「人権侵害の防止・是正の担保もない」

外国人労働者を食い物にする悪質なブローカーや監理団体を野放しにしたまま、育成就労に派遣形態を解禁することは「新たな搾取の仕組みになりかねない」

 

 外国人労働者が日本で長く働き続けられるようにする「育成就労」制度の創設を盛り込んだ入管難民法などの改正案が14日の参院本会議で賛成多数で可決、成立した。途上国への技術移転を掲げて30年続いた「技能実習」制度を廃止し、人材育成とともに労働力の確保を目的にうたう。公布から3年以内に施行される。

 

 育成就労の在留期間は原則3年。技能や日本語能力が一定の水準に達すれば、最長5年の在留が可能な在留資格「特定技能1号」に移行できる。帰国を前提にした技能実習制度の対象職種は特定技能の分野とずれがあり、実習後に働き続けられないケースがあった。新制度では、長期就労を促すため、対象をそろえる。

 技能実習制度は、職場の変更(転籍)が原則認められず、ハラスメントや低賃金などの温床になっているとの批判があった。劣悪な環境に置かれた実習生の失踪も後を絶たなかった。育成就労制度では、労働者としての権利保障をめざし、本人の希望に応じて就労1~2年で同じ分野内での転籍を可能とする。

 永住者の増加を見据え、税金や社会保険料を故意に支払わない場合などに、永住許可を取り消せる規定が盛り込まれ、永住者の地位を不安定にしかねないとの懸念がある。(久保田一道)

 

 

永住資格取り消し削除を

共産党が修正案 入管法改定原案可決

参院法務委

 
 
 外国籍住民の永住許可の取り消しや「育成就労制度」の創設などを盛り込んだ入管法・技能実習法改定案が13日の参院法務委員会で、自民、公明、維新、国民などの賛成で可決しました。日本共産党、立民は反対しました。
 
 日本共産党の仁比聡平議員は改定案に対する修正案を提出しましたが、否決されました。修正案は▽故意に公租公課(税金や社会保険料)の支払いをしないことなどを永住資格の取り消し事由とする規定の削除▽国や自治体職員の入管への通報を定める規定の削除―などの内容です。

 仁比氏は修正案の趣旨説明で、改定案は最も安定した在留資格である永住許可について、「軽微な義務違反の摘発や通報を契機として取り消しうる不安定な地位へと百八十度変えようとするものだ」と指摘。政府から立法事実は最後まで示されなかったと批判しました。

 仁比氏は「国家にとって好ましい振る舞いをしない永住者に対し、生殺与奪の権を握ろうとするものであり、深刻な外国人差別、抜きがたい排外主義の現れだ」「永住者の生活を萎縮させ、外国籍住民全体の地位を不安定にしかねない」と述べ、永住資格取り消しなどの削除を求めました。

 改定案に対する反対討論で仁比氏は、育成就労制度について、深刻な人権侵害の温床となってきた技能実習制度の看板の掛け替えですらなく、「人権侵害の防止・是正の担保もない」と指摘。外国人労働者を食い物にする悪質なブローカーや監理団体を野放しにしたまま、育成就労に派遣形態を解禁することは「新たな搾取の仕組みになりかねない」と批判しました。

 

入管法・技能実習法改定案

人種差別的摘発 共生に逆行

参院法務委 仁比議員ただす

 
 日本共産党の仁比聡平議員は参院法務委員会での質問で、入管法・技能実習法改定案、すでに施行された改定入管法を巡り、政府の姿勢をただしました。
 
 13日の同委員会で仁比氏は、入管法・技能実習法改定案について、永住許可取り消し事由とする「義務違反」の端緒をつかもうとすれば、入管庁と警察による人種差別的な防犯・捜査活動は免れないと指摘し、永住許可取り消し規定の削除を強く求めました。

 仁比氏は、人種や肌の色を理由に犯罪傾向があるとみなす「レイシャル・プロファイリング」に基づく職務質問が横行していると指摘。東京弁護士会が2022年9月に公表した調査報告書では、回答者2094人のうち、6割が過去5年間に職質を受けており、「いきなりズボンを脱がされ、下のものを見られた」「敷地から10歩も離れていないごみ箱で声をかけられ、交番まで連行された」などの事例を紹介。仁比氏は「在留資格があるのに、こういう仕打ちをするのか」とただしました。

 小泉龍司法相は「法務省の所管外だ」とはぐらかしました。仁比氏は「警察は摘発したら入管庁に照会する。警察と入管が密接に連携しなければ、『義務違反』の端緒さえつかめない。別々だという話は成り立たない」と厳しく批判しました。

 仁比氏は、横浜華僑総会の曽徳深顧問に対し、横浜市の担当者が「一緒にまちづくりをしてきた仲間。(滞納は)国籍にかかわらず、粛々と徴税の手続きを進めればいい」と述べたとの報道(神奈川新聞、13日付)を紹介。「これが当たり前の姿だ。住民と自治体の共同にくさびを打ち込み、(永住権を)入管の手のひらに乗せることは共生への重大な逆行だ」と主張しました。

改定入管法
強制送還 人道に反する
 11日の同委員会で仁比氏は、前日に施行された、難民認定申請中の強制送還を可能にする改定入管法について、「ベルトコンベヤーのように、強制送還を行ってはならない」と迫りました。

 小泉法相は11日の質疑で、退去強制令を受けている非正規滞在者のうち、日本で生まれた子ども201人とその家族について「1家族を除いて結果は出ている。在留特別許可する方には告知を終えた」と述べ、許可しない人への告知は仮放免期限の出頭の際に告知していくと初めて明らかにしました。

 仁比氏は「『子どもを置いて帰れ』『親は別だ』など、あまりにむごいやり方だ。日本生まれか、学齢期かで線引きしており、人道に反する」と強く抗議しました。

 小泉法相は、3月に改定した在留特別許可ガイドラインで、家族が一緒に住むことの重要性も書き込んだとして「柔軟に運用することで対応できるケースもあり得る」と述べました。

 仁比氏は、日本政府と入管庁が「国際人権法を含めたルールを守っていない」と批判し、人道に基づく丁寧な審査を行い、速やかに在留特別許可を出すよう求めました。