人権蹂躙を平気でやってしまう日本の実態

 

 

 難民申請中の人を強制送還する可能性もあるなど、外国人管理を強化する改正入管難民法が10日、施行された。政府は本当の難民は保護するというが、難民審査態勢は国際基準からかけ離れたまま。難民申請中の人たちは同日、国会での集会で、強制送還の恐怖を訴えた。(池尾伸一)

◆国は「2回目までに適正に保護される」というけれど
 「このところ3時間ぐらいしか眠れない。送還されれば間違いなく命の危険にさらされる」。イラン国籍のサファリさん(55)が悲痛な声を上げた。母国で政治運動に加わり、何度もむち打ち刑を受けた。だが、日本では難民と認められず、現在3回目の申請中だ。

 

 改正法で出入国在留管理庁(入管庁)は、3回目以降なら申請中でも強制送還する可能性がある。サファリさんは移行期の特例で、今の申請の結論が出るまでは送還されないが、不認定が確定すれば、強制送還の対象になり得る。
 入管庁は「保護すべき人は2回目までに適正に保護される」という。だが、最近の裁判例でも、難民審査には疑念が生じている。今年1月、名古屋高裁はミャンマーでの軍の弾圧から逃れた少数民族ロヒンギャの男性を難民認定する判決を出したが、この男性は来日した2007年以降、4回申請し、いずれも不認定とされていた。

◆「収容されたまま送還される人が増えるのでは」
 日本の2022年の難民認定数は202人で、認定率は2%。4万6000人を認定したドイツ(認定率20%)や米国(45%)など他の先進国に比べ「難民鎖国」の状態が続く。

 

 

 改正法が導入した「監理措置」も、当事者らは警戒する。在留資格のない人を入管施設から一時的に解放する措置で、後見人となる監督者は、就労を見逃した場合などに過料が科せられる。このため現行の「仮放免」に比べて監督者のなり手が激減し、収容が長引く恐れがある。収容施設ではインターネットが使えず、外部との連絡が制限され、難民申請の準備も難しい。

 入管難民法に詳しい駒井知会(ちえ)弁護士は「母国を逃れても空港で収容され、難民不認定の結論を出されるケースが増えている。収容されたまま2回目の不認定処分が確定し、送還される人が増えるのではないか」と指摘した。