政府が進める日本学術会議の法人化方針は同会議の社会的役割を「根本において危うくする」として、歴代会長6氏が岸田文雄首相に対し、政府主導の動きを改め、同会議の独立性を尊重するよう求める連名の声明を10日発表しました。

 

 学術会議の組織改変を狙う政府に対する歴代会長の声明は昨年2月に続き2回目。前回名前を連ねた吉川弘之、黒川清、広渡清吾、大西隆、山極寿一の5氏に梶田隆章前会長が加わりました。

 政府の法人化方針は、外部者が学術会議の会員選考や運営に関与する委員会や、主務大臣任命の外部者による評価委員会や監事を新設し、財政基盤を多様化することが柱です。

 6氏の声明は、昨年政府が国会提出を狙った日本学術会議法改悪案より「はるかに深く」同会議の「独立性および自主性に手をつけるもの」だと批判。「政府から独立するための法人化」という政府側の名目は、首相による会員任命拒否を正当化するためのものではないかと指摘しています。学術会議が75年の歴史を踏まえ、よりよい役割を発揮するには、より長期的で公平な仕組みのもと、社会や国会での議論が必要だとしています。

 黒川、広渡、大西、山極、梶田の5氏は同日、日本記者クラブで会見。梶田氏は、内閣府の有識者懇談会とその作業部会での議論について、手段にすぎない法人化が目的化していると批判し、「理念なき法人化が日本の学術の終わりの始まりになることを強く懸念している」と述べました。広渡氏は有識者懇の議論を止めるために声明を出したと強調。「改革は学術会議自身がやるべき問題だ」と訴えました。


 

「学術の終わりの始まり懸念」梶田隆章氏ら学術会議の歴代会長が声明

 

政権は最後の仕上げとして「経済秘密保護法」を成立させ、その曖昧な対象になる範囲には『大学・研究者を防衛研究へ」を画策する。民間だけでは研究開発に限界があるので、大学、大学生を使う。大学「改革」で軍事研究に全学翼賛体制が2023年臨時国会で成立している。

こんな危機が大学に蔓延している。政権に坑がう大学、教員、研究者は排除していくのである。遺憾の声明が出るの当り前である。

 

 日本学術会議を法人化する方向で政府が議論を進めていることに対し、学術会議の歴代会長6人が10日、岸田文雄首相に「政府主導の見直しを改めることを要望する」とする声明を発表した。前会長の梶田隆章・東京大卓越教授は記者会見で「日本の学術の終わりの始まりになることを強く懸念する。極めて危うい」と述べた。

 声明では、法人化の方針について、2020年に発覚した政府による会員6人の任命拒否問題を「正当化するためのものと疑われる」と批判した。

 また、会員選びに外部有識者が意見を述べる「選考助言委員会」を設ける案についても、「学術会議の独立性および自主性に手をつけるもの」だと懸念を表明。学術会議のあり方は、社会や、与野党を超えて国会で議論すべきだとの考えを示した。

 元会長らが声明を出すのは昨年2月に続き2回目。10日の会見で、広渡清吾・東京大名誉教授は「政府の議論を止めるためのものだ」と述べた。

 山極寿一・京大元総長も「政府の言うことを聞かなければならないというのはナンセンス。税金を使うからこそ、政府方針ではないことも、国民のために政府に提言するのが学術会議の役割だ」と語った。(竹野内崇宏)