立憲民主党が提出した岸田内閣不信任決議案が20日の衆院本会議で、自民、公明の反対で否決されました。日本共産党、立民、維新、国民などが賛成しました。日本共産党の宮本徹議員は賛成討論で、自民党ぐるみで裏金事件を起こしながら岸田文雄首相自身が、「真相を隠蔽(いんぺい)しようとしている張本人だ」と指摘し、金権腐敗政治を温存する岸田首相と自民党を厳しく批判しました。物価高騰の中、国民は負担増と社会保障の切り捨てで、国民生活をいっそう苦しめ、大軍拡を進め、人権を踏みにじる岸田内閣の退陣を求めました。

 

 宮本氏は不信任の理由として、岸田政権が強行した政治資金規正法の改悪は「肝心要の企業・団体献金の禁止、裏金の原資となった企業・団体によるパーティー券購入禁止がすっぽり抜け落ちている」と指摘。巨大な資金力で政治をゆがめる企業・団体献金に固執する岸田政権の反国民的姿勢を批判しました。

 また、物価高騰の中、国民生活に追い打ちをかけているとして、医療保険に上乗せする子育て支援金、雇用保険料引き上げ、医療、介護の利用者負担増などを挙げ、「自民党に多額の献金をする大企業には減税・補助金を大盤振る舞いしながら、国民には負担増を進めている」と批判しました。

 さらに宮本氏は、米国いいなりに国内総生産(GDP)2%への軍事費倍増、敵基地攻撃能力の保有や殺傷兵器輸出、米軍と自衛隊が指揮統制のかつてない連携強化など、憲法に基づく「平和国家」の理念を根底から覆す「戦後最悪の憲法破壊政権だ」と批判。経済も地方自治も農業も、戦争体制づくりに組み込み、大軍拡で国民の暮らしを犠牲にする「亡国の道だ」と断じました。

 宮本氏は、アメリカと財界におもねる自民党政権を退場させ、「国民の暮らしに寄り添う、希望の政治を実現するため、日本共産党は全力を尽くす」と表明しました。

 

岸田内閣不信任決議案
宮本徹議員の賛成討論(要旨)
衆院本会議

 

 日本共産党の宮本徹議員が20日の衆院本会議で行った岸田内閣不信任決議案の賛成討論(要旨)は次の通りです。

 不信任賛成の第一の理由は、自民党ぐるみの組織的犯罪行為という前代未聞の裏金事件を引き起こしながら、岸田政権は真相を隠蔽(いんぺい)し、金権腐敗政治を温存しようとしているからです。

 岸田政権と与党が強行した政治資金規正法の改悪は、肝心要の企業・団体献金の禁止、裏金の原資となった企業・団体によるパーティー券の購入禁止がすっぽり抜け落ちています。真相をこのまま闇に葬り去ろうという、反省なき自民党に政権を担う資格はありません。

 第二に、物価高騰の中、国民生活に追い打ちをかけているからです。最賃引き上げも、中小企業・小規模事業者への賃上げ支援も全く不十分、非正規ワーカー処遇改善の法改正にも背を向けています。大学の授業料の値上げラッシュです。岸田内閣はあろうことか、36%が赤字経営の訪問介護の基本報酬を引き下げました。

 自民党に多額の献金をする大企業には減税・補助金を大盤振る舞いしながら、国民には負担増で、社会保障を切り捨てる自民党政治が続くことは国民生活をいっそう苦しめるだけです。

 第三に、米国いいなりに、国内総生産(GDP)2%への軍事費倍増、敵基地攻撃能力の保有、殺傷兵器の輸出を進め、歴代政権が憲法に基づく「平和国家」の理念としてきたことを根底から覆している戦後最悪の憲法破壊政治です。

 岸田文雄首相が、中国を抑え込むアメリカの軍事戦略の一翼を積極的に担うため、米軍と自衛隊の指揮統制のかつてない連携強化に踏み込んだことは極めて重大です。先制攻撃を柱とする米国のIAMD計画に日本の主権を差し出すなど断じて許されません。

 今国会、岸田政権が強行した経済秘密保護法、地方自治法改悪、食料困難対策法は、憲法と人権を無視し、経済も地方自治体も農業も、「安保3文書」に基づく戦争体制づくりに組み込むものです。軍拡競争で緊張を高め合うのではなく、絶対に戦争にしない、憲法9条を生かした平和外交こそ進めるべきです。

 第四に、岸田内閣が人権を踏みにじり続けていることです。選択的夫婦別姓の早期実現を求め、経済界も大きく声を上げる状況です。岸田政権は、明治的家族観を国民に押し付ける時代錯誤の政権です。

