「元自民党議員」の弁護士が逮捕…!“詐欺まがいのグループ”と「5億円」を荒稼ぎしていた男の「ヤバすぎる素顔」と地元の「意外な評判」

 
 「とにかく仕事をしないんです。連絡がつかない、裁判に必要な書類を出さない、決められた期日に法廷にやってこない。他にも彼と関わったことのある弁護士を知っていますが、どなたも同じような被害を受けていると聞いています。担当の裁判官も毎回呆れていましたからね。しかも態度も尊大で、謝りもしない。いつか懲戒処分を受けるだろうと、誰しもが思っていたはずです
 
 
元自民党議員の弁護士が逮捕
 前代未聞の事件に、弁護士業界に衝撃が走った。

 警視庁捜査二課が6月13日、弁護士法違反の疑いで、元自民党議員で弁護士の今野智博容疑者(48)を逮捕した、と発表したのだ。
 
 罪に問われているのは、弁護士資格を持たない人間に名義を貸し、法律業務をさせたとする非弁提携。しかし世の弁護士がそれ以上に問題視しているのが、名義の貸し先だ。

 「今回、代わりに法律業務を担っていたとされる男女10人も同時に逮捕されている。彼らのバックに特殊詐欺グループがいたのではないかと疑われているのです。おそらく先に警察に怪しまれていたのは、この10人のグループ。芋づる式に今野容疑者にたどり着いたのでしょう」(大地総合法律事務所の佐久間大地弁護士)

 今野容疑者を含む11人は、被害金の回収見込みのないロマンス詐欺やネット詐欺などの案件を引き受け、約900人から合計5億円の着手金を受け取ったとされている。今野法律事務所のサイトに記載されているフリーダイヤルに電話をかけるとグループのアジトにつながるようになっており、着手金のうち1割を同容疑者が受け取るスキームになっていた。

 もうひとつ悪質だったのが、「元議員」という肩書きを利用していた点だ。

 「業務を代行していたグループは『うちの先生は元国会議員ですよ』と語り、藁にもすがる思いで助けを求める詐欺被害者たちを安心させていたようです。もし仮にこれが事実だとすると、それを許していた今野容疑者は弁護士の風上にも置けない。弁護士資格に対する信用を失墜させる卑劣な行為です」(佐久間弁護士)

 実は、今野容疑者はもともと弁護士になりたいわけではなかったという。むしろ並々ならぬ思いを抱いていた職業は、政治家。日本弁護士政治連盟のHP上に公開されているインタビューでは、次のように明かしている。

弁護士から憧れの政治家になるも…
 〈私は、弁護士になってから政治家を目指したわけではなく、元々政治家志望でした。実は、5歳の時から「政治家になりたい」と考えていました〉

 同容疑者にとって弁護士という肩書は、政界へ進出するための手段に過ぎなかったのかもしれない。同じインタビューでこうも語っている。

 〈大学までは主に政治や経済の勉強をしていて、法律の勉強はほとんどしていませんでした。ただ自分には地盤も看板もありませんでしたので、すぐに政界に身を投じるわけにもいかず、社会の中で見聞を広めたいという思いもあったことから、大学を卒業するにあたり、弁護士となることを目指しました〉

 埼玉県深谷市出身の今野容疑者は、早稲田大学政治経済学部を1999年に卒業。2003年に司法試験に合格し、弁護士として働き始めるも、夢を諦めきれず2012年の衆議院選に初出馬する。そして比例で復活当選を果たし、自民党議員の座を掴み取った。

 しかし憧れの議員生活はそう長くは続かず、2017年の衆議院選で落選。地元・深谷市の住民は次のように語る。

 「ここらの地域はいま法務大臣をやっている小泉龍司さんが強いからね。昔から地元に重きを置いて精力的に活動を続けてきた人だよ。それに比べたら今野さんなんてまだまだ。地盤もなかったし、積極的に応援している人もそれほどいなかった。彼が当選したと言っても、結局は比例の復活だったじゃない。特に人気があったわけでもなかったんだよ」

 こうして志半ばで議員生活を終えた今野容疑者は2020年、深谷駅前に今野法律事務所を開設する。記者が現地を訪れてみると、小さなビルの3階に同事務所があるのを確認できた。

 しかし周辺で営業する店舗のスタッフらは、「今野さんが出入りするのを見たことがない」と一様に首をかしげる。運営実態について、ビルを管理する企業に電話で問い合わせたが、「お答えしかねる」として回答は得られなかった。
 
