旧ジャニーズ性加害問題で問われる東山社長「解決への本気度」…国連は「救済措置が不十分」と指摘

 
 
スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた国連人権理事会の「ビジネスと人権」に関する作業部会が26日、旧ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)の性加害問題などを含む、日本の人権問題についての調査結果を報告した。報告では創業者であるジャニー喜多川氏による性加害問題について「性加害を受けた数百人もの元タレントらへの救済措置が不十分だ」と指摘した。

これを受け、スマイルアップの東山紀之社長(57)は「指摘事項を真摯に受け止め、改善や徹底に誠心誠意努めてまいります」とのコメントを発表。スマイル社の「救済措置」について、作業部会は被害者らへのアクセスの欠如があり、緊急に対応する必要があるなどとした。
 
作業部会はまた、スマイル社が被害者に弁護士費用を自己負担させていることを「容認しがたい」としたが、東山社長は「被害者救済委員会においては、弁護士によるサポートを受けるために要する費用を含む諸般の費用も考慮した上で補償額を評価している」と反論コメントを出した。
報告書は5月に公表されており、スマイル社に対し「被害者の救済に向けた道のりは長い」「依然として深い憂慮が残る」といった内容が明らかになっていた。それもあり、対応する時間は十分にあったのだろう。

「被害者たちが完全に救済されるまでスマイル社の責任と業務は終わらない」
同社HPには、《被害補償の進捗状況について》として、こう続けている。

《被害補償の申告者数合計996名のうち、被害者救済委員会が補償額を通知した方の人数は合計499名になります。被害者救済委員会又は弊社の代理人弁護士からの連絡に対してご返信をいただけていないためにお手続を進めることができていない207名の方を除くと、被害補償の申告者996名のうち、いまだお手続中の方は145名となっております》

補償額の算定基準もブラックボックスで、さらに交渉内容も口外しないよう通達し、不満を持つ被害者は少なくない。にもかかわらず、補償手続きが進んでいることで、この問題への取り組みは順調で、しかもすでに峠は越えたとの認識がスマイル社の言い分からは透ける。

「スマイル社は被害者補償に特化し、それが完了したときに廃業するとしていたのが、一般社団法人『マインドフル』を設立するなど別の方向に動き出しています。ジャニー氏の姪で、ジャニーズ事務所を引き継いだ藤島ジュリー景子氏は『社員』として名を連ねた。この『社員』とは株式会社の株主みたいなもので、今後もジュリー氏が牛耳っていく体制が続いていくということではないか」(某芸能プロ社長)

藤島氏は昨年、経営への関与をやめ、すべての関連会社の代表の座からも降りるとしたが、先日までうち3社の会長職にとどまっていた。それが批判されて、近く退任すると発表したが、報道も批判もなければ、いまもその座に居座りたいのが本音ではないか。作家で「当事者の会」元代表の平本淳也氏は社団法人設立に関し、こう言った。
 
「『マインドフル』は解散するスマイル社の意思を継ぐ組織と言っていいでしょう。性犯罪被害者の支援環境の整備への取り組み、社会貢献への姿勢も、そのうたい文句通りであるのであれば、歓迎すべきものと思います。しかしながら、性暴力に加えて精神疾患や誹謗中傷にも苦しんでいる被害者たちが完全に救済されるまでスマイルアップの責任と業務は終わりません」

現在も補償対応をめぐって、不満を募らせている被害者が少なくない。

《1人たりとも被害者を漏らすことなく、ケアしていきたいと思っております》

そんな声明文を発表したジュリー氏は現在、どう思っているのだろうか。

理事会の会合後のイベントで、被害者の一人、元ジャニーズJrの二本樹顕理氏はこう訴えた。

「多くの被害者が性的暴行や誹謗中傷で今も苦しんでいます。子どもたちは、未来の希望であり、子どもたちから性的搾取をするということは人権侵害なんだという意識が芽生えてほしい」

多くの賛同と拍手が送られたのも当然だろう。東山社長の予定調和コメントへの反響とは対照的である。

 