 離婚後「共同親権」を導入する改定民法は、裁判所で不本意な共同親権が強制され、立場の弱い方を追い詰め、子どもの利益が害される危険を否定できません。

 税や社会保険料の滞納で永住資格を取り消しうる制度の創設は、外国人差別・排外主義に他なりません。

 アメリカと財界におもねる自民党政権を退場させ、国民の暮らしに寄り添う、希望の政治を実現するため力を尽くす決意です。

 

「すさまじい鈍感力」岸田首相「四面楚歌とは感じていない」強気答弁も「ヤバいよあなた」ツッコミ殺到

 

 

 6月19日、自民党派閥の裏金事件を受け、改正政治資金規正法が参院本会議で可決、成立した。その後、開かれた党首討論で、岸田文雄首相が「四面楚歌(しめんそか)とは感じてない」と答え、議場からどよめきが起きる一幕があった。

 

 岸田首相と野党4党首による3年ぶりとなる党首討論。そのラストバッターとして登場した、国民民主党の玉木雄一郎代表の持ち時間は3分。玉木氏は冒頭、こう切り出した。

「総理はいま、四面楚歌じゃないか。野党の協力が得られない、公明党からも『グズグズしている』と言われたり、自民党のなかからも総理の責任を問うような声が、公然と出てきている。国民の信頼も地に落ちている。四面楚歌、八方ふさがり、なぜこういう事態に陥ったと思うか」

 岸田首相が「私自身は四面楚歌であるとは感じていない」と反論すると、議場からはどよめきが起きた。

 岸田首相はどよめきを制するかのように、こう続けた。

「いま、これだけ難しい課題が山積しているからこそ、議論をおこなっている。難しい課題であるからこそ、結果を出さなければならない。判断をしなければならない。当然のことながら批判は出てくる。しかし、批判が出るなかでも、やるべきことはやる。これが政治家の責任であると考えている」

 玉木氏はさらにこう追及した。

「四面楚歌の理由は、トップが責任をとらないことだ。小手先でごまかしても、ものは前に進まない。今回の法案もザル法だ。通ったからといって何かが変わるわけではない。政治に対する信頼を回復するために、いまいちばんやらなければいけないのは、潔く職を辞して、リーダーの責任をしっかり果たすことではないか」

 野党4党首との討論中、野党からヤジは飛んでも、自民から岸田首相を応援する声はなし。Xでは《四面楚歌》が一時、トレンド入りし、玉木氏は翌20日、自身のXにこう書きこんだ。

《四面楚歌 がトレンド入りしていますが、昨日の党首討論でのやり取りがもとになっているようです。トップが責任を取って範を示さない限り、政治に対する信頼を回復することも、閉塞した現状を打破することもできません。》

 自民党内では6月4日、横浜市連の会長から、岸田首相の退陣を求める声が上がった。16日には、麻生派議員も自身の政治資金パーティーで、政治資金問題をめぐり、岸田首相の責任を問う発言をしている。

 党首討論が開かれた19日には、自民党の茂木敏充幹事長、石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障担当相が、相次いで講演会や勉強会に出席。茂木氏は同日夜、菅義偉前首相と東京都内のステーキ店で会食するなど、9月の党総裁選を見据えた動きが活発化している。

 10日、NHKが報じた世論調査で、岸田内閣の支持率は21%と、内閣発足後、最低を更新。岸田首相は今国会での衆院解散・総選挙を見送った。

 そんななかで、岸田首相が「四面楚歌とは感じてない」と強弁したことに、Xではツッコミが殺到している。

《岸田総理は議員に向いていない。今の現実すら見えていないとは。国民の誰が見ても四面楚歌でしょ。今の支持率すら右から左に受け流しているのか?》

《凄まじい鈍感力だな。五感を研ぎ澄まして国民や周囲の声を聞いて下さい。聞く耳を持たない厚顔無恥で無能な総理はさっさと退陣して下さい》

《もう結論出て四面楚歌なんすよね。それを四面楚歌だと思っていない岸田さんヤバいよあなた》

 そのほか、《暴走してでも解散した方が今より良くなる気がしませんか?》という声もある。岸田首相に、この苦境を打破する術は残されているのだろうか。

 

世耕氏、近大理事長辞任を 教職員有志、署名5万筆超

 
 
 近畿大の教職員有志が20日、世耕弘成参院議員=自民党離党=の理事長辞任を求める署名活動で5万3851筆が集まったと発表した。自民の派閥裏金事件で安倍派幹部として責任を問われた経緯を踏まえ、記者会見で「教育機関の理事長として資質に欠ける」と表明。大学側は受け取りを拒否した。

 世耕氏は派閥からの還流金を政治資金収支報告書に記載しなかったとする政治資金規正法違反などの疑いで告発され、不起訴となった。離党勧告処分を受け、自ら離党届を出した。

