協会はテレビ各社にケンカを売るように「放映権をよこせ」と迫り過去最高益「5億円超」を叩き出した【女子ツアーの裏で蠢く火種と禍根】

 
 
 日本女子プロゴルフ協会は今年3月の総会で2023年度決算を承認、過去最高益となる5億円超の黒字になったことを発表した。これまでは18年度の約2億円が最高だったが、今回の過去最高益は大会主催者にあった放映権をすったもんだの末に22年から協会が奪い取り、収入となって計上されたのが大きい。
 
 協会は放映権獲得にあたり、まず各主催者へ有料のネット配信を協会帰属に認めさせた。

「配信権は協会がゴルフ中継の番組を制作してインターネットで配信することです。ネット配信の権利は高く売れると見込んでいたのです」(テレビ局関係者)

 小林浩美会長はその際、「協会に配信権帰属を認めてくれたら(ネット放送は)20億円でも30億円でも売れる。そうすれば主催者には500万円を配ることができる。だから協会に渡して欲しい」(主催者)と提案した。

 だが、「30億円で売れる」と豪語した配信料収入は達成しておらず、主催者に配るはずだった500万円の話もいつのまにか消えている。協会はいまインターネット中継をDAZNとユーネクストの2社と契約する(当初GOLF TVと契約するもすでに配信停止)が、「ネット配信が1社独占でないということは配信料収入も高くないことがわかります」と前出のテレビ局関係者は言う。そこで主催者から地上波、BS、CSの放映権も奪い取ったことが、最高益につながったわけだ。

 放映権とはテレビ局が大会中継を独占的に放送する権利のことであり、そのためにテレビ局は主催者に放映権料を支払う義務が生じる。だが、実際には主催者がテレビ局から放映権料を手にすることはほとんどなく、主催者が大会経費に上乗せしてテレビ局に中継を依頼するケースがほとんどだった。ようするに大会開催のために主催者は賞金を用意し、会場を借りたり、ギャラリースタンドやトイレなど施設を準備したり、テレビの中継費用までも負担。だから、大会開催には総賞金の2倍から3倍のカネがかかるといわれる。

「もちろん米女子ツアーも放映権は協会に帰属しており、放映権料は大きな収入の柱になっている。なぜ日本は違ったのか、といえば歴史が異なる。日本の女子プロゴルフはAON(青木・尾崎・中嶋)人気の男子ツアーの陰に隠れて長く不人気だったからです。放映権料を手にできるコンテンツとはいえず、協会はテレビ局に中継をお願いする立場だった。テレビ各社が長く日本女子ツアーを支えてきたともいえる。そんな背景に目をつむって小林会長はテレビ各社にケンカを売るように放映権をよこせと迫り混乱を招いたのも事実です」(ツアー記者)

 小林会長は強引だった。

「放映権の協会帰属を認めないのなら大会開催を公認しない」と主催者に高圧的に迫り、一時、テレビ局主催の3大会をツアー日程から外す強硬手段に出たこともあった。

 主催者は人気のプロアマ開催と引き換えに、放映権を手放すことになったが、「当初の説明と話が違う。単純に大会主催者側の負担が増えただけなのです」(前出のテレビ局関係者)。

 複雑なカネの動きを解き明かすのは難しいが、それも協会の非開示のせいだ。協会にとって都合のいい情報は声高に発信する一方で、不都合な情報は表に出さない。そんな不誠実な体質では小林会長が進めるツアー改革は思い通りにいかない。

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 本文中にあるスポンサー企業との衝突もそうだが、協会肝煎りのゲームアプリ開発は頓挫するなど問題は山積だ。

 

協会の強硬姿勢が招いた「15大会消滅」の危機…杜撰なツアー改革構想が女子プロの職場を奪う【女子ツアーの裏で蠢く火種と禍根】

 
 
 トーナメントの主催者(スポンサー企業)に特別協賛会社になってもらい、日本女子プロゴルフ協会(小林浩美会長)がツアーの全権を握ったうえで、1大会の冠料3億5000万円を手に入れる──。2025年シーズンからスタートさせる予定だったその計画は、2年先送りとなり、27年シーズンからのスタートを目指すことになった。
 
 今年1月には協会に支払う公認料を来年から600万円アップの「1300万円にする」と各主催者に通達もあった。

 華やかな試合が繰り広げられるツアーの裏で重大な事案が進行しているが、協会から詳細なアナウンスは一切なく、主催者の不信感は募るばかりだ。ゴルフファンやメディアばかりでなく当事者である女子プロにも一切知らされていない。

 そして4月末に協会主催試合を除く、ほぼ半数の15大会の主催者が「公認料値上げの明確な理由を示せ」としながら、「主催権返上は受け入れない」との抗議文書を協会に送る事態となり、両者の対立が水面下でより激化している。

「(特別協賛会社に移行する)2年延期の理由を主催者が求めても協会が一切答えないことは問題です。その理由、課題が分かれば主催者サイドも落としどころを考える姿勢はあるのですが、何の説明もなければ協会との距離は縮まらない。主催権返上についても、これまで社内に持ち帰って報告してきた経営トップに対してはしごを外す形になり、問題は積みあがるばかり、と感じております」(主催者)

