「資金管理団体や選挙運動費用の収支は別口座で管理し、入出金の相手や目的を明確にすることが前提だ。同じ口座で管理すること自体が大問題で、法令順守する気がないと言われてもおかしくない。形式ミスだったとも考えにくく、経緯を説明すべきだ」

 

 

 長崎県の大石賢吾知事(42)の後援会の収支報告書に虚偽の記入がなされた疑いが関係者への取材で判明した。収支報告書では大石氏が後援会に2000万円を貸し付けたことになっていたが、実際には後援会側に渡った形跡はなかった。大石氏の代理人弁護士は「形式的ミスで対応を検討する」としている。

 大石氏は2022年2月20日投開票の県知事選で自民党県連と日本維新の会から推薦を受けて初当選した。関係者によると、後援会と知事選の選挙費用は本来、別々の口座で管理すべきものだが、大石氏側は後援会の銀行口座で一元管理し、収支が混在した状態だったという。ある後援会関係者は毎日新聞の取材に「ずさんな資金管理で、収支報告も後付けで記載した部分が多かった」と証言した。

 

 大石氏の知事選の選挙運動費用収支報告書によると、大石氏は22年1月5日に「自己資金」として2000万円を拠出したと記載されていた。原資となったのは、現役医師だった大石氏が長崎県医師信用組合から「選挙活動費」として同14日に借り入れた同額の2000万円だったとみられ、これについては同日、全額を入金した記録が後援会の銀行口座に残っていた。うち約1800万円が知事選関連で使われていた。
 これとは別に、大石氏の資金管理団体「大石けんご後援会」(長崎市)の22年分の政治資金収支報告書には、同12日付で大石氏個人と金銭消費貸借契約を結んだとし、「借入金」2000万円との記載があった。

 だが、毎日新聞が後援会の銀行口座の入出金記録を入手して関係者に確認したところ、この借入金が入金された形跡はなかった。

 大石氏の代理人弁護士は毎日新聞の質問状に対し「2000万円が2回入金されたことはなく、形式的ミスの二重計上だった。どう訂正すべきか検討している。二重計上の経緯は今は申し上げられない」と回答し、大石氏の関与の有無などについては明らかにしなかった。

 大石氏と後援会の金銭消費貸借契約は利息を付けて返済する内容で、後援会は24年3月までに一部となる約650万円を大石氏に返済していたという。後援会関係者の一人は「大石氏が信用組合から借りた2000万円を後援会から返済しようと考え、後付けで収支報告したため、二重計上になった」と証言した。

 神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「資金管理団体や選挙運動費用の収支は別口座で管理し、入出金の相手や目的を明確にすることが前提だ。同じ口座で管理すること自体が大問題で、法令順守する気がないと言われてもおかしくない。形式ミスだったとも考えにくく、経緯を説明すべきだ」と話す。【志村一也、松本美緒、川島一起】

 

 

県政を襲ったトラブルと検察が狙う「さらに大きな問題」 大石賢吾知事を刑事告発、政界に走る緊張感…〝震源〟は長崎県に

 
 
最近、地方政界の騒動で永田町に緊張感が走っている。

〝震源〟は長崎県だ。2022年の県知事選で、わずか541票差の接戦で現職をかわして初当選した大石賢吾知事が、公職選挙法違反容疑で検察などに刑事告発されるトラブルが起きている。22年の知事選はこの大石氏と、現職(当時)への支持で自民党が割れる分裂選挙となり、禍根を残している。

前出の刑事告発は、大石氏や陣営の出納責任者、東京が拠点の選挙コンサルタントらが買収に関与したとの指摘で、関係者が事情聴取されたとの情報がある。検察は「さらに大きな問題」にも関心を示しているとの憶測もある。

大石氏は先月24日の県議会で、知事選が行われた22年の自身の後援会の政治資金収支報告書の内容を一部訂正する意向を示していた。

この収支報告書によれば、大石氏は22年2月、選対幹部の自民党県議の後援会から286万円を借り入れ、同年12月に利息分7万3106円を加えて返金している。


助言したのは、前述の選挙コンサルタントとされるが、この借り入れについて「政治倫理上の問題」を指摘され、大石氏は「寄付」に訂正する意向を示していた。ところが28日に突然、「私の承諾なく、多額の出金があった」と不正経理の疑惑を明かし、当時の監査業務担当者に資金が渡った可能性を示唆して、さらなる調査を表明したのだ。