公金を生活費に使うなら政党助成金は廃止すべきで、献金などの収入にも総合課税し、その分物価高対策としての特別減税を政治家にも適用すれば、多少は国民の痛みもわかるのではないでしょうか。

 

 

6月から減税が始まることを政府はしきりに宣伝しています。そして給与明細などに減税分が明記されるよう、企業の経理担当など関係者に指示しています。しかし、この減税の陰に隠れて、すでに様々な家計負担が始まっています。これらについては説明も、給与年金明細に一切明記されません。負担増は「こっそり」、減税の恩恵は「明記」させる政治の姑息さが示されました。

 

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

負担増は「こっそり」、減税の恩恵は「明記」させる姑息さ
6月から減税が始まることを政府はしきりに宣伝しています。そして給与明細などに減税分が明記されるよう、企業の経理担当など関係者に指示しています。

現場はこの事務負担に悲鳴を上げる一方、年金生活者など2か月に1度の年金で支払う税金が少ない人は、最後まで減税で税が減額されるのか、確認するのも容易ではありません。

同じ減税でもありがたみ半減、負担倍増のやり方に問題の指摘がなされますが、この減税の陰に隠れて、すでに様々な家計負担が始まっています。

 

これらについては説明も、給与年金明細に一切明記されません。負担増は「こっそり」、減税の恩恵は「明記」させる政治の姑息さが示されました。

減税は完結するのか不安
そもそも今回の「特別減税」、政治的には最低のやり方となりました。

1人当たり住民税含めて4万円、夫婦子供2人なら1世帯で16万円の減税となり、公費を4兆円あまり使うのですが、評価はさっぱりで、むしろ反感を強めています。政治的には大失敗です。

減税には税率を引き下げる「定率減税」で将来持続的に減税をする形のものと、今回のような1回限りの「特別減税」の2つがあります。経済学の「恒常所得仮説」に則ってみれば、前者は消費に回る分が多く、景気刺激的な効果が期待されます。後者は1回限りの政策対応になるので、一般的には貯蓄に回る分が大きくなり、景気刺激効果は小さくなります。

それでも、昨今のように物価高が続いて貯蓄が大きく目減りし、将来不安を高めている状況では、特別減税で貯蓄の補填ができれば、それも効用となり、不安軽減をもたらせば意味がないわけではありません。

ところが今回のやり方では、このいずれの効果も減じる面があります。

1回にまとまった金が1人4万円分入れば、旅行を計画したり、食事に使ったりするあても出てきます。しかし、毎月の所得や年金で支払う税金がこれによって軽減される形となるため、比較的賃金水準の高い人は、6月の給与と夏のボーナスで税が軽減され、短期間に「減税」が確認できます。

しかし、収入が少なく、ボーナスも限られる人や年金生活者は、1回の収入で税金を引かれる分が少ないために、家族分の「減税」が完結するまでどれだけ時間がかかるかわかりません。家族の分も減税されたのか確認することも容易ではありません。

知らないうちに減税され、減税が終わっていれば、政治効果は期待できません。まして手続きが煩雑な分、家族全員分が完結しなければ不満のもとになります。

 

そもそも「特別減税」と言いますが、勤労者の払った税金分は減税ですが、配偶者や扶養家族の分も1人4万円返すといっても、配偶者や扶養家族自体は所得を得ているわけではなく、所得税を払っていません。

つまり、税金を払っていない人の分の「減税」というのは本質的におかしく、給付金となります。今回の「特別減税」、制度的に矛盾を秘めています。

 

こっそりと負担は増やされていく
特別減税は本来国民が払った税金を、物価高対応のために少し返してもらうだけですが、あたかも政府の金を国民に「おごってあげる」かのように恩着せがましく宣伝する一方で、国民の知らないところで、こっそりと、それもしっかりと負担増が始まっています。6月・7月にはこれがさらに増えます。

まず5月の東京都区部のCPI統計によると、5月の電気代が突然前年比13.1%上昇しています。この電気代、再生エネルギー特別賦課金が5月支払い分から乗ってきたもので、この電気代の負担だけで5月の物価を0.4%押し上げ、それだけ国民の負担が高まっています。こちらは十分な説明がないまま負担増となっています。

 

そして6月からはさらに負担が増えます。まず電気ガスの政府補助が6月は半分になり、これで物価全体を0.23%押し上げます。さらに6月から森林環境税として1人当たり年1000円が住民税に上乗せされます。これもほとんどの国民は知りません。

それだけではありません。6月1日より診療報酬が引き上げられ、これに伴って患者の負担が色々増えます。まず初診料は30円増えて2,910円に、再診料は20円増えて750円に。また入院基本料は1日当たり50円から1,040円増えます。

こういう国民の負担増については、ほとんどの国民が知らないうちに決められ、知らないうちに負担が増えます。

CPI上昇率再拡大
この他、帝国データバンクによると、6月は614品目の食料品が値上げを予定しています。このうちの約3割が円安によるコスト増分の価格転嫁値上げと言います。

 

