都知事選でバレた「維新バブル崩壊」と「哀れな国民民主」オワコン扱いの立憲は野党の核になれるのか

 
「維新」という勢力は究極の「選挙互助会」ですから、求心力を失いブランド価値が下がったら、たふん、たちまち崩壊過程に入ります。
国民民主党はいずれ維新と合体か?自民党にのみ込まれて行く運命だ。芳野友子の実働部隊。
 
 
 
今回の都知事選は、近づく衆院選を前に「自民1強、野党多弱」から「自民vs.立憲」へと、整理し直す役割を果たしそうだ。自民党の裏金問題もあり、与野党の間で美味しい汁だけ吸おうとする維新の会や国民民主党は、野党の「核」が確立されたことで存在意義を失っている。(ジャーナリスト 尾中香尚里)

都知事選は、近づく衆院選を前に
「自民vs立憲」へと整理し直す役割
 2024年の東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)は、現職の小池百合子知事が6月12日の都議会最終日に3選を目指して出馬を表明した。一方、出馬表明済みの蓮舫参院議員は同日、所属する立憲民主党に離党届を提出して出馬の準備を整えた。

 小池氏には自身が最高顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」に加え、自民党、公明党が支援する。蓮舫氏は出身母体の立憲民主党に加え、共産党や社民党の支援を受ける。自民党が党派色を薄めた「確認団体」を設立するとか、蓮舫氏が離党するとか、そんなことは国民にとってはほとんど意味がない。都知事選の構図が「政権与党vs野党勢力の事実上の一騎打ち」なのは、誰が見ても明らかだからだ。

 そしてこの結果、これまで与党と野党の間を都合良く渡り歩いてきた「第三極」政党は、すっかり存在感を失った。今回の都知事選は、近づく衆議院選挙を前に政界の構図を「自民1強、野党多弱」から「自民vs.立憲の2大政治勢力の戦い」へと、明確に整理し直す役割を果たしそうだ。

 小池知事が出馬を表明したのと同じ日、野党第2党・日本維新の会は、都知事選への独自候補擁立を断念する考えを明らかにした。首都・東京の首長選において維新の「不戦敗」は、ここ2年余りの「維新上げバブル」の崩壊を意味していると言えるだろう。

「保守2大政党」を望む流れが
維新への過剰な期待を呼び起こしたが…
「維新上げ」が始まったのは、前回の衆院選(21年)後のことだ。野党第1党の立憲が衆院選で公示前議席を割り込んだ一方、第2党の維新は前々回(17年)衆院選の11議席から41議席へと議席を「4倍増」させた。途端に「立憲惨敗、維新躍進」の報道があふれ、「維新は立憲を抜き野党第1党に!」とあおる声も出始めた。

 だが、これは当初から相当無理筋な「印象操作」だった。維新の「4倍増」には、17年の11議席が「負け過ぎ」だったことが考慮されていない。このさらに一つ前、14年の衆院選で、維新は21年と同じ41議席を獲得していた。

 維新が17年衆院選で「負け過ぎた」最大の理由は、小池氏がこの選挙で立ち上げた新党「希望の党」だ。維新は希望の党と選挙区を「すみ分け」して東京で候補擁立を見送ったことなどを受け、この選挙で大きく議席を減らした。希望の党が消えた21年衆院選で、維新は14年当時の議席を「取り戻した」に過ぎない。

 それでも、ここ30年ほどずっと続いている、メディアや有識者らの「保守2大政党」を望む流れは、維新の躍進への過剰な期待を呼び起こした。半年後の22年参院選、その翌年の23年統一地方選までは、メディアの空気にも乗り、維新も一定の結果を出した。

 しかし、大阪の地域政党から始まった維新は、それ以外の地域における地方組織や地方議員などの「地力」が決定的に不足している。23年統一地方選では、いくつかの自治体で維新が初議席を得たが、このレベルで「将来の野党第1党」として自民党に対峙することはできない。政党とはそんなに簡単に育つものではないのだ。

 そうこうするうちに、メディアで散々「オワコン」を演出されていた立憲が、態勢を立て直した。

 党の「地力」の点では立憲もまだ心許ないが、少なくとも維新に比べれば、地方組織の整備などは進んでいる。やがて、地力に勝る立憲を中核とする野党勢力が、地方自治体の首長選などで勝ち始め、維新の存在は徐々にかすんでいった。