法廷で相対したことのある弁護士の証言
 今野容疑者の評判は芳しくなかったようで、「以前から非常識な弁護士として有名だった」と、同容疑者と法廷で相対したことのある弁護士は顔をしかめる。

 「とにかく仕事をしないんです。連絡がつかない、裁判に必要な書類を出さない、決められた期日に法廷にやってこない。他にも彼と関わったことのある弁護士を知っていますが、どなたも同じような被害を受けていると聞いています。担当の裁判官も毎回呆れていましたからね。しかも態度も尊大で、謝りもしない。いつか懲戒処分を受けるだろうと、誰しもが思っていたはずです」

 埼玉弁護士会によれば、2023年10月から2024年6月までに寄せられた今野事務所に対する苦情は24件。「連絡が取れなくなった」などが主な内容で、同弁護士会の大塚信雄会長も「不信感を抱いていた」と語っている。

 では、今野容疑者の事務所では一体どんな対応がされていたのか。

 今回、同事務所に詐欺被害を相談していた木之内琴美さん(仮名、36歳)に話を聞くことができた。

 「本当に杜撰な対応でした」

 被害者がこうため息混じりに語った今野事務所の実態とは――。

 

「元自民党議員」の弁護士が“怪しいグループ”と一緒に「900人」をカモっていた…!「あんなの誰だって騙される」と被害女性が語った「卑劣な手口」

 
巧妙な副業詐欺の実態
東北地方の中小企業で働く木之内琴美さん(仮名、36)は、副業詐欺の被害に遭った。トラブルの発端は、数年前にビジネスセミナーで知り合った起業コンサルタント・K氏からの一通のLINEだった。

〈来月から副業サポートを始めようと思っているんですけど、興味ありますか?〉
 
「本当、絶妙なタイミングだったんですよね……。いくら働いても給料が上がらない今の状況から抜け出したくて、ちょうど副業を始めようと思っていたところでした。といっても、何から始めたらいいか全然わからなくて。それでこのLINEをきっかけにKさんの話を聞いてみたら、けっこうその気になってしまったというか。

提案された副業は、私がこれまで仕事で培ってきた専門知識の販売。その情報を記事やPDFにして売るようなイメージですね。確かにそれならいけそうだと思いましたし、Kさんも『稼げるようになるノウハウを知っているから大丈夫』と自信満々でした。

決め手になったのは費用が回収できるという点です。60万円のコンサル料がかかると言われたのですが、同額の利益を出せるようになるまで必ずサポートすると言われて。それならいいかと思ってKさんと契約を結んだんです」(木之内さん)

この時、木之内さんはクレジットカードで6回払いの決済をしたという。

最初こそK氏は相談相手になってくれたというが、契約から2ヵ月を過ぎたあたりから思いもよらぬアドバイスを始めるようになる。

詐欺被害者を誘い込む「偽りの優しさ」
「文章がある程度形になったら周りの友達に売りまくってください。稼ぐためのノウハウはそれからです」

事前の説明と違うと思った木之内さんは、当然反発した。しかしK氏は一切取り合わない。「こんな簡単なこともできないんだったら副業は向いていない」「だからあなたはダメなんだ」と木之内さんに対して暴言に近い言葉を浴びせるようになったという。

「ここで初めて自分が騙されたことに気がつきました。結局、稼げるようになるまでサポートするなんて嘘。あれこれと無理難題を突きつけて、副業を途中で諦めさせるのが目的だったんです」(木之内さん)

木之内さんは途中解約を認めるように迫ったが、K氏は契約書を盾に応じるそぶりを見せなかったという。そこで助けを求めたのが、詐欺に強い弁護士だった。
 
「検索サイトの上位に表示された法律事務所に片っ端から相談の連絡を入れました。けれど、どこも『うちでは担当できない』という回答ばかりで……。そんな時に唯一、親身になって話を聞いてくれたのが今野法律事務所でした」(木之内さん)

木之内さんの希望は2つ。すでに分割で支払っていた40万円の被害金回収と、残りの支払いのストップだ。被害金は回収できる可能性があり、K氏に対して内容証明を送れば支払う義務がなくなる。今野法律事務所の事務員からこのような説明を受けた木之内さんは、20万円の着手金を支払い、対応を任せることにした。

