何回でも記事にしたい今日一番感動した記事。闘い抜いた女性は輝いている。権力を傘に押しつぶそうとした山口敬之を相手に「負けない、屈しない」凜とした姿勢で向かい合った女性。素晴らしい、本当に素晴らしい!
素晴らしい方!女性の鏡のような方!私達に大きな勇気を与えてくださった!
「Open the Black Box」の5年間の活動の中で寄せられた寄付の中から、裁判費用や経費などを差し引き、約200万円が残る見込みだという。伊藤さんは、そこに山口氏から支払われた約332万円の損害賠償を加えた額を「KnoCs」などの団体に寄付する意向を明らかにした。「今回、たくさんの支援金が集まったのと、裁判で勝ち取った賠償金は何かにつながると思う。これからの支援につなげていただければ」と語った。
「本当に長かったな……」
ジャーナリストの伊藤詩織さん(35)は9日夜、都内で開いた報告会で、約6年半にわたる自身の裁判の記録を聞いた後、かみしめるようにこう語った。
2015年4月、伊藤さんは、就職相談のため当時TBSのワシントン支局長だった山口敬之氏と東京都内で食事をした。その際、酒に酔って意識を失い、望まない性行為を強要されたとして、17年9月に民事訴訟を提起した。山口氏は「(伊藤氏が)誘ってきた」と反論したが22年7月、最高裁は山口氏の上告を退けた。山口氏が同意なく性行為に及んだとして、約332万円の賠償を命じた高裁判決が確定した。
山口氏への裁判に加え、伊藤さんは20年、SNSでの自身への誹謗中傷に対して賛同を意味する「いいね」ボタンを押した自民党の杉田水脈氏らに対し、損害賠償を求める訴えを起こした。今年2月、杉田氏に対する裁判で最高裁決定により控訴審判決が確定したことで、すべての裁判が終了した。この日は、合わせて4件の民事裁判に関する報告会となった。
被害にあったとき伊藤さんは25歳だった。ジャーナリストを目指していた伊藤さんはやりたいことがたくさんあったが、事件がすべてを壊した。
それでも裁判を起こしたのは、「助けて」と言いやすい社会を広げていきたかったからだ。
伊藤さんはこう言った。
「私個人ではなく、社会の中にあるブラックボックスに対して、司法で問いかけてみようという一連の行動ができたことはほんとに夢のように思っています」
そしてそこには、いつも支えてくれる弁護士や仲間たちがいた。
「裁判がある時に一緒に裁判所に行ってくれたり、お手紙をいただいたり、みなさま一人一人のサポート、そして応援してくださる方々がいなかったらできなかったです」(伊藤さん)
性被害を実名で告発した伊藤さんの勇気ある行動は、性被害を受けても泣き寝入りしないという「#MeToo」運動のうねりを、日本社会にも巻き起こした。
この日、登壇した伊藤さんの代理人を務めた西廣陽子弁護士は、こう言った。
「うねりの根底には、性被害に遭われた方々の嘆きがあったと思います。嘆きというのは、諦めきれないからこそ出てきたものです。その嘆きが怒りに変わり、日本における#MeTooに変わっていったと、いま感じています」
一方、伊藤さんは四つの民事裁判で勝訴したが、そのうち2件は損害賠償が支払われていないという。伊藤さんはこう言った。
「こうした司法の穴があって、私たちが生きている社会の中で、ジャスティスを勝ち取るのは本当に大きな問題だと思います」
裁判には多額の費用がかかる。性被害に遭った時、1人に背負わせないためにはどうすればいいか考えることも必要だと訴えた。
いまジャーナリストとして活動している伊藤さんは、自身の性被害の調査に乗り出していく姿を自ら記録したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」を制作。映画は、1月に米国で開かれたインディペンデント(独立)映画の祭典「サンダンス映画祭」の国際長編ドキュメンタリーコンペティション部門に出品された。同映画祭は、インディペンデント系の映画祭では世界で最も権威があり、同部門での出品は日本の監督作品で史上2作目だ。個人として性暴力サバイバー側の視点も入れたという映画について、伊藤さんはこう思いを語った。
「私が経験した裁判、そして事件のその後をドキュメンタリーとして形にしたので、みなさまに届けたいというのが今の一番の願いです」
(編集部・野村昌二)
※AERAオンライン限定記事
伊藤詩織さんが性的暴行、SNS誹謗中傷裁判終了し報告会 寄付金と賠償金は被害者支援団体に
伊藤さんは、米国の大学に在籍した13年12月に山口氏と知り合い、同氏が15年4月3日に帰国して会食した際、意識を失いホテルで暴行を受けたと主張。準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出した。一方、山口氏は合意に基づく性行為だと反論し、東京地検は16年7月に嫌疑不十分で不起訴とした。翌17年5月に伊藤さんは不起訴不当を訴えたが、東京第6検察審査会も同9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当と議決した。
伊藤さんは同年9月に山口氏を相手に民事裁判を起こし、19年の東京地裁での1審は勝訴。山口氏の控訴を受けた22年1月の控訴審でも勝訴した一方、山口氏の反訴も一部、認容された。双方が上告して迎えた22年7月の上告審で、最高裁は双方の上告を棄却。山口氏に約332万円の賠償を命じた一方、伊藤さんの17年の著書「Black Box」などでデートレイプドラッグを使われた可能性があるとされ名誉を傷つけられたとして、1億3000万円の損害賠償を求めた山口氏の反訴について、真実性が認められず名誉毀損(きそん)に当たると判断し、伊藤さんにも55万円の支払いを命じた。
伊藤さんは「私個人ではなく、社会にあるブラックボックスに問いかけようという行動ができたことが夢のよう。サポートがなければできなかった」と出席者の前で感謝した。民事裁判を支えるために19年に発足した会「Open the Black Box」は、後継団体として発足する「KnoCs(ノックス)」に引き継がれ、今後は性暴力被害者に民事裁判裁判支援のための、関連情報の提供、啓発、支援を行い、性暴力のない社会作りを目指して活動していくという。
「Open the Black Box」の5年間の活動の中で寄せられた寄付の中から、裁判費用や経費などを差し引き、約200万円が残る見込みだという。伊藤さんは、そこに山口氏から支払われた約332万円の損害賠償を加えた額を「KnoCs」などの団体に寄付する意向を明らかにした。「今回、たくさんの支援金が集まったのと、裁判で勝ち取った賠償金は何かにつながると思う。これからの支援につなげていただければ」と語った。