開局以来、視聴率競争で“振り向けばテレ東”などと万年最下位を揶揄されてきたテレビ東京が、フジテレビを抜いたのは今年3月。予期せぬ事態にフジテレビは、意外な人事でテコ入れを図っている。

 

テレビ担当記者の解説。

「テレ東は開局60年目での快挙。一方のフジは、業界内でもうわさになっていた凋落傾向を数字で突きつけられた格好です」

 今年の1月クール(1月1日~3月31日)の世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)のゴールデンタイム(19~22時)において、テレ東は5.48%を記録した。それに対してフジは5.41%。わずか0.07%ながら及ばなかった。

「焦りを募らせるフジは6月の株主総会で、かねて次期社長の有力候補とされていた大多亮専務(65)を関西テレビの社長に転出させる人事を決定する予定です」

 



“都落ち”の理由
 その大多氏は、1980年代から90年代にかけて、「君の瞳に恋してる!」(89年)を皮切りに「東京ラブストーリー」(91年)、「101回目のプロポーズ」(同)、「ひとつ屋根の下」(93年)など、都会で暮らす男女の恋愛模様や世相を描いた大ヒットドラマを手がけ、世間に“トレンディードラマ”なる言葉を定着させた名物プロデューサーである。

「文字通り、フジテレビの黄金期を築いた立役者の一人です。制作現場を離れた後は順調に出世し、クリエイティブ事業局長を経て常務取締役に。2年前には番組編成などを担当する専務に就任しました。社長の椅子は十分、射程内に入っていたはずなのですが」

 一方で、港浩一社長は続投する。港氏は72歳と高齢で、フジ社内でも、7歳年下の大多氏への交代は既定路線とみられていた。

 フジテレビ関係者がそっと明かす。

「大多さんのドラマ制作における辣腕ぶりは、いまでも社内の語り草ですが、フジテレビドラマを象徴する存在のあの人が“都落ち”させられるのは、視聴率の低迷が主な理由とされています。数年来の不振の責任を取らされた形です」

 確かにスマホの普及と比例するように、ここ数年は若者世代を中心とした“テレビ離れ”が加速している。

「スマホの普及によって視聴習慣が変化し、世帯視聴率は以前ほどには重視されなくなっています。とくに10代から20代は自分の生活スタイルに合わせて、見たい映像コンテンツを好きなタイミングで見ています。そんな個人視聴率の掘り起こしも急務ですから」

 

いわく付きの人物が取締役として天下り
 そのフジは、バラエティーやお笑い番組で80~90年代のテレビ界をリードし“楽しくなければテレビじゃない”とまで豪語するほどわが世の春を謳歌していた。

「経営陣をはじめ、50代以上の幹部たちは当時の記憶を捨て切れない。最下位転落が分かった直後の会見でも、港社長は“真摯に受け止めて反転攻勢を練っていきたい”としながらも、自身の責任には触れませんでした。“夢よ再び”と、本気で信じているからです」

 他方で注目を集めているのが、3年前に不名誉な話題で知名度を上げたキャリア官僚の再就職だ。

 先のテレビ記者が言う。

「山田真貴子元内閣広報官(63)が取締役として天下ることになっています」

 山田氏は総務審議官だった2019年、菅義偉総理(当時)の長男が勤務する東北新社からステーキや海鮮料理など7万円以上の接待を受けていたことが発覚し、わずか半年で広報官を辞任したいわく付きの人物だ。

「辞職後は中堅証券会社の社外取締役などに収まっていました。が、局内で“天皇”“偉大な老害”とささやかれ、いまだ絶対的な権力を握る日枝久相談役(86)が、不遇を託(かこ)つ山田氏を救済する意味合いで声をかけたとか」

「週刊新潮」2024年6月6日号 掲載