■GMOと楽天が大会から撤退

 各主催者の協会への猜疑心は今に始まったわけではない。放映権問題では、協会と対立した大会が撤退した。21年「GMOインターネット・レディース」だ。インターネット中継は有料しか認めないという協会の強硬姿勢に主催者があきれたからだ。協会のやり方と違う大会主催者には「やめてもらって結構」とばかりに排除の論理が鮮明になり、この時から「協会とは歩み寄って話し合いができない」(大手広告代理店関係者)というイメージが広まった。

 特別協賛会社移行にも不安を感じている。

 協会が主催する看板大会で、楽天グループの特別協賛で21年からスタートした「楽天スーパーレディース」も、たった3年で終わった。

「楽天GORA会員を対象にイベントを開催し、ツアーと同じコース設定でプレーしてもらう予定だったが、ピン位置は協会に権利があり、イベント開催は許さないと横やりが入って中止になった。試合会場を決める際にも一悶着あり、協会は融通が利かない。大会開催はあまり意味がないとツアーからの撤退を決めた」と、大会関係者は証言する。

「主催権を返上して特別協賛会社になったら、どんな無理難題を協会から突き付けられるかわからない。協会から丁寧な説明がなく、言われる通りに特別協賛になる、とは簡単に返事できない」(主催者)

 GMOインターネット、楽天スーパーレディースの後釜スポンサーはまだ見つからず、空き週のままだ。ツアー改革を唱える協会の強引な手口のせいで、会員である女子プロが賞金を稼ぐ“職場”を奪っているともいえる。

「15大会の主催者が抗議文を送り、ツアーから消滅する可能性もあるという危機感を女子プロも持った方がいいでしょう」(ツアー関係者)

 今年3月に小林会長が胸を張った“5億円の黒字”にも疑問の声が寄せられている。 

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 本文中にあるスポンサー企業との衝突もそうだが、協会肝煎りのゲームアプリ開発は頓挫するなど問題は山積だ。
 
 
なぜ15大会のスポンサー企業は日本女子プロゴルフ協会に“抗議文”を送ったのか
 
 
 毎週のようにフレッシュな女子プロが活躍し、華やかな試合が繰り広げられている女子ゴルフツアー。その裏で日本女子プロゴルフ協会(小林浩美会長)は多くのトラブルを抱えており、表の顔(ツアー競技)と裏の顔(協会運営)がまったく違う。

 協会は2025年から、各トーナメントの主催者(スポンサー企業)に主催者ではなく特別協賛会社になってもらい、ツアーの全権を握る計画を3年前に立てた。

「そして、来年から協賛金として1大会3億5000万円の冠料を手にする予定だった」(大手広告代理店)

 ところが多くの主催者はメリットのない主催権返上に猛反対し、協議が難航。しかたなく協会は当初予定を2年延期して2027年からと主催権問題を先送りした。

 すると今年1月に主催者を集めた会議で、「来年から公認料を上げる。よろしく」と通達した。公認料は企業が大会を主催するために協会に支払う費用だが、協会の今回の新たな通達は各主催者へのお願いでもなければ、説明も一切ない。主催権を返上しないから、公認料を上げると言わんばかりに一方的だった。
 
 その額は今年の700万円から一気に1.85倍増の1300万円。「いきなりの値上げに驚いている」(主催者)というのも無理もない。

 協会の主催試合は「ワールドレディス選手権サロンパスカップ」「日本女子プロゴルフ選手権」「ツアー選手権リコーカップ」の3大会だけ。同じ国内メジャーの「日本女子オープン」は日本ゴルフ協会の主催で、その他の33大会にはそれぞれ主催企業がいて、毎年大会が行われている。

 主催権のない大会では女子プロ協会は、主催者から公認料を受け取り、協会会員の女子プロや競技委員、事務方スタッフを試合会場に派遣する主管業務団体にすぎない。だから公認料が協会の収入源の柱のひとつだ。

 小林会長は2011年に会長に就任すると「手っ取り早くカネになる手段」と見たのか、立て続けに公認料を上げてきた。

 14年に250万円から500万円へ倍増。その3年後の17年には700万円に上げた。

「その時は小林会長から必要経費が上がっているので公認料を上げて欲しいと主催者にお願いがありました。当時ですら“えっ?”と金額の大きさに驚き、疑問の声も上がったのですが、みんなで女子ツアーを盛り上げていこうと了解したのです」(主催者)
 
 しかし、今回は公認料値上げの理由が何も主催者に伝えられていない。

 協会サイドの値上げの根拠は選手のスタッツがよくなっているから、とみられる。昨年暮れに小林会長は、「平均ストローク上位50人がアンダーパーとなりました。これは、過去初めてだと思います。選手の力がグングン毎年伸びているのが分かります」とハイレベルな大会だから公認料値上げも当然と言いたかったようだ。

 一方的な協会の姿勢に主催者もついに動き始めた。4月末に協会に対し「公認料値上げの明確な理由を示せ」としながら、「主催権返上は受け入れられない」の抗議文書を送った。その数は今のところ協会主催の大会を除く、ほぼ半数の15大会にも及ぶ。