《今回の都知事選、当選者は小池氏だが、最も大きなポイントを稼いだのは石丸氏かもしれない。市長辞任から都知事選立候補さらに選挙戦術において、最高の展開を演じた。しかし、最後の最後、各テレビ局との落選インタビューで大失敗した。まさに、九仞の功を一簣に虧く。本人、わかってるかなあ》

“保守派”も“リベラル派”も……
 最後に最新の動向を見ておこう。東京新聞(電子版)は7月8日、「石丸伸二氏、選挙ポスター代『未払い』で敗訴確定 最高裁が上告受理せず 広島・安芸高田市長選で業者へ依頼」との記事を配信した。立憲民主党の衆議院議員、米山隆一氏(56)は記事を引用し、以下のようにXに投稿した。

《裁判で争うこと自体は否定されませんが、この手の商取引の支払い訴訟で、一審二審で負けたのに最高裁までもっていくのはただ単に意地になって相手に嫌がらせをしているだけ。ネット広報の波に乗った手腕は認めますが、行政トップにしていい人とは到底思えません》

 ここでXに投稿を行った武田砂鉄氏、ラサール石井、泉房穂氏、高須克弥氏、井川意高氏、内田樹氏、平野啓一郎氏、水道橋博士、藤井聡氏、町山智浩氏、門田隆将氏、百田尚樹氏、米山隆一氏──13人の平均年齢を計算してみると、66・6歳となる。

 最年少は武田砂鉄氏の41歳。武田氏は1982年10月、石丸氏は同年8月の生まれだ。他の12人は全員が石丸氏より年上になる。

「石丸さんの熱心な支援者なら、まさに“出る杭は打たれる”的に高齢者が若い石丸さんを批判しているように見えるかもしれません。しかし、これだけ“オピニオンリーダー”として錚々たるメンバーが揃って批判したのですから、“老害”として片付けるわけにはいかないでしょう。むしろ注目すべきは論客として保守的な人も、リベラルを志向する人も、そして革新的な意見を持っている人も、それぞれの思想的な立脚点や人生経験から石丸氏を批判しているということではないでしょうか。こうなると年齢は別の意味を持ちそうです。要するに41歳の石丸氏と同世代か、それより若い層は支持しても、人生経験の豊富な50代、60代は石丸氏の問題点が見えているということだと思います。実際、Xなどでは『ベンチャーとかコンサルにあんな感じの中堅社員いるけど苦手』とか、『若手には人気があっても、仕事のできるベテランには評価されないタイプ』という投稿が散見されるのです」(同・記者)

デイリー新潮編集部

新潮社
 
 

「都知事選で2位」の石丸伸二氏が出馬した「本当の理由」…安芸高田市長時代に残していた「4つのフェイク」

渡瀬 裕哉(国際政治アナリスト・早稲田大学招聘研究員)

 

東京都知事選で得票数2位という大きな爪痕を残した石丸伸二氏。ついこの間まで広島県安芸高田市長を務めていた若き候補者の躍進を、讃える声は少なくない。

では、そもそも彼は中国地方の自治体の長として何を成し遂げたのか。なぜ市長職を投げ出してまで都知事選に出馬しなければならなかったのか。

安芸高田市民は石丸イズムを否定
石丸伸二氏が東京都知事選挙で落選した陰で、広島県の安芸高田市では小さな政治劇場の幕が下りた。

石丸伸二前市長の退任に伴う市長選挙で、石丸市政の「継続と改善」を訴えた熊高昌三氏が、「石丸市政の在り方」の見直しを主張した藤本悦志氏に敗れたのだ。

小さな市を舞台にした切り抜き動画による炎上政治は、住民の手によって否定された。市長選の開票が終わった7月7日夜現在、安芸高田市民に対する石丸支持者の罵声がSNSには溢れている。
しかし今後、安芸高田市民は動画で踊らされた同市とはほぼ無関係の人々による侮辱の日々から解放されることになるだろう。

そもそも石丸氏が安芸高田市を捨て、都知事選に転出した背景には何があるのか。

もちろん同市長選挙に再立候補して負ける可能性も十分にあった。

しかし、それ以上に、仮に再選できたとしても彼の実績が虚構であったことがバレてしまうことが問題だったのではないか(石丸氏は都知事選への立候補に際して別の理由を述べていたが、政治屋が新たな選挙に立候補する際に適当を述べるのはいつも通りのことに過ぎない)。

実は財政改革に成功していない
石丸氏の安芸高田市政の主な実績は、財政改革やふるさと納税額の増加とされている。

しかし、実際の石丸市政は財政改革にほぼ成功していない。また、ふるさと納税の伸び率も全国と比べて著しく高かったわけではなく、彼のYouTuber芸による一過性のものに過ぎない。

そのため、その実態が明らかになってしまえば、彼の求心力が失われることは自明だった。それがこのタイミングでの出馬を模索した背景の一つであることは疑う余地がない。

 

石丸氏は「市長就任以前の5年間は市の財政は実質単年度収支が赤字であった。それを黒字に立て直した」と主張してきた。実質単年度収支とは、前年度の決算からの変動額を表すものだ。この数字が赤字だと財政が前年度よりも悪化したと言える。

たしかに、公表済みの市の決算書によると、石丸市長就任前の予算が執行された5年間、2016年度から20年度決算まで実質単年度赤字であり、石丸市政開始後の21年度には実質単年度収支は黒字に転じている。

