報道特集
小池都知事肝いりの政策、都庁の壁一面を彩るプロジェクションマッピング。今年度は予算9億5000万円。
その足元で毎週食料配布の支援を行うNPO理事長「目の前に今、足元に並んでいる800人の方の状況をまず未て欲しい、知って欲しい」。

 

 

小池都政2期8年 任期満了前に“是非”を検証 五輪レガシーの維持費は 神宮外苑の再開発 関東大震災の「追悼文」取りやめは【報道特集】

 

 

 
東京都の小池知事が2期目の任期満了を迎えるのに伴って来月7日、都知事選が行われます。私たちは8年にわたる小池都政の是非をあらためて検証しました。

小池都政"肝いり政策" 都庁を彩るプロジェクションマッピングの足元で…
 
山本恵里伽キャスター
「午後8時を過ぎました。東京都庁第一本庁舎には今、クジラが映し出されています。外国人観光客含め、たくさんの方が見に来ています」

都庁の壁一面を彩る、プロジェクションマッピング。

小池都知事肝いりの政策として、2024年2月に始まり、今年度は9億5000万円の予算が投入されている。

その足元では、毎週800人ほどに食糧配布の支援が行われている。主催するNPOは…
 
 
自立生活サポートセンター・もやい 大西連 理事長
「目の前の今、足元に並んでいる800人の方の状況をまず見てほしい、知って欲しいというのが率直な思い。都民の方で生活が苦しい方がたくさんいて、まだ支援が届いていない方が多くいらっしゃるという状況に対して、足元の人の生活をどう支えるのかということは、すごく大事にしてほしいという思い」

間もなく、2期目の任期満了を迎える小池都知事。7月の知事選を前に、8年間の都政を検証した。

小池都政を振り返る 「密です」「ステイホーム」「子育て支援」初の女性知事の誕生
2016年、初の女性都知事となった小池氏。
 
2期目をかけた2020年の都知事選では、史上2番目の得票数で圧勝した。

小池百合子東京都知事(2020年)
「密です!密です!」

印象に残るのは、コロナのキャッチフレーズだ。
 
小池百合子東京都知事(2020年4月)
「“ステイホーム”おうちにいましょう」

小池百合子東京都知事(2020年5月)
「“東京アラート”を発動いたします」

小池百合子東京都知事(2020年5月)
「“ウィズコロナ”宣言」

政策では、特に“子育て支援”で、東京都独自の政策を次々と打ち出した。
 
都内に住む0歳から18歳を対象に、所得制限を設けず、1人あたり月額5000円の給付をする「018(ゼロイチハチ)サポート」や・・・

高校授業料の実質無償化についても、2024年4月に所得制限を撤廃した。
 
小池百合子東京都知事(2024年1月)
「経済的な状況に関わらず、子どもたちが自らの思いで進路を選択できる、そのような東京を実現してまいります」
 
元鳥取県知事に聞いた 小池都政の評価
小池都政2期8年を知事経験者はどう評価するのか。

元鳥取県知事の片山善博氏に聞いた。

日下部正樹キャスター
「良かったこと悪かったこと、まず思いつくこと、どういうことがありますか」
 
元鳥取県知事 片山善博氏
「新型コロナが感染を始めた時に、東京都が中小企業の皆さんに休業の要請をかけた時に協力金を出すことにしたんですよね。その後全国的にもそれが広がったんですけれども、これはとても良かったと思います」

一方、評価できない点としては…
 
 
元鳥取県知事 片山善博氏
「自らが話題になるとか目立つとか、支持に繋がるとか、そういうことにずいぶん注力をされているのではないかなという事が気になりますよね」
 
片山氏が、その特徴の表れだと指摘したのが、2024年3月までに東京都の全750万世帯に配布された、防災ブックだ。

 
元鳥取県知事 片山善博氏
「2冊ずつ世帯に配られたんですね、我が家に来ました。かなり分厚いもの。開いてみると、知事の大きな顔写真が出てくる。何のためにやっているのだろうかと」

都によると、防災ブックに添えられた小池知事のメッセージや案内文は全世帯分750万枚印刷され、費用は約1200万円になったという。

さらに批判を浴びている都政の問題とは…
 
「明治神宮外苑の再開発」どうなる?
東京都民だけでなく、世界から批判の矛先が向けられたのがいちょう並木で有名な明治神宮外苑の再開発だ。
 
明治神宮や三井不動産などが事業者となり、神宮球場と秩父宮ラグビー場は老朽化のため建て替えられる。球場の隣には超高層ビルが2棟建てられるという。

再開発には作家の村上春樹さんなど著名人も反対の声を上げた。
 
音楽家の坂本龍一さんは、がんで闘病中、手紙で計画の見直しを求めたが小池都知事は、こう答えていた。
 
小池百合子東京都知事
「事業者である明治神宮にも手紙を送った方がいいんじゃないか」

その再開発は進むのか、先週の港区長選の結果が注目を集めている。

小池百合子東京都知事「おめでとうございます」
清家愛氏「どうもありがとうございます」
 
初当選した元港区議の清家愛(せいけ・あい)氏。
 
 
選挙戦の中で、再開発に対し慎重な立場を示してきた。

事業者が開発の際に行う港区内の木の伐採は区の許可が必要とされているのだが…
 
山本キャスター
「港区に属するエリアもありますよね。申請が来た場合に許可はされますか?」
 
港区長に就任予定・清家愛氏
「皆さんの意見を聞きながら進めていく必要はある。(樹木が)守れるものなのか検証もきちんとしなきゃいけない。きちんとした説明がないまま進めることは絶対あってはいけないし、そういうことは認められないと思っている」
 
