詐欺や悪徳商法と同じ手口。統一教会の元信者が間近で見た、教団による「周りに相談させない状況」の作り方

 
 
元信者が激白。「不起訴合意」の念書は、旧統一教会「口止め手法」の延長とみる理由
1.判断基準を不当に変容させる要素「正体隠し」「助言の遮断」「不当なつけ込み」の提言
旧統一教会の被害者への返金がいまだに、なされない状況です。それどころか、信者らには、430代の先祖解怨をすることが求められています。もちろん、これには多額のお金が必要で、今回の第八次集団交渉に参加している宗教2世らのように、家族被害が深刻な状況です。

何より、これはこれまで外部に向けられてきた霊感商法が、内部(教義を信じ切った人たち)に向けて行われているといえます。

すでに多くの献金をして疲弊している信者らも多く、より困窮状態になることはみえています。もうこれ以上、被害者も被害者家族も信者も苦しめないでほしいと願う気持ちですが、この状況は続く恐れがあります。本来ならば、不当寄附勧誘防止法などによって規制してほしいところですが、畏怖困惑して行った寄付行為が罰則の対象ゆえに、十分な救済ができない形になっています。
 
この状況を踏まえて、昨年、日弁連の霊感商法に関するワーキンググループは「霊感商法等の悪質商法により個人の意思決定の自由が阻害される被害に関する実効的な救済及び予防のための立法措置を求める意見書」を出しています。

そのなかで「判断基準を不当に変容させる要素」として、これまでの裁判における事実認定から「正体隠し」「助言の遮断」「不当なつけ込み」をあげており、不当寄附勧誘防止法の2年後見直し及び、消費者契約法にそれらの禁止を設けるよう提言しています。
 
2.不起訴合意の念書は、旧統一教会の口止め手法の延長とみる理由
この3つの要素はどれも、被害防止のための重要な指摘とみていますが、今回は「助言の遮断」について話をしたいと思います。

全国統一教会被害対策弁護団の司法記者クラブで川井康雄弁護士は「助言の機会を奪うことの禁止」について次のように話します。

「教義を教え込まれるビデオセンターでの受講や修練会などへの参加、共同生活をする際には、家族や友人にこのことを口外しないように言われている事例がほとんどです。口止めがなく、家族や友人に相談をしていれば、疑問を差し挟む余地が生まれていたはずです」

この意図的な「口止め」は教団内部では絶えず行われていたことで、積善陰徳(良いことは黙ってやるべき)「好事魔多し」(良いことには魔が入るので、誰にも相談しないように)などと話して、周りに相談させない状況を作ります。私自身も信者時代、これが教義の教え込みをするうえでは重要なファクターであったことを間近で見て実感しています。
 
詐欺や悪質商法の世界を取材してきても、状況は同じです。自らの行った強引な契約行為や悪事が露見しないようにするため、また被害者の泣き寝入りを誘うために、悪質業者は誰かに相談するなどの口止め工作をしますが、それと同じです。

今回、多くの人が注目している裁判・裁判外での返金をしないことに合意させる念書もまた、教団が組織ぐるみで行った、口止めの行為の一つだと考えています。念書の有効性をこれまで裁判で認める判決もありましたが、これが公序良俗に反して無効となれば、旧統一教会が組織的に行ってきた行為の悪質性が、世に問われることになります。
 
3.「高齢者ケア状況調査表」が示される。ここから読み解けることは?
6月14日に開かれた立憲民主党による旧統一教会問題のヒアリングのなかで、鈴木エイト氏は旧統一教会本部の内部文書として「高齢者ケア状況調査表」も明らかにしています。
 
ここには「教区名・教会・氏名・年齢・生年月日・入会日・祝福双・霊の親・貢献度(単位万円)」の項目があり、さらに「現状と課題・家族・親族の構成及びUCへの姿勢・今後の対応・担当者名・遺言・昇華式などについての希望」といったものもあります。教区や教会名を記載させる項目があるところから、教団の上層部にあげるものと見てよいと思います。つまり、こうしたものを各教会で書いて調査するように指示したものと考えられます。

例として「統一花子」(氏名)「83(歳)」(年齢)があり、「現状と課題」には「通教しているが、認知症の初期段階」、「家族・親族の構成及びUCへの姿勢」には「子供と同居、子供は通教の事実知らない」とあり、「今後の対応」として「念書や感想文を取る努力する」となっています。

次の「天宙善男・85歳」には、「最近出会い、教育中」(現状と課題)、「一人暮らし、子供は通教の事実知らない」(家族・親族の構成及びUCへの姿勢)、「喜んで学んでいる記録映像で残す」(今後の対応)となっています。
 
例とはありますが、状況調査における重要なポイントを示していることは間違いありません。「認知症の初期段階」の記載がありますので、教団側は、高齢者のその部分のチェックは余念なく行われていたと考えられます。相手の認知症の具合を十分に熟知しての献金への勧誘行為をしていた疑いもあり、その辺りの実態解明も今後、必要なのではないかと思います。

ここには「念書や感想文を取る努力する」「喜んで学んでいる記録映像で残す」という言葉もありますが、これらは神様の側からの指示であるので、末端の信者はしなければならない事項です。

実際に、全国で裁判・裁判外で旧統一教会への返金を求めない(不起訴合意)とする念書を取られた方は多く、しかも念書への同意をビデオで撮られた方もいますので、その指示は全国で徹底されていたことがうかがえます