東山紀之社長 国連の報告書にコメント「一定のご理解をいただいたものと受け止めております」

 
記者会見を開いて現状を報告し、報告するのが義務ではないか。人権蹂躙の最たる重大な日本国内だけの犯罪ではとどまらない事件である。犯罪者はこの世に存在しないが、その会社を名称が変わったとしても責任は受け継いでいるはずである。逃げる姿勢では許されない。そして一番気になる事はテレビで又ゾロゾロと旧ジャニーズ事務所のタレントが画面に映し出されてきている。マスメディアの姿勢も甘い。あの反省は何処かへ吹っ飛んでしまったのか?
 
 
SMILE―UP.(旧ジャニーズ事務所)が27日、公式サイトを更新。国連人権理事会「ビジネスと人権」の作業部会がまとめた報告書が、26日にジュネーブで開催された国連人権理事会で伝えられたことを受け、コメントした。

サイトには、同社の東山紀之社長のコメントが掲載。東山社長は「本報告書において、ビジネスと人権作業部会からは、弊社の被害者救済に関する様々な取組みに関し、その努力を認めるとして、一定のご理解をいただいたものと受け止めております。弊社は、引き続き、被害者救済に向けて、金銭補償のみならず、被害にあわれた皆様の心のケアや誹謗中傷対策への取り組みも含めて、お一人お一人に寄り添いながら全力で取り組んでまいります」としている。
 
また報告書では、補償のための手続きにあたって必要となった弁護士費用を同社側がカバーしていないと指摘している。
これについては「被害者救済委員会においては、弁護士によるサポートを受けるために要する費用を含む諸般の費用も考慮した上で補償額を評価していると認識しております」と伝え、「すなわち、被害者救済委員会は、迅速で公平な被害補償を行うため、法律上の主張や厳格な証明のご負担を求めず、ご申告内容に基づいて広く被害事実や生活・人生に及ぼした影響を認め補償するものとして、補償金額の算定手続を進めております。そして、補償金額の算定にあたっては、被害者の方々の精神的・財産的損害の要素を慰謝料の枠組みの中で総合的に考慮しているものと認識しております」とコメント。

続けて「したがって、被害者救済委員会は、弁護士費用等の諸般の費用につきまして、独立の項目として算定することは行っておりませんが、補償金額を算定評価する際に、それらの諸般の費用も、故ジャニー喜多川による性加害に起因する経済的な影響の一つとして相応の考慮をしております」と見解を述べている。
 
 
 

 

国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は、26日、理事会に日本で初めて行った調査結果を報告しました。ジャニー喜多川氏の性加害問題などさまざまな問題をあげた上で、「日本には人権に関する構造的な課題がある」と指摘しました。

 

 

各国の企業活動における人権問題などを調べて対応を促す「ビジネスと人権」作業部会は、スイスのジュネーブで開かれている国連人権理事会の会合で、去年の夏に日本で初めて行った調査結果を報告しました。

作業部会の報告書では、旧ジャニーズ事務所の元社長、ジャニー喜多川氏による性加害問題に対し、「引き続き深い憂慮を抱いている」とした上で、被害を申告した人への補償について「救済を求めている被害者のニーズを満たすにはまだ遠い」と指摘しています。

このほか、賃金や管理職登用などにおける男女格差や、東京電力福島第一原子力発電所で廃炉や除染作業などを行う作業員の賃金や健康の問題、アニメーション業界の長時間労働の問題などの課題を指摘しています。

その上で、日本に政府から独立した人権機関がないことに深い懸念を示し、救済を求める上で障害が生じる可能性があるなどとして、人権機関の設立を勧告しています。

作業部会の議長は「日本には人権問題に関する構造的な課題がある」とした上で、「旧ジャニーズ事務所に所属し、性的虐待と搾取の犠牲となった数百人のタレントたちや、福島第一原発事故の除染作業に関わった作業員について、救済へのアクセスが引き続き欠如していることに早急に対処するため、政府と民間の努力を強化する機会だと捉えた」などとする声明を出しました。