約30年前からこの近所で暮らしている近藤良夫さん。再開発に反対してきた。
 
北青山一丁目住宅自治会 近藤良夫会長
「ぜひ残してほしい。これから将来にわたって、東京が誇れる景観でもある」

そもそも神宮外苑は、約100年前、国民からの寄付金や献木などによって造られた。

戦後は「都市計画公園」に指定され、高層ビルの建設といった大規模な開発は制限されてきた。
 
事業者は「4列のいちょう並木を守る」と言うが、景観が変わってしまうのではないかと不安を感じている人も多い。

都など行政が開いた説明会では・・・。

北青山一丁目住宅自治会 近藤会長
「参加者が多数いて時間オーバーで後日説明会を開いてくれと言ったが『もうできない』『もう、これ決まったことですから』と」

住民の納得が得られないまま、小池都知事は神宮外苑の一部の公園指定を解除し、超高層ビルが建てられるように変更。事業者の再開発を認可した。
 
北青山一丁目住宅自治会 近藤会長
「いつの間にか東京都が方針を変えて、この地区を再開発の目玉というか、そういうふうにしようと。住民が参加する計画というのが根底にない。行政の怠慢というか東京都のこの開発は暴走だと思っている」

批判を浴びていることに対し、都知事は・・・。
 
小池百合子東京都知事
「都は条例・答申に従って適切に手続きを進めて参る。事業者においては樹木の保全にしっかり取り組む。そして内容などについて分かりやすい情報発信に努めていただきたい」
 
「今のままだとどんどん金をつぎこむだけ」東京オリパラの会場めぐり問題も
東京オリンピック・パラリンピックのために建設された競技会場をめぐる費用についても、問題になっている。
 
小池百合子東京都知事(2019年)
「オリンピック・パラリンピックのムーブメントをレガシーとして残していく」

開催にあわせ、6つの競技会場が総額1375億円をかけて新たに建設されたのだが、大会後も、多額の維持費用がかかり続けている。
 
303億円をかけた「海の森水上競技場」では、年間1億6000万円の赤字になると試算されていたが(2017年公表資料より)、報道特集は、さらに維持費を押し上げる問題について報じていた。

膳場貴子キャスター(2021年9月18日放送)
「期間中だけでなく大会後もかかり続ける費用を検証します」

5.6キロにわたって設置された、黒い筒状の「消波装置」。
 
大会前に「消波装置」に大量の牡蠣が付着して沈んでしまい、波を消す効果が失われた。

都は2019年、1億4000万円をかけて付着していた牡蠣を取り除いたというのだ。
 
これは報道特集が新たに入手した、2023年度と2024年度の都の予算関係資料だ。「事務上の参考とするための内部資料」とされている。

2023年度の資料には「消波装置維持管理工事」という名目で、3億90万円が計上されていた。「消波装置の維持管理工事」とは何なのか。

6日、「海の森水上競技場」を再び尋ねると…

村瀬健介キャスター
「牡蠣などの貝が付着するということで、このように、消波装置にシートがかけれられています」
 
3年前に牡蠣が付着していた網目を覆う形で、白いカバーがかけられているのが分かる。次々と付着する牡蠣を取り除く費用を抑えるために、「消波装置」にカバーをかける工事が行われていたのだ。

表面にある網目に波を打ち消す効果があるとされるが、これを覆ってしまったことについて、消波装置の技術者は・・・

消波装置 技術者
「シート(カバー)で凹凸がなくなる。効率というか『消波能力』は落ちるのでは」

ーーカバーによって「消波機能」が落ちる。粗末な段取りのようにも見えるが…
 
消波装置 技術者
「『消波』を期待するのであればカバーは使うごとに外さないといけないと思う」

ところがこのカバーにも、牡蠣が付着するというのだ。

確かに「消波装置」のカバーに近づいてみると・・・
 
村瀬キャスター
「波消装置の端に牡蠣のようなものがついているのがわかります」

 

カバーに付着する牡蠣などを取り除くためなのか、番組が入手した今年度の予算関係資料には「消波装置清掃委託」という名目で1500万円が計上されている。

実は大会前から、東京オリンピックのために「海の森水上競技場」を新たに建設することについては、競技関係者から反対の声も出ていた。

 