減税によって物価上昇の痛みを緩和するといいますが、政府自らエネルギー価格上昇抑制策を停止し、医療費の上昇、円安放置のコスト高を演出しています。

4月の名目賃金は大幅賃上げの一部実施で増加率が2.1%に高まりましたが、物価が2.9%上昇して、実質賃金はついに25か月連続下落となりました。4月の物価は最近の中では最も低い上昇となりましたが、それでも実質賃金は前年を0.7%下回っています。

そして5月からは再エネ賦課金による電気代の上昇、6月・7月は政府の電気ガス代の激変緩和措置の終了で0.45%物価が高まります。

 

そして円安によるコスト高から、企業はまた価格転嫁を進め、さらに賃上げによる人件費コスト増を政府の後押しによって価格転嫁するので、間もなくサービス価格中心に賃金インフレも進みます。

1人4万円、総額4兆円余りの減税は年間可処分所得の0.8%程度になりますが、これも物価上昇によってあっという間に消えてしまいます。

 

政治家は個人や団体から献金を受けるうえに、税金から政治活動費(政活費)を私的な生活費として使いながら税金を払わずに済んでいます。

だから物価高による国民の痛みよりも物価高で儲かる企業のためにインフレ推進をしています。

 

公金を生活費に使うなら政党助成金は廃止すべきで、献金などの収入にも総合課税し、その分物価高対策としての特別減税を政治家にも適用すれば、多少は国民の痛みもわかるのではないでしょうか。

 

 

岸田首相への退陣要求が続出確実…政敵・菅前首相の“お膝元”から「地方の反乱」が始まる

 
 
 岸田首相への「退陣要求」が地方から上がり、永田町関係者が騒然としている。自民党横浜市連が4日に開いた定期大会で、市連会長の佐藤茂・横浜市議が裏金事件を念頭にこう言ったのだ。

「政治資金規正法改正にメドがついた今、総裁自ら身を引く苦渋の決断をし、強いリーダーシップのとれる新進気鋭の総裁を選び、変革の証しを示さなければならない」

「身を引け」という強烈な発言が飛び出した背景の一つに、党本部の不遜な態度があったようだ。

「先月中旬、党幹部が全国を回って地方組織の声を聞く『車座対話』が横浜市内で開かれたのですが、神奈川県連幹部からは不満の声が噴出しました。車座対話のタイミングが遅すぎると批判すると、党本部から来た平口洋衆院議員が『我々も時間を割いて来ている』と反論。これに県連側は『話を聞く気があるのか!』と激怒。その場は荒れに荒れました。この時の遺恨も残っていたのでしょう」(県政関係者)
 
 見過ごせないのは、退陣要求が岸田首相の政敵である菅前首相の“お膝元”から上がったことだ。もともと横浜市議だった菅前首相は、岸田首相に「退陣要求」を突きつけた佐藤市議と近い関係だ。退陣要求の背景に菅前首相の意向が働いていた可能性がある。

「定期大会には“スガ印”の小泉進次郎元環境相も参加。自民党が下野した2009年衆院選に触れ『あの時より怖い。一人一人が危機感を持って変わっていかなければいけない』と発言しました。彼らの発言に、菅さんの意向が働いていないとは思えない。いよいよ菅さんが『岸田おろし』に動き出したのではないか」(官邸事情通)
 
早期解散論後退で発言しやすくなった
 
昨6日夜、自民党の小泉、加藤、武田、萩生田4氏らとの会食に臨む菅前首相(C)共同通信社

 さらに、菅前首相は6日、都内の寿司店で萩生田前政調会長、加藤元官房長官、武田元総務相、小泉元環境相と会食。秋の総裁選への対応などについて協議したという。

 萩生田氏、加藤氏、武田氏の3人は定期的に会食するなど親密で、それぞれの頭文字をとって「HKT」と呼ばれている。進次郎氏を含め、いずれも菅政権で閣僚を務めた“スガ印”だ。「岸田おろし」に向けた準備を着々と進めているとみるのが自然だ。

 菅前首相に近い自民党議員はこう言う。

「波風立てるような言動を嫌う菅さんが、ここまで表立って動くのは珍しい。国会閉幕後、本格的に動き出すために準備しているのかも知れない」

 岸田首相にとって頭が痛いのは、今後、地方から続々と退陣要求が上がりかねないことだ。

「しばらく、早期解散説がくすぶっていましたが、ここへきて『会期末解散 見送り』『総裁選後の秋以降』などと一斉に報じられ、早期解散の機運はしぼみつつあります。それによって、誰もが『岸田退陣』の声を上げやすい状況になりました。これまで表立った批判が出てこなかったのは、刺激しすぎると岸田総理が逆ギレして本当に早期解散に踏み切ってしまう怖さがあったからです。ところが、この低支持率で総理が“解散テロ”を起こす可能性は限りなく低くなりました。今後、佐藤市議のような退陣要求が続出するでしょう」(同前)

 多くの自民党関係者が「岸田の顔では選挙を戦えない」と考えているのは間違いない。「早く辞めろ」の大合唱になれば、岸田首相は耐えられなくなるのではないか。