しかし、その後の同事務所のお粗末な対応に、木之内さんは苦しめられることになる。
 
杜撰な対応のオンパレード
「事務員からは『まずクレジットカード会社に決済を取り消してもらいます』と説明を受けていました。でもその後、1ヵ月近く経っても何の音沙汰もない。

不安になって自分でクレジットカード会社に連絡をしてみたら、『今野法律事務所からそんな問い合わせは一切来ていない』と言われて。つまり、やると言っていたことを全くやっていなかった。もう呆れましたよ」(木之内さん)

このまま任せていたら解決しないと考えた木之内さんは、自らクレジットカード会社とやり取りを開始する。もちろん本来なら今野法律事務所がやるべき業務だ。

決済の取り消し手続きにはK氏に送った内容証明が必要だと言われ、木之内さんはすぐに事務員に確認を取った。この時点でK氏にそのような書類を送ったという報告がなかったからだ。
 
「そしたら『すでにK氏には内容証明を送っています』と言うんです。だったら依頼人にすぐ伝えるのが普通じゃないですか。その後も最悪でした。クレジットカード会社にその書類を送ってほしいと依頼したのに、また進捗の連絡がない。クレジットカード会社に問い合わせたら『書類はまだ届いていません』と言われました。

さすがにこれはあり得ないですよ。埼玉弁護士会にクレームを入れましたし、事務員に対しても『これからは今野先生と直接やりとりさせてください』と伝えました。それで今野先生と何度かやりとりして、ようやく内容証明をクレジットカード会社に送ってもらえたんです」(木之内さん)

最終的に、木之内さんの希望だった残りの支払いのストップは実現した。しかしすでに支払ってしまった40万円の回収の話はうやむやになり、今野事務所からの連絡は途絶えてしまったという。
 
怪しいグループだと知っていた?
「そしたら今野先生が逮捕されたとニュースで知って……。詐欺で騙された人を、弁護士がまた騙していたと聞いて背筋が凍りました。

詐欺の被害に遭った人間はパニック状態に陥っていて、正常な判断なんてとてもじゃないけどできません。誰でもいいから助けてほしいし、手を差し伸べられたら疑いもなく取ってしまう。そんな状況で怪しい弁護士を見分けるのは無理です。ちょっと防ぎようがないですよ」(木之内さん)

今野容疑者が非弁提携をしていた10人のバックには、特殊詐欺グループがいたのではないかと捜査関係者は見ている。同容疑者がグループの実態を認識していたか否かは、現在明らかになっていない。

ただ、同容疑者の地元・深谷市の複数の住民は、「今野さんは昔から頭が良かった。それなのに怪しいグループを見抜けないなんてことあるんですかね」と納得のいかない様子だった。
 
この点について、ネット詐欺に詳しい大地総合法律事務所の佐久間大地弁護士は「騙されていた可能性も否定できない」と前置きした上で、次のように語った。

「おそらく警察は今野容疑者がグループの実態を知っていたという方向で捜査をしているはずです。もしそうであれば弁護士が起こした事件としては前代未聞。詐欺罪で起訴されたら法定刑では10年以下の懲役です。初犯であれば執行猶予がつく可能性もありますが、弁護士としての活動は絶望的でしょう」

近ごろ、被害金の回収が難しいロマンス詐欺やネット詐欺などの案件で、高額な着手金を得ようする弁護士が増えている。実際、各弁護士会も注意喚起を行っており、あまりに悪質な弁護士は公表されている。

ただ、せっかく弁護士になった人間が、なぜこのようなハイリスクなビジネスに手を染めてしまうのか。
 
母親宅を訪れると…
「彼らによく見られるパターンは2つ。ひとつが金銭的な事情です。弁護士業がうまくいっていないのはもちろん、女性に入れ込んでしまったり、株や不動産の投資に失敗したりする弁護士もいないわけではありません。生きるために悪質な方法に手を出してしまう。

そしてもうひとつが過度なビジネス思考です。ほとんど何もせずに高額な着手金を手にできるロマンス詐欺などの案件は、効率が良いと考えているのでしょう。悪評が立つのは承知の上で手っ取り早く大金を稼ぎたいという弁護士も残念ながら存在します」(佐久間弁護士)

では今野容疑者の場合はどういった事情だったのか。真相を探るべく、深谷市内にある母親宅を訪ねた。

インターホン越しに女性が応じたが、記者が今野容疑者の名前を出した途端に「自分は留守を預かっているだけで何もわからない」と繰り返し、話を聞くことはできなかった。

弁護士法1条1項には「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」とある。

今野容疑者は、一体どこに正義を忘れてきてしまったのか。

 