埼玉県のボート競技関係者
「(海の森水上競技場は)まず一番最初に風の問題、それから海水。そういうことを考えるとあまり適していない」

村瀬キャスター
「具体的にどういう問題があるんですか?」

埼玉県のボート競技関係者
「横風で波が来ると返し波が来る。波消しの『消波装置』が必要になる」

この戸田漕艇場を会場にしていれば、これらの問題もなく、消波装置に関する費用も生じることはなかった。

小池都知事が大会をレガシーとすることについて関係者は・・・

 

埼玉県のボート競技関係者
「もう少しあの場所(海の森水上競技場)を考えて造ってもらえれば、レガシーとしては意味があったのではないかと思う。今のままで何とかしようとすると、どんどん金をつぎ込むだけになる」

海の森水上競技場の維持費をどう考えているのか。

都は取材に対し、カバーの設置に約1億5000万円かかったことを認めたうえで、こう回答した。

 

都の回答
「工夫により、維持管理費を年平均7,000万円に圧縮しました。今後、生物の付着状況などを踏まえ、維持作業の頻度を見直し(中略)令和6年度は清掃費として約2,000万円を見込んでいます」

 

1974年から続いた関東大震災の「追悼文」取りやめ

歴代の都知事は、東京都慰霊堂で営まれる大法要とは別に、隣で開催されている朝鮮人犠牲者の追悼式にも追悼文を送ってきた。

 

大災害の混乱の中、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマを信じた人々によって数多くの朝鮮人が虐殺された。その数、数千人とみられる。

 

これまで、知事の追悼文には「わが国の歴史の中でも稀に見る、誠に痛ましい出来事」「不幸な出来事を二度と繰り返すことなく語り継いでいかなければ」などと記されてきた。

日朝協会東京連合会  宮川泰彦会長
「これが舛添さん、その前が猪瀬さん」

 

 

追悼式を主催してきた日朝協会によると、追悼文は美濃部知事時代の1974年から毎年送られてきたという。

小池都知事は、就任した最初の年は送ったものの、2017年からとりやめた。

 

 

小池百合子東京都知事(2017年)
「(大法要の方で)関東大震災で犠牲となった、すべての方々への追悼の意を表した」

その年から式典の様子は一変した

 

 

朝鮮人虐殺を否定的にみる団体「そよ風」が追悼式の20メートル先で「死者数に根拠がない」「虐殺は嘘」などと主張する集会を新たにはじめたのだ。

2019年には「不逞朝鮮人によって家を焼かれた」などのヘイトスピーチも行われた。

 

小池都知事は、かつて、この団体の主催する講演会に講師として呼ばれていたこともある。
  
追悼式の実行委員長を務める宮川さんは、毎年知事に追悼文の再開を求める要請を続けてきた。

 

 

日朝協会東京都連合会 宮川泰彦会長
「都側の反応は担当の事務局しか出てこなくてきわめて事務的ですね。自然災害で亡くなった人、人の手によって命を奪われた人、その弔い方というのは違う」

追悼文を送らない理由について知事の回答は、毎年、判をおしたような内容だ。

 

小池百合子東京都知事(2021年)
「理由は、去年述べたことと変わっていない」
小池百合子東京都知事(2023年)
「この考えは引き続き変わらない」

日下部キャスター
「宮川さんは、追悼文を知事が出すことの意味ってなんだと思いますか」

日朝協会東京都連合会 宮川泰彦会長
「やはり自治体の長が、歴史的な事実、恥ずかしいことだったかもしれないけれど、それをきちんと認める。同じことを二度と絶対に繰り返させない。そのことを自治体の長の言葉として訴えていく。そうしたことを示す意味はある」

 

都知事就任から8年 小池氏どう振り返る?

 

 

東京都知事就任から、まもなく8年。

自身が残してきた"レガシー"を、小池氏はどう振り返るのか

 

日下部キャスター
「小池さん、レガシーと言われますけど、果たして胸を張って、こういうレガシーが残せた、というものはありますか?神宮外苑の再開発や五輪競技施設の維持・管理については"負のレガシー"という都民もいる」

 

小池知事
「018サポートや、高校の授業の実質の無償化、これらの所得制限を外すということについては、私はレガシーの一つで大きいと思います。神宮やオリパラの施設の考え方については認識の差だと思います」

 

日下部キャスター
「認識の差ですか?」

小池百合子東京都知事
「はい」

日下部キャスター
「関東大震災における朝鮮人虐殺の問題ですけれども、追悼文を出さないということは、小池さんは語り継ぐことの重要性、あまり感じていないということなんでしょうか?」

 

小池百合子東京都知事
「東京大空襲など、被災された方々の重要な証言などを受け継いでいる作業も今も行っております」

日下部キャスター
「虐殺については、どうなんですか?」

小池百合子東京都知事
「この東京で亡くなった様々な災害において、空襲も含めてでございますし、そういった方々の霊を安らかにということで、慰霊の行事を毎年、重ねております」

一方、7月7日に投開票が行われる知事選について聞かれるとー。

 

小池百合子東京都知事
「今は、定例議会にしっかり対応していきたい。それに尽きます」