 

 

理事会の会合では、ジャニー喜多川氏からの性被害を告発した二本樹顕理さんがビデオメッセージで、子どもたちを守る取り組みの必要性とともに「被害者が中傷されたり、沈黙させられたりすることは許されない」と訴えました。

作業部会の専門家は、7月上旬に日本で調査結果を報告することにしています。

二本樹顕理さん 子どもたちを守る取り組みの必要性を訴える
国連人権理事会では、ジャニー喜多川氏からの性被害を告発した元所属タレントの二本樹顕理さんが、ビデオメッセージで子どもたちを守る取り組みの必要性を訴えました。

この中で二本樹さんは、日本のメディアに対して性加害問題を埋もれさせずに正確に伝えることを求めるとともに、旧ジャニーズ事務所から社名を変更した「SMILE-UP.」に対して被害者の全面的な救済や性加害を繰り返さないための対策を求めると話しました。

そして、性被害を告発した人たちがひぼう中傷にさらされていて、自身は家族を守るためにアイルランドに移住したことや、インターネット上での嫌がらせを苦に自殺した被害者もいることを伝えました。

その上で「日本政府と企業に対して、子どもたちが守られる社会を実現するための取り組みを求めます。性加害の被害者は、もはや無視されたり、中傷されたり、沈黙させられたりすることは許されません」と訴えました。

「国内人権機関」の設立を勧告
今回、国連人権理事会に提出された調査報告書で、日本政府に対し、救済に障害を生じさせないよう設立を勧告されたのが「国内人権機関」です。

人権機関をめぐっては、1993年に国連総会で全会一致で採択された「国家人権機関の地位に関する原則」、通称「パリ原則」に基づき、各国に対して政府から独立した人権機関の設立が求められています。

この原則では、人権機関はNGOや弁護士、有識者など政府以外のメンバーで構成し、人権問題を調査し、その結果を踏まえて国会や政府に勧告したり政策提言を行ったりするほか、被害者の救済や人権教育などを行うとされています。

実際には、子どものいじめやマイノリティーへの差別、外国人の労働問題や職場でのハラスメントなどに対応しています。

各国に設立された人権機関で作る「国家人権機関世界連盟」=GANHRIには、6月時点で118か国が加盟していますが、日本やアメリカ、中国は加盟していません。

日本政府に対しては、人種差別撤廃委員会や女性差別撤廃委員会など日本が加入している国際条約の監督機関がこれまでに国内人権機関の設置を勧告しているほか、2008年には国連人権理事会も同様の勧告を行っています。

しかし、法務省は「個別の法律によって人権救済に対応している」などとする見解を示し、人権機関の設立は見送られてきました。

今回の報告書を踏まえ、法務省は「人権機関の設立については従前から検討を続けており、引き続き検討を進めたい」としています。

「SMILE-UP.」調査結果の指摘に関する見解をHPで公表
26日国連人権理事会の会合で、ジャニー喜多川氏による性加害問題を含む調査結果が報告されたことを受け、旧ジャニーズ事務所から社名を変更した「SMILE-UP.」が、指摘に対する見解をホームページで公表しました。

この中では、心のケアの相談窓口が利用しにくいという指摘に対し、今月改めて利用方法などを周知して運用体制を見直しているとしたほか、補償に向けた被害者救済委員会の聞き取りに臨床心理士などの同席を認めることの案内がないという指摘には、以前から日程調整の中で案内をしているとしたうえで、今後も徹底するとしています。

また、被害者の自己負担になっていると指摘された補償をめぐる弁護士費用については、それも考慮して補償額を算定していると認識しているとしています。

「SMILE-UP.」は、「引き続き、被害者救済に向けて、金銭補償のみならず、心のケアやひぼう中傷対策への取り組みも含めて、全力で取り組んでまいります。各ご指摘事項を真摯に受け止め、改善や徹底に誠心誠意努めてまいります」としています。