裁判長は、閣議決定の根拠となった法解釈の変更について「黒川氏の定年延長が目的だったと考えざるを得ない」と述べました。

 

「閣議決定」が民主主義の根幹を壊そうとした事件。
この時は国民の声の力に権力は負けたけど、今後も同じことがいつ起きてもおかしくない。

 

東京高検検事長だった黒川氏の定年延長に関する記録の不開示を巡る訴訟の判決で、大阪地裁に向かう原告の神戸学院大の上脇教授(中央)ら(27日)=共同
 

東京高検検事長だった黒川弘務氏=辞職=の定年を延長した2020年1月の閣議決定を巡り、大学教授が法務省内で協議した記録を不開示とする国の決定を取り消すよう求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。徳地淳裁判長は一部の決定を取り消し、文書の開示を認める判断を示した。

政府は国家公務員法の規定に基づく定年延長は検察官に適用されないとの見解だったが、黒川氏の定年を目前に控えた20年1月に解釈を変更。「検察官にも適用される」とし、定年を半年延長することを決めた。

黒川氏は20年5月、自らの賭けマージャン問題を受けて辞職した。
 

 

訴訟では、閣議決定時に法務次官だった辻裕教氏が23年12月、証人として出廷した。尋問で辻氏は、定年延長規定の解釈変更について「特定の検察官のためではなかった」と主張。そのうえで「犯罪が複雑化し、担当者の交代によって捜査に重大な支障が生じる可能性があった」と説明した。

原告は神戸学院大の上脇博之教授。

上脇教授は法務省に解釈変更を巡る関連文書の開示を求めたが、「存在しない」との理由で一部しか開示されなかったとして、22年1月に提訴した。

 

 

安倍政権の恣意的な変更と批判 原告「法治国家が揺らぐ」

 

 

 安倍晋三政権に近いとされた黒川弘務元東京高検検事長の人事に関する文書の開示を求めた訴訟で、27日の大阪地裁判決は国家公務員法の解釈変更は黒川氏の定年延長が目的だったと推認した。原告の上脇博之・神戸学院大教授は「黒川氏を検事総長にしようとする安倍政権の恣意的な変更だ」と批判し「法治国家が揺らぎかねず、政府は経緯を説明しなければならない」と訴えた。
 

 判決後に大阪市内で開いた記者会見。上脇氏は法解釈の変更について「行政が特定の1人のために行った。常識ではありえない」と非難。「真相解明をしないといけない」と注文を付けた。自身は訴訟の目的を達成したとして控訴しない意向を示した。

 

検事長の定年延長巡る文書、国の不開示決定を取り消し 大阪地裁判決

 

 

 黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年を延長した政府の閣議決定(2020年1月)を巡り、法務省が作成した関連文書の開示の是非が争われている訴訟の判決で、大阪地裁は27日、国の不開示決定の大部分を取り消した。徳地淳裁判長は、閣議決定の根拠となった法解釈の変更について「黒川氏の定年延長が目的だったと考えざるを得ない」と述べた。【土田暁彦】

 

 

アベノマスクでも「黒塗り」開示を命令 黒川氏の定年延長訴訟の裁判長

 
 東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を延長した政府の閣議決定を巡り、法務省が作成した関連文書の不開示決定を取り消した大阪地裁の徳地淳裁判長(51)は西日本での勤務経験が長く、行政訴訟を中心に手掛けている。

 滋賀県出身。1999年に任官し、最高裁調査官や福岡地裁部総括判事などを経て大阪地裁に移った。

 大阪地裁では、安倍政権が新型コロナウイルス対策で全国に配った布マスク「アベノマスク」の契約単価や発注枚数を不開示とした国の対応が問われた訴訟を担当。2023年2月、「税金の使途にかかる行政の説明責任の観点から開示の要請が高い」と判断し、黒塗りにされた文書の開示を命じた。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざん問題を巡り、自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54歳)の妻が、大阪地検に提出された関連文書の開示を求めた訴訟も指揮した。23年9月の大阪地裁判決は、文書の存否も明かさず不開示とされていた国の決定は適法とし、妻側の請求を棄却した。【土田暁彦】