 署名の呼びかけ人で共に文芸学部の阪本洋三、藤巻和宏両教授が会見。阪本氏は「不起訴でも道義的責任はある」と訴えた。
 

主張

党首討論 夫婦別姓

個人の尊厳阻み孤立する自民

 

 

 綱領で、日本の民主的改革の主要な一つに「ジェンダー平等社会をつくる」を掲げている党の党首として、田村智子・日本共産党委員長が就任後初の党首討論で岸田文雄首相に迫ったのが、選択的夫婦別姓制度の実現です。


 田村氏は、今国会の参院本会議の代表質問をはじめ、国会質問でつねにジェンダー平等の問題をとりあげてきました。ジェンダー平等が最も遅れているのが国会、政治の分野であり、そこを変えなければならないという認識からです。

■事実を認めながら
 田村氏は、日本経済団体連合会(経団連)が政府に選択的夫婦別姓制度の早期実現を要望したことにふれ、「長年にわたる女性たちの訴えがついに経済界も動かした」と指摘。憲法で、個人の尊厳、法の下の平等、婚姻の自由、夫婦平等の権利が掲げられながら、同姓の強制により、実際には姓を変えることの不利益が圧倒的に女性に偏り、女性が個人の尊厳を傷つけられていることについて、岸田首相自身の認識をただしました。

 岸田首相はビジネスの面で「そういった事実があることは強く認識している」と認めながら「さまざまな角度から議論する必要がある」「世論が割れている」として「議論を深める必要が今まだある」と後ろ向きの態度に固執しました。

 岸田首相は「世論が割れている」とします。しかし、NHKの今年4月実施の世論調査では、60代以下の年代でいずれも7割以上が選択的夫婦別姓に「賛成」でした。

■女性にだけ不利益
 内閣府の調査(2022年3月)では40代以下の各年代で6割以上が、どちらかが姓を変えなければならないことで、変えた側に「不便・不利益がある」と回答。「ある」とした人の6割が、通称使用を認めるだけでは対処しきれない不利益があると答えています。

 現状では、改姓による不利益を被っているのはほぼ女性であり、これは明確な女性差別です。

 岸田首相が「家族の一体感にかかわる」とのべていることに対し、田村氏は「特定の価値観の押し付けだ」と追及しました。

 前出の内閣府の調査では、「家族の一体感が弱まるか」という問いに、6割が「影響がない」とし、20代以下では7割以上が「ない」としています。同じ姓でないと「家族の一体感がなくなる」というのは、明治時代の民法や家制度の残滓(ざんし)であり、それにしがみつく古い特定の価値観です。

 岸田首相はかつて自民党有志議員の「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の呼びかけ人でした。しかし首相になると古い勢力をおもんばかり、あれこれの理由をつけて制度実現に動こうとしません。

 国民の意識は変化、前進し、選択的夫婦別姓を求める運動は財界を含めて広がっています。女性の、個人の尊厳を含む基本的人権の侵害を顧みず国民から孤立しているのが自民党です。

 田村氏は一刻も早く国会で民法改正の審議を行うよう岸田首相に求めました。

 日本共産党は田村委員長を先頭に、個人の尊厳を阻む自民党政権をかえ、夫婦別姓、ジェンダー平等の実現のために奮闘します。

 

「首相がこの場来るべきだ」 自民代議士会で不満の声、会場から拍手

 
 
 「岸田総裁がこの場に来るべきだ」――。岸田内閣に対する不信任決議案の採決に先立ち20日開かれた自民党代議士会で、津島淳衆院議員(57)が岸田文雄首相の対応に苦言を呈する一幕があった。

 津島氏は国会内の一室で開かれた代議士会で「内閣不信任案の否決という大事な場面に向かおうとする時に、私の率直な思いを申し上げる」と発言。首相が、政治資金規正法改正案の衆院通過前の代議士会にも出席しなかったと不満を示し、「誰かが言ってそういう場を設けてもらうのではなく、自らが求めて『皆さんにお話ししたい』『さまざまなご苦労をねぎらいたい』、そういう心からの思いを発すべきではないか」と語った。一部議員から「そうだ」との合いの手や拍手が起きた。

 その後、津島氏は国会内で記者団に「組織が生まれ変わるためには健全な批判が大事だ」などと発言の意図を説明。首相が規正法改正を巡り公明党や日本維新の会との協議を経て自民案を修正したことについて「事後であっても、きちっと我々に対して説明すべきだ」と思いを語った。「事前に示し合わせたことはない。独断だ」とも語った。

 津島氏は比例東北ブロック選出の当選4回で、茂木派に所属している。内閣支持率が低迷する中、党内では首相の退陣を求める声も地方組織を中心に出始めている。【川口峻、竹内望】