核兵器禁止条約が2017年7月7日に国連会議で採択されてから7年を迎えました。21年1月22日には同条約が発効し、実効力と規範力を高めるなか、唯一の戦争被爆国である日本は米国の「核の傘」のもとで署名も批准もしていません。日本政府に同条約への参加を求める地方議会の意見書(趣旨採択を含む)が683に達し、全1788議会の38%を超えたことが、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)の調べで7日までにわかりました。

 6月26日に全会一致で可決した兵庫県丹波市の意見書は「核兵器禁止条約の規範力を強化し、核兵器の使用を防ぐことが強く求められています」と強調。ロシアのプーチン大統領による核兵器使用の脅迫は「核兵器禁止条約に明確に違反する」と批判し「いまこそ広島、長崎の原爆被害を体験した日本の政府は、核兵器の使用を許さず、核兵器を全面的に禁止させる先頭に立たねばなりません。その証として、核兵器禁止条約に参加・調印・批准することを強く求めます」と訴えています。

 6月24日に可決した静岡県小山町(おやまちょう)の意見書は「核兵器のない世界を望む国内外の広範な世論に応えて、唯一の戦争被爆国である日本は、積極的な役割を果たす必要がある」として、核兵器禁止条約に早急に署名し、批准することを強く求めています。

 意見書は核兵器禁止条約の採択以降のもので、岩手、長野、三重、沖縄の4県議会が可決し、鳥取県議会が陳情を趣旨採択。区市町村議会は32の趣旨採択を含めて1区295市306町76村となっています。

 岩手県は県議会と全33市町村議会で可決。県・市町村議会を合わせて7割を超えたのは秋田、新潟、長野、鳥取、岡山、広島、徳島の7県です。

 

主張
在日米軍機の強化

「軍事対軍事」の緊張高めるな

 

 米国防総省が、日本に配備している米軍戦闘機の近代化計画を明らかにしました。今後数年間をかけて、100億ドル(約1兆6千億円)超を投じ、在日米軍の航空基地に最新鋭の戦闘機を配備するなどします。中国や北朝鮮などを念頭に「日米同盟と地域の抑止力を強化する」ためだとしています。しかし、これは、北東アジア地域の緊張をいっそう高め、「軍事対軍事」の危険な悪循環をさらに加速させるものです。

 米国防総省が3日に発表した在日米軍の戦闘機近代化計画は、▽青森県の米空軍三沢基地(三沢市)▽沖縄県の米空軍嘉手納基地(嘉手納町、北谷町、沖縄市)▽山口県の米海兵隊岩国基地(岩国市)―の3基地が対象です。

■核搭載可能な機も
 三沢基地では、現在配備している36機のF16戦闘機を、48機のF35A戦闘機に切り替えます。米空軍のF35Aは三沢初配備で、F16にはない、レーダーに捕捉されにくいステルス性能を持ち、「兵器搭載量や戦闘能力が大幅に向上」するとしています。F16同様、核爆弾も搭載できます。

 米国の核問題専門家のハンス・クリステンセン氏らの論文によると、米国は、戦闘機搭載用の核爆弾を約200発保有しており、うち100発を欧州に配備し、残りは米本土に貯蔵しています。米本土にある100発は「北東アジアを含むヨーロッパ以外の同盟国を支援する米戦闘機による潜在的な使用に備えている」としています。

 この核爆弾は今後数年をかけ、最大で50キロトンの威力(広島に投下された原爆の約3倍)を持つ最新型に更新されます。(以上、米科学誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』電子版「米国の核兵器2024」)

 F35Aはこの最新型を搭載でき、F16が撤退しても核持ち込みの危険はなくなりません。

 嘉手納基地では、退役する旧型のF15戦闘機48機に代わり、能力を向上させたF15EX戦闘機36機を配備します。

 すでに旧型機の撤退が段階的に始まっており、その穴埋めとして、米本土の基地などから最新鋭のステルス戦闘機F22Aなどが交代で配備され、基地周辺の騒音被害が激化しています。沖縄の地元紙は、F15EXも騒音レベルが増大する危険を指摘しています。(琉球新報3日付)

 岩国基地では、米海兵隊のF35B戦闘機(短距離離陸・垂直着陸型)の配備機数を「修正」するとしています。南西地域の離島などに部隊を分散展開し、周辺海域の中国軍の艦船などを攻撃する米海兵隊の「遠征前進基地作戦」を支援するのに最適な態勢にするのが狙いです。

■際限ない軍拡競争
 今回の計画について、米国防総省は「日本政府と緊密に連携」したと強調しています。林芳正官房長官は4日の記者会見で「日米同盟の抑止力・対処力はさらに強化される」と手放しで評価しました。

 しかし、「抑止力の強化」を理由に軍事力を強化すれば、相手も対抗策に乗り出し、際限のない軍拡競争を招くことになります。そうした危険な計画は中止させるべきです。

 

 

<社説>核のごみ処分場 適地選定の信頼揺らぐ

 
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村での「文献調査」は4日、経済産業省の作業部会による審議が終了した。特定放射性廃棄物小委員会の承認を経て来月にも完了する。深刻な課題を評価しないまま、次の段階の「概要調査」に先送りする見通しで、適地選定のあり方、信頼性への疑問は深まる。

 原発で使用済みになった核燃料から、燃料として再利用できるプルトニウムなどを取り出した後の残りかすが核のごみ。ガラス状に固めて地下300メートルより深い安定した地層に埋設することが法律で決まっている。放射線量が人体に安全とされるレベルに下がるまでには10万年かかるとされており、厳重な管理が必要になる。
 
 調査は、既存の論文やデータを精査する「文献調査」、地面を掘って地層を調べる「概要調査」、地下に施設を造って検討する「精密調査」の3段階。処分の実施主体・原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年から調査対象となる自治体を募ってきたが、文献調査受け入れだけで交付金最大20億円の条件にもかかわらず、応募はなく、やっと20年11月に寿都、神恵内両町村が、全国で初めて文献調査に応じた。その後、佐賀県玄海町も受け入れた。
 NUMOはこの2月、「文献調査」で火山や活断層などに関する延べ1500点の資料を分析した結果として報告書案を公表。寿都町の全域と神恵内村の南端の一部を、概要調査に進む候補地とし、作業部会の審査にかけた。

 ただ、この候補地には、処分場立地の適否を示す国の「科学的特性マップ」が「好ましくない」としたエリアが含まれ、審議過程でも活断層や火山活動の恐れなど、危険性が指摘されたが、経産省とNUMOは「概要調査以降に検討する」とし、小委員会も承認の見通しだ。特性マップは、玄海町もほぼ全域を「好ましくない」としており、やはり調査対象にすることとの整合性を欠く。適地選定の真摯(しんし)さが疑われる。

 そもそも、核のごみの最終的な行き場が決まらないまま、原発の「最大限活用」を掲げる政府方針に無理がある。それに沿い、調査の「実績」を積み上げようとしているだけなら費用の無駄遣いだ。そして、その原資は、私たちが支払う電気料金である。