【逮捕】元国会議員で弁護士の今野智博容疑者が名義貸しで着手金1割をポケットに「何もせずに5000万円」の大儲け 法曹界隈で有名だった「グレーな金稼ぎ」の実態

 
 
 元衆院議員で弁護士という“上級国民”がまた逮捕された。

 警視庁捜査2課は6月13日、詐欺の被害金を回収する名目で、無資格者に自らの弁護士名義を貸して法律事務をさせたとして、元自民党衆院議員で弁護士の今野智博容疑者(48)を弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕したと発表した。また、同課は今野容疑者の名義で弁護士資格がないのに法律事務をした疑いで、千葉県市川市の職業不詳、辻直哉容疑者(51)ら男女10人を同法違反(非弁活動)の疑いで逮捕した。

「今野容疑者は2012年と2014年の総選挙で自民党から出馬し、2回とも小選挙区では落選したものの比例復活した元衆院議員です。今回の逮捕容疑は、弁護士資格のない辻容疑者らが今野容疑者の名前をかたって国際ロマンス詐欺や特殊詐欺などに遭った全国約900人の被害者から被害回復の着手金として計5億円の弁護士費用を受け取ったというものです。

 辻容疑者らが営業をして『うちの先生は元国会議員だから』などと言葉巧みに着手金を得ていたようです。実際には、被害金回収の作業をほぼしていなかったとみられ、詐欺被害者を狙った更なる詐欺ともいえる姑息な犯罪です。今野容疑者は着手金の1割程度を受け取り、被害回復の法律事務にはまったく携わっていなかったとみられています」(大手紙社会部記者)

 今野容疑者が登録していた埼玉県弁護士会には、「投資詐欺について相談したが、今野法律事務所と連絡が取れなくなった」などの苦情が、2023年10月から今年6月にかけて計24件ほど集まり、事態が発覚したという。同県弁護士会は公式ホームページで今年1月、「投資・副業・国際ロマンス詐欺に代表される詐欺案件の依頼にあたってのご注意」というタイトルで、被害回復の分野で弁護士法に違反するものが散見されることに注意喚起していた。今野容疑者が逮捕されると、容疑者についての特設電話相談を実施するなど対応に追われている。
 
 そんな今野容疑者は、日本弁護士政治連盟の公式ホームページの企画で現職の衆院議員時代に「5歳の時から『政治家になりたい』と考えていました」などと話していた。「私は、法学部出身でもなく、正直なところ法律の専門家を自称することには躊躇を覚えます」とも吐露している。そんな容疑者の名義に、多くの詐欺被害者らが再び“騙された”のが今回の事件だ。
 
「今野は国政選挙にまた出馬するためにカネが必要だと周囲に漏らしていました。着手金の1割は5000万円。手軽に稼げると考え、安易に名義を貸していたということです。また、彼は弁護士事務所のほかに『ネットトラブルの解決』をうたった株式会社Aを経営し、誹謗中傷対策という名目でインターネット上で営業をかけていました。営業活動に制限がある弁護士事務所と、そうでない会社を使い分けることで、非弁活動とも取られかねないグレーなカネ稼ぎをしていたと疑われていました」(法曹関係者)

 政界での活動資金のため、違法な名義貸しをしていたという今野容疑者。辻容疑者との蜜月ぶりは、業界では有名だったという。

「辻は今野法律事務所など複数の名刺を持ち歩いていました。彼自身は弁護士ではないものの、かつては別の中堅法律事務所で勤務しており一定程度の知識はあったと思われます。そこで、以前より今野容疑者の名義を使って複数の”事業”をしていることは業界では知られた事実です。今回事件になった詐欺被害者の件だけでなく、例えば、ネットの掲示板の関連事業も行っていた。ある掲示板の運営に関わる会社Bで、辻は役員を務めています。この系列の掲示板の投稿の削除をめぐっても、辻らの非弁行為があったのではないかと業界では噂されています」(前出・法曹関係者)

 近年、さまざまな業界で問題視されていた“非弁行為”に捜査機関のメスが入ったことで、弁護士界隈で大きな話題になっているという。詐欺被害者の弱みにつけ込んでいた姑息な事件の実態解明に注目が集まる。