全国86の国立大学でつくる国立大学協会の永田恭介会長(筑波大学長)らが7日、記者会見を開き、国立大の財務状況が危機的だとして「もう限界です」などと予算増額を訴える異例の声明を発表した。

 

 会見で永田会長は「日本の人材を育て、科学技術を発展させることに責務を感じているが、光熱費や物価の高騰で十分な予算を捻出するのがかなり厳しい」と述べた。

 声明は、教職員の人件費や研究費に充てる国からの運営費交付金が減額されたうえ、近年の光熱費や物価の高騰などで実質的に収入が目減りし、各国立大が危機的な財務状況に陥っていると指摘。それでも質の高い教育研究活動を維持・向上しようと自力で収入を増やすなどの努力を続けてきたが、「もう限界です」と訴えている。

 そのうえで、今後も、博士などの高度人材の養成をさらに進め、社会人や女性、外国人など多様な人材を受け入れるなどして、国全体の「知のレベル」を上げ、地域社会とグローバル社会を牽引(けんいん)すると表明。国民に向けて、国立大の危機的な財務状況を改善するために「理解と共感、そして力強い協働をお願いする」と求めている。永田会長は「運営費交付金の増額を(国民に)後押ししてもらいたい」とした。

光熱費・物価高騰で支出増、学費値上げ検討の大学も 
 国大協がこのタイミングで声明を出した背景には、6月中にも閣議決定される政府の「骨太の方針」や、文部科学省による8月の来年度政府予算案の概算要求に、運営費交付金の増額を盛り込むよう訴える狙いがある。また、厳しい財務状況を多くの国民に理解してもらい、中長期的に国立大が安定した予算を確保できるように、世論を喚起することもめざしている。

 運営費交付金は、国立大が法人化された2004年度は国立大全体で1兆2415億円だったが、行財政改革の一環で15年度まで毎年度1%ずつの減額が続いた。20年度以降は横ばいが続いており、24年度は1兆784億円。

 一方、近年は光熱費の高騰で、東大などの大規模大では年数十億円も支出が増加。物価高騰や円安で研究施設・設備の整備費などの負担も増している。このため、東大など一部の国立大では授業料の値上げが検討されている。永田会長は「理由を表明して値上げできる大学は値上げすればよい。国大協としてとやかく言うつもりはない。だが、中長期的には、学生と国が授業料をどのような割合で負担するのか、しっかりと議論する必要がある」と語った。(増谷文生)

 

 

東京大学で学生らが反対集会 授業料引き上げ検討受け

 

宮本徹さん

NHKが動画も配信するというのは、それだけ、東大の授業料値上げが、全国の国立大に波及するであろう全国的問題とと見ているということでしょう。今日は、国立大学協会が運営費交付金を増やせと声明を出しました。
岸田政権はこの声に応え、授業料が上がらない状況をつくるべきです。

 

 

東京大学が授業料の引き上げを検討していることを受け、6日学生らが反対集会を開き、引き上げ案の撤回や学生への情報開示を求めることを決議しました。

東京大学は現在、授業料の引き上げを検討していて、国が定める上限まで引き上げられた場合、現在の年間53万5800円から10万円余りの増額となる可能性があります。

これを受け6日、東京・文京区にある東京大学の本郷キャンパスで学生の団体が引き上げに反対する集会を開き、およそ400人が参加しました。

参加者からは「特に地方出身者や女子学生が進学しづらくなり、多様性が失われる」とか「経済的支援を充実させても漏れるケースは必ず出る」といった意見が出ていました。

その上で大学側に、▽引き上げ案の撤回や、▽引き上げの根拠や詳細、経済的な支援策についての情報開示、▽学生団体との交渉の場の設定などを求めることを決議しました。

大阪出身の4年生の女性は「大学のお金がない状況は分かるが、10万円は相当大きな額でプレッシャーを感じます」と話していたほか、博士課程の男性は「これほど多くの学生が集まるとは思わず驚きました。それだけ問題視しているということなので、大学はきちんと声を聞いてほしい」と話していました。

東京大学は「授業料に関して話し合っていることは事実だが検討中のため、公表できる情報はありません」とコメントしています。

 

無償化へ半額早く

学費値上げ 東大は逆行

学生・院生ら撤回求め決議

 
 
 東京大学が授業料値上げを検討していることに対し、東京都文京区の同大内で6日、学生や院生らが学費値上げ反対全学緊急集会を開き、値上げ案の撤回などを求める決議を全会一致で採択しました。決議は、同大が予定する「総長対話」で学生の意見を聞き入れることや対面での開催、別の公開の場で学生諸団体と交渉することを要請。総長などに届ける予定です。

 集会を主催したのは、学費値上げ反対アクション文学部連絡会。1、2年全員が加盟する教養学部学生自治会の理事会やクラスと多くのサークルが加盟する学友会学生理事会など9団体が開催に賛同。約400人が集まりました。

 同大の教授らによると、大学側は物価高騰を理由に、来年度から学部・修士・博士課程の授業料を年10万円程度値上げしようとしています。授業料全額免除の対象を現在の年収400万円世帯から600万円に拡大するとしています。

 大学院教育学研究科の本田由紀教授は「値上げは、大学への公的費用支出が少なく、私費に依存するいびつな構造を悪化させる」と説明。同研究科の隠岐さや香教授は「大学は漸次無償化をめざすべきであるのに逆行している」と批判しました。人文社会系研究科の鈴木泉教授は「学費値上げで女子学生や地方出身者など大学の多様性が減少する」と訴えました。

 高等教育無償化プロジェクトFREE東大の学生は調査を踏まえて「全国の国公私立大学の値上げにつながる東大の学費値上げは容認できない。東大に求めたいのは、国に高等教育予算の拡充を求めること」と語りました。