「本質の異なる二つの問題を一緒くたにすることで、最高裁がヤジ排除を合憲と判断し、表現の自由が奪われてしまうのではないかと危機感を持っている」

 

 

 2019年夏の参院選で、街頭演説中の安倍晋三首相(当時)にヤジを飛ばした市民らが北海道警の警察官に排除された問題をめぐり、道に慰謝料などを求める訴訟の原告らが17日、札幌市内で会見を開いた。政治団体「つばさの党」による選挙妨害事件と混同した報道が散見されるとして、マスコミ各社などに正確な情報発信をするよう求めた。

 

 ヤジ排除問題をめぐっては、排除された市民のうち男女2人が道を相手取り、表現の自由を侵害されたとして提訴。一審・札幌地裁判決は2人の排除を表現の自由の侵害と認めたが、昨年6月の札幌高裁判決は男性に対する警察官の行動については適法と判断し、原告被告ともに最高裁に上告している。

 

 今年4月の衆院東京15区補欠選挙で、「つばさの党」が拡声機で大声を出すなどして他陣営の街頭演説を妨害する事件があり、「ヤジ排除を表現の自由の侵害と認めた司法判断が、選挙妨害の取り締まりを萎縮させた」といった内容の報道が一部でなされた。
 この日、原告らや弁護団が報道に反論する意見書を公表。表現の自由を理由にいかなるヤジも合法だと主張しているわけではない▽ヤジ排除問題について、市民個人による肉声のヤジであり、街頭演説の聞き取りが困難になった事実はなく選挙妨害の罪は成立しない▽被告側も選挙妨害を主張しておらず、訴訟では警察官による排除行為の違法性が争点となっている――などとして、「ヤジ排除問題との関連性は乏しく、選挙妨害事件に対する取り締まりを萎縮させたと考えることはできない」と主張した。

 原告の一人、桃井希生さん(28)は「本質の異なる二つの問題を一緒くたにすることで、最高裁がヤジ排除を合憲と判断し、表現の自由が奪われてしまうのではないかと危機感を持っている」と話した。(上保晃平)

 

 

「ヤジ排除問題」の原告弁護団、政治団体「つばさの党」の代表らが選挙運動を妨害した事件は「根本的に違う事案」と主張

 
政治団体「つばさの党」の代表らが選挙運動を妨害した事件で、札幌市で起きた「ヤジ排除問題」の原告弁護団がマスコミに対して声明を出しました。

4月に行われた衆議院東京15区の補欠選挙では「つばさの党」の代表、黒川敦彦容疑者ら3人が、公職選挙法違反の疑いで逮捕されました。

この事件を受けて、22019年に札幌市で起きた当時の安倍総理への「ヤジ排除問題」の弁護団は17日、一部マスコミが「ヤジ排除問題」の司法判決が、警察による取り締まりを委縮させたという報道に対し、正確な報道をするよう求めました。

公職選挙法の自由妨害罪については、拡声器などを使って選挙の演説を妨害し、聴衆が演説を聞き取ることを困難にしてはならないという最高裁の判例があります。

弁護団は「ヤジ排除問題は市民が肉声を上げたもので、裁判でも自由妨害罪が争われていない。根本的に違う事案だ」と主張しています。