 そこへ自民党の裏金事件である。野党に明確な「自民批判勢力」としての位置づけが求められるようになり、維新のような「第三極」政党は、急速に立ち位置を失った。

自民党の裏金事件がきっかけ
「第三極」政党は立ち位置を失った
 良い例が、裏金事件を受けた政治資金規正法改正案への対応だ。維新は衆院で自民党から法案の一部修正を得られたとして賛成しながら、ここへ来て「参院では反対もあり得る」として、党内の混乱を露呈している。党の立ち位置を見失っていることの表れだろう。

 維新の馬場伸幸代表は最近、またぞろ「大阪都構想の実現」に言及している。住民投票で2度も否決された政策を平然と持ち出す姿勢にあ然とするが、この発言で感じるのは、彼らはすでに国政に飽きているのではないか、ということだ。

 現在でも大阪の地方議員が圧倒的な力を持つとされる維新。国政与党の自民党との太いパイプを背景に、大阪で大きな権力を振るうことこそ、彼らが本来やりたい政治なのだろう。メディアに乗せられて「保守2大政党」の片棒を担がされることなど、もう面倒になったのではないだろうか。

「第三極」と言えば、国民民主党も本稿執筆中の6月13日夜の時点で、都知事選への対応が定まっていない。榛葉賀津也幹事長は「共産党と堂々と連携する人は応援できない」と述べ、蓮舫氏を支援しない方針を明言しているが、一方で小池氏の支援も独自候補の擁立も打ち出せていない。

 国民民主党は、17年に小池氏が立ち上げた希望の党に、当時の野党第1党・民進党(民主党から改称)が合流を決め、党が分裂した中で誕生した。小池氏率いる希望の党について行き、結果として離れた元民進党議員らが結党した国民民主党は、同じ政党から分かれた立憲民主党と、野党内での主導権争いを続けてきた。

 現在の国民民主党は、20年に同党の多くの議員が立憲民主党に合流した際(現在の泉健太代表もこの時の合流組だ)、それを拒んだメンバーからなる。党が小さくなった分、立憲への対抗意識は以前よりも強い。玉木雄一郎代表は「立憲と組みたくない」がゆえに同党の「逆張り」を続けるうち、目的と手段が混同して「与党寄り」姿勢が目立ち始めた。それが原因で前原誠司氏ら有力メンバーの離党を招き、さらに小さな党になった。
 
国民民主党は哀れにも小池支援を打ち出せない
潮目が変わり「保守系勢力はバラバラ」に
 4月の衆院東京15区補選で国民民主党は、小池氏が特別顧問を務める都民ファーストの会が推薦した無所属候補を共に推薦し、立憲の公認候補らと戦ったが、5位に沈んだ。だから、同党が都知事選で蓮舫氏を支援しないのは、驚くに値しない。むしろ哀れなのは、同党が補選で「共闘」した小池氏の支援を、いまだに打ち出せないことだ。

 国民民主党が補選で小池氏らが推す候補に「乗れた」のは、候補者が自民党からの支援に難色を示したため、形の上では「非自民」候補として選挙を戦えたからだ。だが、補選の惨敗を受け、小池氏は都知事選で、自民党の支援を得られることを事前に確認した上で、出馬表明に踏み切った。小池氏は自らが勝つためには、国民民主党よりも、自民党の組織票こそが必要だったのだ。

 こうなると国民民主党は、表立って小池氏支持を打ち出すのは難しい。玉木氏は6月11日の記者会見で「あまり(自民党に)抱きつかれても、小池さんも困るんじゃないですかね」と述べたが、もはや恨み節にしか聞こえない。

 このように振り返ると、維新も国民民主党も以前の選挙で小池氏と強いつながりがあったことが分かる。その小池氏が3選を目指す都知事選で、彼らは少なくとも表立って結集できない。かつて野党勢力の「バラバラ感」がやたらと強調されたが、現在のトレンドはむしろ「保守系勢力のバラバラ感」に移っている。

 政治の潮目が変わったと思う。結局、与野党の間をうまく渡り歩いて美味しい汁だけ吸おうとする「第三極」勢力は、立憲という野党の「核」が確立されると、こうして存在意義を失ってしまうのだ。