しかし、黒字化した2021年度はコロナ禍による特殊要因があり、国からの地方自治体への巨額の財政支援措置があった。ただし、これは一時的な措置なので、22年度決算では当然のように安芸高田市は再び赤字に転落している。

 

そして、広島県内で安芸高田市と同規模人口の庄原市や大竹市もほぼ同様の数字の変化を辿っていることからも、実質単年度収支の黒字化は石丸市政の成果ではなく、単なる外部要因による一過性の出来事だったに過ぎない。

実績はすべて外部要因だった
さらに、石丸氏が自らの成果として主張した公共施設等総合管理計画及び個別施設計画(ハコモノの整理計画)は、総務省がもともと2014年度から16年度の間に主導し、20年度末に99.9%の地方自治体が同計画を策定したものだ。

しかし、それらの計画の進捗は首尾良く進まなかったため、総務省が21年度にアドバイザー等を活用するための特別交付税措置(財政支援)を改めて実施し、各地方自治体に見直し計画を改めて作らせることになっていた。

偶然、石丸氏はその年度、金銭スキャンダルで辞任した前任市長に代わって就任したに過ぎない。したがって、国主導の計画づくりであり、市長を誰がやっても同じ計画が当然に出来上がったと言えるだろう。

そして、以前の計画が遅延したように、この計画の本当に困難な点は、計画を作ることではなく、計画をやり切ることだ。

そのためには、市民・市議会との調整が重要となる。議会で対立を生む石丸氏のやり方ではほぼ不可能なことは明らかだった。だから、昨年末に計画を作っただけで、その実行段階では急いで市政から“退場”する必要があったのだ。

そして、財政改革のフェイクの真骨頂は「経常収支比率」である。経常収支比率は予算全体のうち何%があらかじめ使途が決まっているか、という財政の自由度を測る指標だ。この指標は安芸高田のような過疎自治体では95%を超えていることが多い。数値が低いほど自由度は高いと言える。

バラマキという“爆弾”を残して去った
実際、安芸高田市の経常収支比率は2016年度に94.4%となり、19年度に98.2%の財政悪化のピークを迎えた。

ところが、2020年度は92.5%、21年度は88.6%、22年度は94.4%となったことで、21年度の石丸市長就任年前後に改善したように見える。

しかし、2020年度からの数字の低下にはやはり特殊要因が重なっている。20~22年度は、過去の市職員の退職金積立が過剰であったために退職金引当金に対する拠出が低下したこと及び、21年度はコロナ関連の国からの支援等があったことが大きかった。

そのため、それらの要因が剥落した今年秋口に公表される2023年度決算では96%前後に再び上昇してしまう見込みとなっている(23年度決算の悪化は石丸氏が財政説明会で、自ら述べていた数字だ)

 

さらに、石丸市政最後の予算編成である2024年度予算では、給食費無償化が実行されることに伴い、市の貯金にあたる財政調整基金が億円単位で取り崩されている。

筆者が見る限り、給食費無償化費用は過重であり、持続可能性が極めて疑わしいバラマキ政策となっている。

安芸高田市の新市長に選ばれた藤本氏は、石丸氏が残した財政改革の失敗と向き合い、新たなバラマキとの折り合いをどのようにつけるのか。頭を悩ませることになるだろう。

もし石丸氏が都知事選挙に転出せずに安芸高田市長を継続していた場合、彼は自らの財政改革の失敗に向き合わざるを得なくなっていたはずだ。切り抜き動画でいくら煽ったところで、数字は嘘をつけない。民間企業でも同様だ。広報・PRが上手な企業でも財務状況の悪化を長期間に渡って誤魔化し続けることは難しい。

したがって、石丸氏にとってはこのタイミングで安芸高田市政に関する責任を放棄することは必須だったと言えよう。

そのための渡りに船が都知事選であり、彼が取った行動は、自らが定義してみせた「政治のために政治をする、自分第一」の”政治屋”であった。そして、冒頭に取り上げた通り、安芸高田市民はそのような石丸市政の継続を粛々と拒否したのだ。

従来政治への不満の表れ
しかし、今回の都知事選の大きな問題は、このような不誠実な人物であったとしても、都知事選で第2位の得票ができてしまうほどに「現在の政治に対する不満」が溜まっていることだろう。

実際、彼の公約は財源の裏付けもなく、大学生が数時間で作れる程度の項目とキャッチフレーズのみで詳細を論じるに値しないものであり、政策の具体的な理解が都民に拡まることすらなかった。

そのため、石丸氏の得票は同氏に対する支持の結晶というよりも、しょうもない話題で右往左往する従来の政治屋に対する不満が爆発したと捉えるべきだ。既存の政治関係者も大いに反省するべきだろう。

 

石丸氏の切り抜き動画を通じたフィクションの政治は、民主主義の学校であり、生活に直結する地方自治の現場を破壊した。もちろん、市議会議員にはマトモな人からふざけた人まで、さまざま存在する。それは事実だ。

しかし、そのような現実を踏まえた上で、政治を変えるには地道な努力が必要なのだ。SNSを使って議会で政敵を吊るし上げるエンタメでは何も変わらない。

政治や行政の関係者には、石丸氏が安芸高田市で見せたような茶番政治が拡がらないように、住民から一層の信頼が得られる積極的な情報発信、及び情報公開などを推し進めてほしい。